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花咲く名城の美しい天守

日本の名城、現存12天守の価値

全国各地にある名城の中で、数百年の時を超えて築城時のまま残る現存天守は全国に12城しかないことをご存知ですか?織田信長が天守を創始後、明治維新までに150基が建てられましたが、現存する天守は1割に満たないほどしか残されていません。
今回は、桜の名所としても有名な姫路城(兵庫県)と弘前城(青森県)にフォーカスしてご紹介します。

国宝の姫路城、平成の大修理

世界中から訪れる観光客を魅力する、兵庫県・姫路市にある「姫路城」。国宝や重要文化財に指定され、1993年に奈良の法隆寺とともに、日本で初となるユネスコ世界文化遺産にも登録されました。白漆喰の城壁と白鷺が羽を広げたような優美な姿から「白鷺城」の愛称で親しまれています。

姫路城は、関ヶ原の戦いの後に城主となった池田輝政氏により、9年の歳月をかけて大規模に修築されました。動員された人員は述べ2430万人。慶長14年(1609年)に築城し、威風堂々とした大天守には、400年もの長い歴史が刻まれています。

姫路城は「昭和の大修理」から45年を経て、白漆喰など劣化が目立つように。そこで、「平成の大修理」では、2015年の完成まで5年の歳月をかけて、大天守の漆喰の塗り替えや屋根瓦の全面葺き替えが行われ、耐震補強も施されました。

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※keegeekによるPixabayからの画像 

屋根瓦の総数は、なんと7万5000枚。全てに番号を振り、反りや歪みを丹念に調査し漆喰を塗り直し、水はけを良くするために屋根瓦の状態に合わせて並べ替えられるなど、丁寧な改修が行われました。

姫路城は、なぜ白亜の大天守なのか?

当時の名城といえば、城の外壁は黒と白に大別されます。「松本城」や「熊本城」は黒い城、「江戸城」と「姫路城」は白い城で有名です。なぜ池田輝政は、白い城を築いたのでしょうか?

諸説あり、一説では豊臣秀吉が築いた大阪城は黒いため、豊臣恩顧の大名は黒の城を築き、一方で、徳川恩顧の大名は白い江戸城に習って、白い城を築城したという説。また、戦乱の終わりを予感した池田輝政が、「美による威嚇」のために白にこだわったとも言われています。

多くの人の心を奪う美しい白さは、「天然の白の漆喰」を塗ることで保たれています。しかし、経年劣化によりいずれカビが生えれば黒くなってくるそう。今だからこそ見ることのできる白鷺城の美しさを、ぜひその目で、五感で感じていただきたいです。

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姫路城の天守へは、多くの門をくぐり抜けてようやくたどり着けます。城壁には狭間と呼ばれる穴が多数設けられ、思わず矢で射すくめられるような感覚に。重厚な門や大きな石垣を前に、タイムスリップしたような感覚を味わってみては。最上階の6階には、姫路城の守護神である刑部神社が祀られています。書院風の落ち着いた雰囲気や、姫路城周辺の美しい景色を眺めることができますよ。

白鷺の姫路城と、桜のコントラストの美しさを堪能

姫路城の桜は、「日本さくらの名所100選」に選ばれ、漆喰の白壁に鮮やかに桜が映える姿は一見の価値あり。内堀内には約1000本ものソメイヨシノが植えられています。

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3月末〜4月初めに見頃を迎える桜。姫路城を見学した後は、城を背景にした三の丸広場でお弁当を広げてお花見を楽しんではいかがでしょう。また、桜並木や西の丸庭園のシダレザクラなども美しいです。ぜひ時間に余裕を持って、散策しながら様々な角度の姫路城と満開の桜を堪能してみてください。

最北端の現存天守、弘前城の魅力

現存する12城の天守の中では最北にある青森県・弘前市の弘前城。天守が残る弘前公園は、かつての城郭にあたります。

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弘前城は、明治維新まで弘前藩主を務めた津軽氏の居城として知られており、1871年の廃城時の原形をとどめている貴重な城です。現在は、6つの郭の全域が国指定史跡に、また、天守閣、二の丸の東門・南門・辰巳槽・未申櫓・丑寅櫓、三の丸の追手門・東門、北の郭の北門(亀甲門)が国の重要文化財に指定されています。

弘前城の天守は、文化年間に御三階櫓として再建されたため現存する天守の中でも小ぶりな部類ですが、破風や狭間などが効果的に使われ藩の象徴にふさわしい威厳のある姿をしています。

現在進行中の石垣修理の驚きの手法とは

弘前城は、天守台を含む本丸の石垣内部の土が外側の石材を押し出す「はらみ」が確認され、2015年から石垣修理が行われています。修理のため、天守を壊すことなく移動させたのですが、高さ14.4m、総重量400tにも及ぶ天守の移動。一体どのように実現させたのでしょう?

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それは、ジャッキアップで天守を約30cm持ち上げ、敷かれたレール上を移動する「曳山」という手法が用いられました。北西に約70mの移動に要した期間は、なんと2ヶ月。「曳家ウィーク」では、参加者が綱を引いて5.3m移動させるなど、様々な市民参加型の催しも。石垣解体工事を終えて、本丸の発掘調査とともに2020年から石垣の積み直し工事が行われています。

現在は、津軽富士と呼ばれ、司馬遼太郎も絶賛した岩木山の絶景を背景に佇む天守という、今だけしか見られない光景を楽しむことができます。山岳信仰の岩木山は、津軽の人々にとって特別な存在。雄大な景色とともにその歴史に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。

一度は見たい、日本三大桜名所の圧巻の桜と弘前城

弘前城は日本三大桜名所の一つ。弘前公園の桜は、正徳5年(1715年)に津軽藩士が京都から25本の桜を取り寄せて、敷地に植えたのがはじまりです。 現在、園内には約50種類、約2600本の桜が植えられており、ソメイヨシノ→しだれ桜→八重桜と順々に桜が咲きます。しだれ桜の巨木など、優美な桜を楽しむことができます。
※日本三大桜名所:弘前公園/青森県、高遠城址公園/長野県、吉野山/奈良県

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4月下旬〜5月上旬頃(年ごとに変動)に開催される、弘前さくらまつりは特におすすめ。ゴールデンウィーク期間中に見頃を迎える桜も多く、市民や国内外の観光客で賑わいます。
夜の弘前城と桜のライトアップも美しく、幻想的な世界も見事です。
ぜひ桜の開花シーズンも異なる2つの名城へ、飛行機に乗って出掛けてみてはいかがでしょうか。

記者:岩崎雅美

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