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おっちょこちょい下克上(398文字)ショートショートnote杯

徳川家康の影武者がいた。
この世は下克上の時代だと聞き、よく考えずに秘密裏に徳川家康を切り捨てた。

熟考し、自分がおっちょこちょいだったことを恥じた。そもそも、自分は家康の家臣ではないし、本当の意味で下剋上したものは別の家臣に下剋上されているという歴史を知った。

主君を殺すなり、その地位を奪うなりした後に家臣が主君にとって代わらず、主君の一族を新たな主君として擁立し、成功する例は多くみられた。

赤松・細川・三好氏による足利義教、義材、義輝下克上の例でも、自分たちではなく足利氏の者が将軍に擁立されている。
大内義隆を討滅した陶晴賢も、自分ではなく大内義長を主君として迎えている。
家臣が主君にとって代わった場合も、その家臣はほとんどが主君の一族であった。

おっちょこちょいだったと反省した。このままでは、自分が下克上されると考えた影武者は、その後、自らの名前を口にすることなく、徳川家康として一生を終えた。

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