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花火ナイター特集 ブレイバーズ通信 2022年10月号


「花火ナイター」開催! 夏の夜空に百発の花火



写真:打ちあがる花火。ものすごい大きさだった。


 8月6日、今年もブレイバーズの夏がやってきた。あじさいスタジアム北神戸で、3年連続となる「花火ナイター」が行われたのだ。来場したお客様の数は217名にものぼった。間隔があきつつも、大きな空白はないといった球場の混み具合。球場の周辺では300人ほどが花火を待っていた。


 八回裏終了時、100発の花火がライト方向に打ち上げられた。一発上がるたびに、客席から大きな拍手が響き渡る。その美しさに思わず「めっちゃ良いやん」と声を漏らす少年もいた。ブレイバーズの選手たちもベンチから出て、花火に目を奪われていた。


写真:花火にみ見とれる観客の皆様


 暗い夜空にまばゆく咲き乱れる花々。その光景は、遠く三田市からも目視できるほどだったという。最後の一発が破裂すると、再び球場全体からの拍手。昨年よりも、はるかに盛り上がっていたのが印象的だった。



試合は3対3の引き分け(10回終了)


写真:先発投手のアレックス選手。

 
 「花火ナイター」の対戦相手は和歌山FBだった。1回表に先制点を許すも、その裏に柏木のタイムリーですぐに追いつく。3回裏には2点を追加し3対1とリード。先発したアレックスは制球に苦しみながらも、要所を抑えて5回2失点のピッチング。代わったリリーフたちが7回までリードを守る。


 しかし8回表、三遊間の守備の乱れから同点となる。その後は両チームとも決め手を欠く。同点で迎えた10回裏2アウト、島田が空振り三振。球場使用規定により、この回で試合終了。3時間41分に及ぶ熱戦は、3対3の引き分けで幕を閉じた。


 引き分けとはなったが、攻守に活躍を見せた選手たち。その中から選び抜いた3名を紹介したい。


活躍選手 その1 山崎照英 内野手


写真:土まみれの山崎照英選手。試合終了後に撮影。

 
 
この日は「二番・レフト」での先発。3安打の大活躍でスタンドを大いに湧かせた。ヒットの全てが内野安打。チーム一の俊足をいかんなく発揮した。
 

 1回表、内野安打で出塁。相手投手も、山崎の俊足はおり込み済みだ。警戒して一塁へけん制球を投げたそのとき、山崎は既に二塁に走っていた。一塁手はすかさず二塁に向けて送球するも、判定はセーフ。今季15個目の盗塁を決めた。


 けん制で誘い出されてもセーフになってしまうという、おそるべき走力。この衝撃の光景に、観客席からは大きなどよめきが起きた。



山崎「自分のやりたいことが全てできた試合」


写真:五打席目に臨む山崎選手。



 9回裏、1アウト1、2塁で回ってきた第五打席。サヨナラへの期待もかかる中、山崎は冷静だった。初球をいきなりバントし三塁方向へと転がす。セーフティーバントを狙っていたのだ。すかさず打球をキャッチし、一塁へ送球する相手投手。そこにはヘッドスライディングする山崎が。判定は果たして―。審判からセーフが告げられると、山崎は一塁近くでガッツポーズを決めた。
 

 客席が今日一番盛り上がった場面だったと、試合終了後に伝えた。「そうだったんですか」とあまり意識はしていなかった様子。だが「やりたいことは全てできた」と充実した表情をみせていた。


 全力プレーの代償かユニフォームは泥まみれ。「洗うのが大変ですね…」と残念そう。大活躍の勲章なのだから、何も悔いることはない。これからも汚れたユニフォーム姿を見せてほしい。



活躍選手 その2 山科颯太郎 投手


写真:試合終了後、グラウンドから引き上げる山科颯太郎選手。


 8回表、ブレイバーズは同点に追いつかれてしまう。試合の流れは和歌山FBに傾きかけていた。


 なおも一死満塁の場面で、染矢に代わり登板したのは山科。並の投手なら逃げ出したくなる場面だが、彼は違っていたようだ。次の打者をわずか一球で、ゲッツーに仕留めた。「もちろん狙ってましたよ」と不敵に笑う。この強心臓が、今年の山科の強みだ。


