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教会福音讃美歌発行8周年を記念して

 教会福音讃美歌の発行から、今月1日に丸8年が経過しました。

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 facebookでサーチしてみると、実際に流通し始めたのは発行の約1ヶ月前だったようですが、公式な記念日は初版発行日になるんだろうと思います。
 歌集発行に大きく関わったのは、イムマヌエル綜合伝道団日本同盟基督教団日本福音キリスト教会連合(JECA)の3教派(五十音順)。教会数を合計すると、日本国内のプロテスタント教会の約7%に相当します。
 とは言え、実際に使用している教会はこの3教派にとどまらず、多くの教派で用いられているようです。奥付の写真は私蔵の中型版ですが、これを買った2018年10月には「間もなく増刷」という話を聞いたので、今は第6刷が出回っているんだろうと思います。他に小型版もありますので、総発行部数はどれくらいになるんでしょうか。
(ちなみに現在持っているのは2冊目です。1冊目は装丁が壊滅的に壊れてしまいまして^^;)
21.10/3追記:「いのちのことば」2021年10月号によれば、第7刷出来とのことです。5刷→6刷が2年4ヶ月、→7刷がほぼ3年のスパンと言えます。

 所属教会では、発行の4ヶ月後の2013年1月から礼拝で使い始めました。それまでは讃美歌(1954年版・第二編)・聖歌(日本福音連盟)がメインで、他に新しめの曲を毎週1曲ずつ歌うというスタイルでしたが、現在は福讃からのみ選曲されることになっています。
 当時の私はまだ教会音楽に目覚めていなかった時期でした。編集が行われている時期にも「福音讃美歌ジャーナル」を目にはしていましたが、さほど興味はなく… 今のような状態でその時期を過ごしていれば、どれだけ心躍ったことかと思います(^^;;
 2年間の上越生活を終えて所属教会に戻って来てからは、それまで礼拝で歌ったことのない曲の紹介に努めるようになりました。手始めに「〇番をいつ歌ったか」のリストをExcelで作成し、セルが空白の曲については、2016年11月~2018年9月の2年弱に渡って祈り会でしらみつぶしに歌いました。基本的には番号順でしたが、教会暦に合わせて変則的になることも。(あまりにも現代的過ぎてついていけず、敬遠した曲も多少ありましたが^^;)
21.10/3 Excelの画像追加(数字=年月週、☆=3年以上歌っていない)

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 しらみつぶし開始前の時点では、礼拝での未使用曲が268曲(全506曲の52.96%)でした。そこから、祈り会で初めて歌った曲を礼拝で選曲していただく好循環も生まれるようになり、2019年4月には175曲に減少。2年半で93曲減だったので、平均で月3曲ペースだったと言えます。
 そこから現在までの1年半の間には、15曲減りました。減少ペースが鈍化したのは、今年4月後半から始まったオンライン主体の礼拝では基本的に新しい曲を選曲しないという原則が敷かれているためです。(※6月からは、月1回ほど公共施設で対面式の礼拝を行っています)

 最近では、礼拝でスライドを用いて歌詞や聖書の言葉を映写する教会が増えています。そのような環境では歌集を持たずに顔を上げて歌えるというメリットがあると同時に、一つの歌集にこだわらずに選曲できるという利点も生まれます。(投影する上では著作権の問題が生じますが…)
 ただ、そうすると元々使っていた歌集の中に「持ち腐れ」が発生しやすくなってしまうのではないでしょうか。関係者の方々が多大な努力を重ねられて生まれた一冊の歌集ですから、可能な限り使い果たそうと努めるのが、関係者の方々への感謝の表し方ではないかと思うのです。
 とは言え、歌集には製作に当たった教派のカラーも反映されますから、どうしても収録されにくい系統の曲もあろうかと思います。そういった曲がその場面に最適だというケースも生じるでしょうから、ある程度の制約を付けて他歌集の曲を取り入れるのはアリではないかと思います。

 ただ、賛美歌の世界は一体化が進んでいるのではないかと思うのも事実です。手元の集計では、福讃の506曲のうち235曲が讃美歌21(1997年発行)と重なっているのです。(詞・曲一方のみ同じ、も含む) また、こちらは集計すらしていませんが、2006年発行の日本聖公会聖歌集とも結構重なっている印象を受けています。
(福音讃美歌協会HPの収録曲一覧によれば、聖公会聖歌集を直接の典拠としているのが22曲。21は90曲)
 聖書についてはすでに「共同翻訳」の提案がなされたことがあるそうですが、賛美歌集についてもそういう方向に向かってもいいのではないかと思ってしまいます。(そうすると、共通歌集と教派独自歌集で「2冊持ち」にならざるを得なくなりそうですが…)

