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兵庫教育大学附属図書館広報誌Listen

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#20号

それはかつてあった

 文:永井一樹(附属図書館職員)  四十も半ばに近づくと、自分が死ぬことを考える。祖父母は他界して既に久しい。両親はまだ健在だけれど、いつの間にかすっかり年老いてしまった。やがて両親が去れば、次は自分の番である。三十代までは、自分が半永久的に生きられると思っていた。それがそうではないと最近実感する。だるま落としの積み木みたいに、世代は順番に退場していく。  私に、祖父母の記憶が遠のくように、私の子孫は私のことなんてすぐに忘れてしまうだろう。それは、ちょっと嫌だなと思う。墓石

須田場好七の風景感考 2

話し手:須田場好七氏 / 聞き手:永井一樹(附属図書館職員) ー 須田場先生を本学にお迎えし、写真ワークショップを開催するわけですが、まずは先生のスタバ写真家としてのご活動について、お聞かせください。 (須田場) スタバのカップが写り込んだ写真って、だいたいインスタ映えしますよね。若い人だったら、きっと一度はそんな写真撮ったことがあると思うんですよ。ただ、本当にどんな風景でも映えるのか、その境目のラインって、誰も追求してないと思うんです。もしかしたら、このカップが負ける時

須田場好七の風景感考 1

その胡乱な男は、待ち合わせの時間に5分遅れてやってきた。カメラのレンズを拭いていると、つい時間を忘れてしまうのだという。 スタバ写真家。“スターバックスの紙コップ”が背景に対してどこまでインスタ映えできるのか、その限界値を探る男。(自身のインスタグラムにそう書いてある。) 私が、この神出鬼没の写真家の存在を知ったのは、BLUE CLASS KOBEのゲスト、首藤義敬氏が運営する多世代型介護施設「はっぴーの家ろっけん」を訪れたときだった。そこで秘書をしている高橋大輔氏との雑談の