ハードボイルド鶏ゲー Chicken Police
オータムセールで買ったこちら。Backboneが大変不完全燃焼すぎたあまり、ノワール動物刑事ものつながりで目星をつけていました。日本語完備。
結論から言うと、これはいいものでした。看板通りのものはいい。Backboneについてはここでは事細かに触れませんが、とりあえず広げた風呂敷をきっちり畳むのは大切だ。ゲーム内で起こした事件ぐらいはきっちり片付けてほしい。なぜ人間じゃダメだったのかイマイチわからないけど、動物でよくない理由もないのでいいと思う。
Chicken Policeはこんなゲーム
あなたは老刑事サニー（鶏）。10年ほど前までは、若い相棒のマーティとともに数々の事件を解決し、「チキン・ポリス」として華々しく紙面を飾り、名を馳せたものでした。ところが今はその華々しい活躍は見る影もなく、直近の事件では相棒にライフルで撃たれる始末。今は定年の日まで残された121日間の有給を消化するだけの日々を送っています。
そんな大晦日の夜、アパートに帰ると若いインパラの女性があなたを待っていました。自分は休暇中の刑事で私立探偵ではないから個人的な依頼は受けられないと断っても、自分の雇い主たっての希望でここに来たのだと言って、彼女は譲りません。とりあえず話を聞くと、執拗な嫌がらせを受けており、不安で仕方がないとのこと。その程度なら、と捜査に乗り出すことになりますが、それが街全体を揺るがす殺人事件につながることになろうとは、老いた鶏の知る由もありませんでした―
という感じで始まるの。めっちゃ鶏。ずっとジャズが流れていてめっちゃハードボイルド。とてもいい導入です。
基本的には必要な場所に行き、聞き込みをし、情報を持っている人物から必要な情報を引き出して事件解決を目指すものすごく素直なゲームです。重要な情報を引き出すには適切な質問をする必要があり、それによって刑事としての評価が決まります。失敗してもすぐにやり直しさせてくれて親切。日本語もロアフレンドリーでいい感じに訳してあって、ゲーム本来のノワールみが損なわれないローカライゼーションになっています。書体も大丈夫だし。
Chicken Police、ここがいい
・洒脱な会話
これだよ、このわざとらしいぐらい洒落の利いたスカしたハードボイルドセリフ回しだよこれだよ最高かな。そしていちいちちゃんと鳥的な慣用句とか言い換えにしてるのも気が利いてて大変楽しいです。日本語もその辺ちゃんとわかっておられるのでいい感じに楽しめます。
・ビジュアル
劇中に出てくるポスターが全部いい。映画は古い映画のオマージュになってたり、ミッドセンチュリー感とヌーベルバーグみが本当にイケてる。
大変小じゃれていてウィットもあって好きだわぼく。あとこの世界の動物はTESで半裸を見慣れているカジートやアルゴニアンとは違い、首から下は羽根や体毛や鱗が少なくなってほぼほぼ人間と同じ模様。そんなわけでなんか変な性癖をこじ開けられるような官能的ポスターも何枚かありました。なんぞこれやべえ（ほめてる。
・正統派探偵ものでよい
謎めいた人物からイレギュラーな依頼を受けて、そっから人が死んで聞き込みして一個ずつ手がかり掴んで行って、その間に何回か殺されかけて、最終的に事件が解決するという、もう当たり前と言えば当たり前のスタイルが大変素直でよかった。推理ものとしては、個人的には、もう少しひねってあってもよかったかなあという気はしないでもない。でもそこのトリックよりも舞台になるクローヴィルの街の退廃的な雰囲気とか、草食動物と肉食動物が共存してる背景とか、愛すべき登場人物の描写とかがいちいちいい感じで、トータルとしていい買い物をした気持ち。
Chicken Police、ここが残念
というほどのものはないかな…。まあちょっと謎解きの前の「ここに謎解き要素がありまあす！」っていう導線がちょっと見えにくかったのと、一本道っちゃー一本道で思ったほどプレイ時間は長くないぐらい？プロパーでも2000円ぐらいだから、その辺は適正な範囲ではないだろうか。
まとめ
・チャンドラー的王道ハードボイルド推理小説の世界を楽しむには最適。
・鶏だけど
・紙芝居要素は強いものの、何か独特のアート感があってスルメ
・バディものに弱い人は買っておけ
推理ものとしては、Painscreek KillingsとかDisco Elysiumの方が手が込んでるとは思いますが、チャンドラー的推理小説をちょっと変わった舞台立てで楽しむゲームとしてはとてもよかったと思います。声優さんもすごいイケボ揃いでカッコよくて、私は好きでした。とにかくBackboneがアレだったもんで、心の傷が癒えました。ありがとうありがとう。
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