 福讃に関する記事のはずなのにさほどそれに言及していない気がしますが(汗)、2018年10月に福音讃美歌協会理事長の中山信児牧師(JECA菅生キリスト教会神奈川県 川崎市宮前区=)の講演をお聞きしたことがありました。その中で最も印象的だったのは、東日本大震災発生を機に選曲作業をリセットしたということです。
 こちらの記事で紹介したように、同じ発行元が歌集を出版し続ける場合、その発行スパンはどうしても半世紀近くになってしまっています。3・11に影響を受けて作られた賛美歌は何曲か存じ上げていますが、歌集の規模で社会的事象やそれによる社会の変化に即応することは簡単ではありません。それを考えると、リセットするという決断は決して簡単ではなかったと思うんですが、3・11後の社会を反映させた歌集が与えられているというのは感謝なことだなぁと思うのです。
(中山牧師の講演内容は、東京基督教大学(千葉県 印西市教会音楽アカデミーの紀要『礼拝・音楽研究』第69号(2020年発行)に収録されています。アカデミーのリンクから注文可)

 福音讃美歌協会は、福讃発行前のプロモーション用として『あたらしい歌』(初版はCD付、新版含め品切れ。記事配信時点ではAmazonに中古出品あり)を2009年に発行しましたが、2017年に『あたらしい歌2』を発行しています。まえがきには、次のように記されています。

 讃美歌の作詞、翻訳、作曲、編集は、高度に専門的なスキルを必要とする分野でありながら、そのための奉仕者を養成する場は国内には非常に乏しいのが現実です。次の讃美歌集の改訂および編集に備えるには、次世代の讃美歌作家および編集者を見いだし、育てていくことが不可欠です。そのためには、小さな讃美歌集を作り上げていく作業を実際に経験してもらうことが効果的な近道となるでしょう。

 このような取り組み自体、日本国内で今まであったのだろうかと思うほど画期的に感じられます。これまでに2回行われている讃美歌作家懇談会(ジャーナル26号で第2回に関する記事掲載)も、次回改訂に向けた準備の一環なのだろうと思います。今後の活動にも心から期待しています。
 その上で、次回改訂で期待したいことを2点挙げます。
 一つは引照聖句の扱いです。多くの歌集では、各曲の譜面の端に、関連する聖書箇所が記されています。福讃には、残念ながらそれがないのです。(巻末の聖句索引はありますが) HPの「曲の情報」では曲ごとに聖句が記されているのを見ると、なおのこと勿体なさが増幅されてしまいます。また、聖句の数も一曲につき1~2箇所が大多数ではないかと思います。礼拝のための選曲の観点からも、また賛美の言葉と聖書の関連性をより深く実感するという観点からも、ぜひとも充実化をお願いしたいところです。
 もう一つは、典拠歌集の扱いです。これもHPには載っているんです(^^;; 讃美歌・讃美歌21・聖歌との番号対照表(PDFファイル)も貼ってあります。歌集出版までの日々は大変な忙しさだと思うんですが、讃美歌21や新聖歌には典拠歌集が載っていることを思うと、次の歌集にはぜひとも載せてほしいなぁというのが正直なところです。

 最後に、ついでなので再び「歌集全体」の話をしたいと思います。これも、各出版元の次期改訂に向けた期待と言える内容です。
 それは、ストレートに言ってしまえば『讃美歌21略解』と『讃美歌21選曲ガイド』に類するものを出していただきたいということです(^^;; 略解では、作者に関する情報や曲が生まれた背景等が紹介されていて、ガイドには、用途別索引(礼拝式順・教会暦・行事暦他)、語句索引(コンコルダンス)、聖句引照索引(歌集巻末よりも充実)、各節初行索引(2節以降の歌い出しも調べられる!)、ギターコード集等が収録されています。
 福讃の場合、HP(まだ全曲分ではないかも)やCDシリーズ(全5巻で86曲)に略解的内容が掲載されています。また、HPには語句索引・歌集索引・聖句索引等があり(音源を聞ける曲も半分以上)、おおよそ上記ガイドと同じ機能が搭載されていると言えます(ジャーナル19号で「サイバーヒムナル」として紹介)。ただ、それをオンデマンド出版したらある程度需要はあるのではないかと思ってしまうのです。HPを見られない方もいらっしゃるでしょうから。
 他にも特色ある情報提供の取り組みをなさっている歌集もあるようですが、次に出版される歌集ではそれをより充実していただきたいなぁと思っています。極論言えば、Hymnary.orgのようなサイトをそれこそ諸歌集共同で立ち上げていただければと思ってしまいます。ある聖句を引いただけで、それに当てはまる国内の全歌集の曲が一覧で表示される…そんな風景を夢見る人間なんて少数派なんでしょうか(爆)

 結局福讃独自の内容が薄かったような気がしますが^^;、日本語を母語とする人々の賛美がより豊かになるために、福讃をはじめとする諸歌集に関わる方々のお働きが祝福されることを願ってやみません。

より多くのアウトプットをするためには、インプットのための日常的なゆとりが必要です。ぜひサポートをお願いしますm(_ _)m