資本主義なき経済学から、資本主義なき市場へ(ヤニス・ヴァルファキス)

ヤニス・ヴァルファキスの下記の講演が面白かったのでノートを取った。

Yanis Varoufakis: From an Economics without Capitalism to Markets without Capitalism | DiEM25
https://m.youtube.com/watch?v=9aK4OztueuE

正確ではない意訳です。


■経済学において多元主義が必要なわけ
・物理と経済は全く異なる。物理現象は理論の影響を受けないが、経済は経済理論の影響を受ける。(再帰性)事実との適合は理論の正しさを意味しない。
・相反する異なるモデルが同じ現象を同等に説明できる。
・事実についての合意が得られても、それについての異なる解釈が可能。
・どの理論を選ぶかは、哲学的、倫理的問題であり、事実だけでは決まらない。

■現在の経済学において資本主義は扱えていない
・新古典派経済学の需要と供給の均衡というモデルには、時間も貨幣も負債もない。
・貨幣を導入すると等式が解けない。
・色々な経済学説を学ぶべきなのは、それらがいかに資本主義を捉えらていないかを理解するため。

■資本主義の歴史
・資本主義と市場は異なる。昔から市場はある。しかし土地や労働力は市場に乗らなかった。
・資本主義:土地や労働力や株の市場の登場。
・1599年。イギリスインド会社が登場:最初の株式会社。匿名で株が自由に取り引きされるようなる。数年のうちに武装してインドの市場を破壊。
・19世紀後期:マックスウェルが電気と磁気の理論を統合。通信技術が資本主義を産んだ。
・20世紀:エジソンが電気網を構築。ネットワークを構築したものがマージンを得る。電話網、鉄道網、自動車の他大量生産。競争資本主義ではなく、独占資本主義。アダムスミスが考えたような競争(それを通して個人の利益の追求が社会の善につながるとする)は存在しない。
・こうしたネットワークを作るにはお金がかかる。メガバンクが生まれる。メガバンクは巨大会社に、信用供与枠で資金提供。将来からの前借りの虚構のお金。それが積み重なって1929年の恐慌をひき起こす。
・ブレトン・ウッズ体制:1944年からの20年。基軸通貨をゴールドから米ドルに置き換える。雇用率上昇、格差縮小。アメリカが外国に融資して、外国がアメリカ経済の余剰を輸入することでバランスをとる体制。
・ブレトンウッズ体制は、ドイツや日本の経済が成長することで成り立たなくなったため破棄された。そこで逆の体制が作られた。貿易赤字を埋めるために、外国がアメリカに融資する。我々の産業や銀行は利益の70%をウォール・ストリートに送る。この体制が2008年に崩壊した。
・デジタル資本主義:フェイスブックは人々を操作することで莫大な利益を得ている。フェイスブックの資本は我々の投稿。我々は気づかずにプロレタリアート化されて無給で働いている。フェイスブックが従業員に支払うのは収益のわずか1パーセント。ちなみにウォルマートだって40%。ひとびとは自分がなにしたいのか分からずコントロールされる。
・リベラル資本主義は不可能なイデオロギー。BlackRock, State Street, Fidelityといった資産運用会社が S&P500に含まれる企業の90%に投資している。彼らが資本主義の90%をコントロールしている。アダムスミスの考えた競争は存在せず、集中的計画されているのが実情。


■将来についての提言
・上司がいない会社:入社すると1株(交換できない)貰えて、それが投票権になる。収益の分配など、会社の全てについての投票権を持つ。ボーナスも、相互の投票できまる。
・ヨーロッパ中央銀行:全ての人が中央銀行に3つのサブ口座からなる口座を持つ。1)将来の子供たちのための信託資金。ここから全ての新生児に贈られる。2)ボーナスをためておく口座。3)普遍的基礎配当のための口座。商業銀行や投資銀行はなくなる。個人的がお金を貸し借りするのは自由だが、今日のような信用創造はされず実際にあるお金しかない。
・税制:市民の委員会によって土地は社会地域と商業地域に分けられる。商業地域は完全に新自由主義的に運営される。資産価値を自己申告して税金を払う。資産は入札制として、低く評価していると人に買われてしまう。この税を基礎配当や社会地域に使う。

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