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空飛ぶストレート(ラブストーリー410文字)ショートショートnote杯

純一は、自宅の庭にテーブルと椅子を置き、お洒落なオープンテラス席をつくった。
恋人の凛を誘って紅茶を飲んでいる。
テラスで優雅にお茶なんて、まるで海外セレブのようだと凛の声が弾む。

「トランプをしよう」
純一は、ポーカーで、もし自分が勝ったら、今日こそ告白しようと思っていた。
純一の手札は、ストレートだった。純一は、ごくりと唾を飲んだ。
凛の手札は、なんと、ロイヤルストレートフラッシュだった。これは何かすごく幸せなことが起きるんじゃないかとでも思ってるような、そんな幸せにあふれた笑顔になった。
「僕が勝ったら」純一は言った「話があるんだ」
外の風が少し強くなった。
つばの広い帽子をかぶっていた凛は、目を皿のようにし、さりげなく右手で帽子の後頭部を少し持ち上げた。
帽子は風に飛ばされ、純一がそれを追う。純一のストレートは、空を飛んだ。
帽子を持って帰ってきた純一に凛は言った。
「私、ブタ、役がなかった。純一さんの勝ちよ。話って、何?」

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