 9回表も続投し、危なげない投球で無失点。これで出番は終わりかと思われた。しかし、この時点での球数はわずか15球。

 「まだ余力はあるな」と思っていた山科。10回表のマウンドにも上がることとなった。しかし、守備の乱れからピンチを招いてしまう。2アウト満塁となり、一打勝ち越しの場面に。そんなピンチの中でも、「正直楽しんでいた。程よい緊張感があったので」と余裕を失わない。


 最後の打者をライナーに打ちとり、ピンチを切り抜ける。自身最長となる2回と3分の2を投げ、みごと無失点。スタンドからは割れんばかりの拍手が。「ちゃんと聞こえてましたよ」と山科。ファンの応援を力に投げぬいた。

 

山科「客席からの声援はしっかり届いていました」


写真:ファンの熱い応援を背に投げぬいた山科選手。


 「予想以上に長引き、生きてられないくらい疲れました…」と山科。先発にもチャレンジしたらと尋ねると、「絶対無理です!」と断固拒否。それでも彼が中継ぎとして、ブルペンを支えてくれるのは心強い限りだ。
ブレイバーズを敗北から救った立役者。試合後はゆっくり体を休めてほしい。


活躍選手 その3 南颯太 捕手


写真:試合終了後、球場前でファンを見送る南選手。

 
 南がいなければ、今のブレイバーズは試合ができない。


 相次ぐ退団により捕手はわずか2名。もう1人の捕手・濵口は、新型コロナウイルスの感染により療養中。現在、南がチーム唯一の捕手なのだ。


 6日の試合では、計5投手を1人でリード。代えがきかないとはいえ、重い負担がのしかかっている。1回表には、先発アレックスのボールを止めきれず、後ろに逸らしてしまう。客席からは大きなため息が漏れた。


 「あのときは心が折れそうでした」と南。いきなりのミスで、ネガティブになるのは無理もない。「でも(捕手は)僕しかいないので、気持ちを切らさずにプレーしないとダメ」と、すぐに切り替えた。2回表には盗塁を阻止し、アレックス投手を助ける。その裏にはライト前に安打を放った。


チーム唯一の捕手としてチームを支える


写真:五回終了時の客席。このあとさらに多くのお客様が。


 「打撃は苦手ですよ。運が良くないと打てません」と謙遜する南。しかし4回裏には、2打席連続となるセンター前ヒット。次の打席では1球で送りバントを決める。「犠打は一番練習しているので」と笑ってみせた。チームプレーに対する意識の高さが垣間見える。


 結局、この日は凡退なし。試合が進むにつれて、客席からのため息が大きな拍手へと変わっていった。5人もの投手をリードしたことには「そこまでしんどさはなかった」と語る南。だが、「あともう一人、いてくれたらと思うときもあった」という。濵口選手の一刻も早くの復帰が待たれる。


 1人で試合を作ったこの経験をかてに、正捕手の座を射止めてほしい。



チケット売り場に背番号18?



写真:入場口でチケット売りに励む宇田選手。

 200名をこえるお客様が訪れたあじさいスタジアム。入場口でのチケット売りは楽な仕事ではない。ボランティアの方々が業務を担当してくださるが、都合が合わない試合日もある。


 そんな中、「助っ人」として、入場口にいたのは宇田塁投手。エースナンバー(背番号18)を背負う23歳が、お客様にチケットを手渡す。この距離の近さが関西独立リーグの魅力の一つだ。


 14日の先発に向けて調整中だという宇田投手。「ファンの皆様と触れ合えるので、チケット売りはわりと好きな仕事です」と話してくれた。「お金の計算もできますし(笑)」と適性をアピールした。

 そんな宇田投手も花火を観戦。「今年初めて花火を観ました。イラスト花火は綺麗でした」と喜んでいた。
 

写真上:ボランティアの山田さん(左)と仲良くポーズを決める宇田選手(右)。
このリーグの良さを表した一枚だ。


 今季は未だ白星なし。悔しさはあると思うが、そんなそぶりは一切見せていなかった。真剣にチケット売りをこなす18番が、マウンドで報われる日がくることを祈るばかりだ。



ご協力していただいた皆様、本当にありがとうございました!


(この取材は2022年8月6日に行われました)

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