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超異分野でもコミュニケーションの悩みはみな同じ? 〜超異分野学会で得られた新たなケーススタディー〜

おたまじゃくし研究所では、ハーモニーのあるコミュニケーションを実現するために、人間同士の話し合いデータを研究しています! note では、話し合いの研究成果や分析方法を公開しています。

※ 普段、研究論文ばかり書いているので気を抜くと文章が堅くなりますが、頑張って柔らかくしています!
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超異分野学会でポスター発表してきました

2021年3月5〜6日に開催された第10回超異分野学会で、「オンライン飲み会における会話パターン変化に関するケーススタディー」というタイトルでポスター発表してきました。タイトルは固めですが、発表内容は前回のオンライン飲み会の記事が元になっています。詳しい内容はこちらをご覧ください!

発表は大盛況!分野を超えた多くの方々に興味を持っていただいて、発表時間中はほぼ休み無しで非常に活発な議論ができました!

議論に来てくださった方々の体験談はとても面白く、そこから当研究所の note を読んでくださる方々にもおそらく興味を持っていただける知見が得られました。

ここでは、追加のケーススタディーということで、さまざまなオンライン会話の悩みや体験について紹介します。

Case 1: 若者がオンライン飲み会に参加しない

ある大学教員の方に来ていただいたとき、このようなお話を伺いました。

「研究室で企画するオンライン飲み会に学生が全然参加したがらないのはなぜ?と思っていたけど、この発表でその理由がわかった気がします!」

これと同様のエピソード、今回の超異分野学会だけでなんと4回も出会いました。大学だけでなく企業の方々もいらっしゃいました。皆さんオンライン飲み会の企画に苦労されているということが伺えます。

今回の発表の一つの結論である「飲み会が深くなると、年長者は深く長い話をしがちで、若年者は聞き役に回りがち」という主張に、身に覚えのある方が多かったということでしょうか。「自分たちの飲み会も可視化してみたら教授(上司)たちもこの事実に気付けるかも」という声もありました。オンライン会話の可視化によって、自分自身の行動を客観的に認識する「メタ認知」が促されて、次からの行動を変えられるきっかけになるかもしれないですね!

Case 2: Clubhouse雑談とZoom雑談では勝手が違う

しばらくポスター発表をしていると、今度はこのような方に出会いました。

「これまでZoomでやっていた飛び入り参加歓迎型の雑談配信を、試しにClubhouseを使ってやってみたところ、あんまり盛り上がらなかった。」

Zoomが音声とともに映像も利用できるオンライン会議サービスであるのに対して、Clubhouseは音声のみでコミュニケーションを取るSNSで、数多くの雑談チャンネルが作られていました。Clubhouseは「飛び入り参加歓迎の雑談配信」にはかなり有利なプラットフォームだと考えていたので、この意見はとても意外でした。

詳しく話を伺うと、「Clubhouseだと自分が話している雑談が相手に刺さっているのかがわからない。相手がその話題に飽きているのに自分が喋りすぎてしまうことが増えた気がする。Zoomだと画面で表情がみえているから雰囲気で何となく察せられるけど。」とのこと。

人間は音声以外の情報もたくさん使いながら高度なコミュニケーションをとっていることが知られています[1]が、それがとてもよくわかるエピソードでした。映像情報を音声情報と組み合わせて可視化すると、より面白い結果が得られそうです。

参考文献
[1] M. L. Knapp, J. A. Hall, and T. G. Horgan, "Nonverbal Communication in Human Interaction 8th Edition", Cengage Learning, 2013.

Case 3: 近況報告で終わるオンライン飲み会はつまらん

今回の発表では「飲み会を可視化した結果、前半ではまず相互理解を促す話、後半では各人の深い話が繰り広げられた」と結論付けました。これに対して、ある方がこのようにおっしゃっていました。

「最近参加したオンライン同窓会は、相互理解や近況報告のパートだけで終わってしまって、あんまり面白くなかった。もっと深い話が聞きたいのに」

実に興味深い意見でした。そう考えると、おたまじゃくし研究所のオンライン飲み会の中で、後半で各研究員の深い話に移った理由は、この「相互理解パートが間延びすると面白みが減少する現象」を無意識に回避した結果とも考えられるかも知れません。

さらに話を詳しく伺うと、その同窓会には参加者が多数いて、それぞれの人が今どんなことをしているのかを順番に聞いているだけで、予定の時間をオーバーしてしまったそうでした。大人数によるオンライン会話は少人数の会話を他の全員が聞く構図になりやすく、参加している感じが薄れてつまらなく感じるということでしょうか。

「そういう時は適当に小さないくつかのグループに分けてそれぞれで話すのがいいんですかね?」と聞いてみると「適当にグループ分けすると、場合によっては何を話していいかわからないメンバーになって非常に気まずいんですよね」と返答。

確かにそのとおりで、単に少人数グループにすればいいという簡単な問題ではなさそうです。音声情報を使って盛り上がり具合を計測して、適切なタイミングで話題を提供できたり、メンバーチェンジのタイミングを提示できたりすると、このような不安もシステムで解消できて、よりよいコミュニケーションが実現可能かもしれません。

Case 4: オンライン授業をする大学教授の苦悩

2020年度はオンラインで授業を提供する大学がたくさんありました。ある大学教授の方に来ていただいたときは、その苦労話をたくさん伺えました。

「オンライン授業だと授業についていけていない人のフォローがとても大変。学生間の助け合いや先輩への質問がしづらく、一度ついていけなくなると、結局授業に出なくなってしまう学生がいつもより多かった。」

「オンライン授業が合う内容もあるとは思うが、すべてをそれで置き換えるのは無理があるのではないか。」

ある情報系の学部でのオンライン授業では、LMS(学習管理システム)などを利用して、学生と教授やチューターの間でインタラクティブにやり取りできる仕組みを作って運用したそうですが、まだまだ苦労は多いようです。

これまで対面形式の授業の場合には行われていた「教員と学生・学生同士のインタラクション」をオンライン形式の授業で実現させるために試行錯誤が行われている[2]ことからも、いかにコミュニケーションが重要な役割を果たしているかが伺えます。

話し合いの可視化を通じて、こういった授業に付いていけていない学生を、本人が自覚する前に見つけてサポートできれば、より良い学生生活を送る手助けになるかもしれません。

参考文献
[2] 原田 康也, 赤塚 祐哉, 坪田 康, 鍋井 理沙, 森下 美和, "オンライン授業における学生間のインタラクション(相互作用)と全人的な交流機会の担保", 日本認知科学会第37回大会発表論文集: pp. 303-312, 2020.

コミュニケーションの悩みは超異分野でも共有できる!

今回の記事では、おたまじゃくし研究所のオンライン飲み会のケーススタディーに関する発表の中で、さらに集まったケースについて紹介しました。これらのエピソードを聞いて思ったのは「どんなに異分野の人でもコミュニケーションの悩みは共有できる」ということでした。おたまじゃくし研究所では、いただいたたくさんのエピソードも参考にしながら、これからも多種多様なコミュニケーションの構造を解き明かしていきたいと思います。

執筆:おたまじゃくし研究所研究員 柳楽浩平

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