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おせっかい吸血鬼ゲー VAMPYR

レビューに入る前に、収益なんかまるで考えていなかったこのnoteにサポートを投げてくださった方がおられて腰を抜かしており、まずは心からお礼を申し上げます。ありがとうございます。なんかほんとにいいんですか大丈夫ですかとおののきながら、ゲーム資金にさせていただきます。
でもほんとにお気遣いなさいませんように。(ユーザーが増えたら日本語対応の確率が上がるから)洋ゲーを、洋ゲーを買ってください…!

さて、VAMPYRです。20世紀初頭、霧が立ち込める夜のロンドンを吸血鬼のお医者さんになって闊歩するウルトラロマンゲー。余談ですが、有志日本語訳はわりと私成分が多いですエヘッ。
Steamの他にSwitch版など各種出ていますが、日本語化できるのは現状Steam版のみだそうです。公式日本語版出るといいですねえ。

VAMPYRはこんなゲーム

時は第一次世界大戦時。フランスに駐留して軍医を務め、兵役を終えて故郷のロンドンに帰還したジョナサンさん。家路の途中で突然何者かに襲われ、気がつけば死体の山の中。そして、どういうわけか無性に喉が渇いています。訳も分からず朦朧としながら死体の山から這い出し、フラフラとさまよう先に佇む人物の首に夢中で牙を突き立てて喉の渇きを癒すのでした。そう、彼は吸血鬼となっており、そして今しがた血液と命を奪ったその人は、行方が分からなくなった兄の姿を求めてロンドン中を捜し歩いていた、彼の大切な妹だったのです――

吸血鬼ハンターの追手から逃れながら、自分をこの呪われた存在にした犯人を、その意図を探し求めて、ジョナサンさんの旅が始まります。

※アクションRPGという分類になっていますがアクションもあるADVぐらいの感じで捉えておく方がよいと思います。

VAMPYR、ここがいい

・雰囲気!!!!!
薄いシャーロキアンとしてはですね、この時代のロンドンなんか大好物に決まってんじゃないですか。最高ですよ。ジョナサンさんは常にコートを着ているのですが、裾のはためき方のぬめっとしたカシミヤ感が非常によくてですね、無駄に方向転換をしてはためかせてはハァンってなっていました。
この時代に医者(それも高名)ですから、ジョナサンさんはアッパー育ちで英語がとてもきれいなのもグレナダホームズ大好きマン的にハァハァするポイントでした。とにかくアッパーの人の英語がきれいで、いかにもブリティッシュな京都弁くさい回りくどいセリフ回しがおいしいんです。そしてワーキングクラスNPCの口調もしっかり区別されていて、私今イギリスにいる(行ったことないけど)…!という気持ちになれます。

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活動時間が夜限定なので売り子がいない紅茶屋台。相対的に小物がとてもよくできていてポイント高い。夜のひと気がない寂しさもいい。とてもいい。

・哀しげな音楽と物語
裏切りや欺瞞が宿命づけられた吸血鬼の哀しさがこれでもかと詰め込まれたナラティブが美しい世界です。陰鬱なロンドンの風景や、重厚で豪奢な建物のインテリアの中に響く、どこかケルト風の物悲しい音楽がその世界をさらに美しく演出しています。どこまでも美しくて物悲しく、やるせなさが付きまとう、まさに耽美という言葉が相応しい世界。大好物ですよこれ。
・吸血鬼好き同志の連帯感
ブラム・ストーカーから中東の伝説まで、ゲーム内には様々な吸血鬼ネタがころがっています。吸血鬼好きにはこの上なくたまらんおいしい要素です。製作スタッフさんはきっと私と同じように吸血鬼ネタ好きなんですねおいしいですよね吸血鬼ね!と両手で固い握手を交わしたくなるほど吸血鬼愛好家のツボを押さえた設定や展開になっております。おいしいです。(語彙力)

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吸血鬼視点では捕食対象がこのように見えるというステキビジュアル。以前推し(TESのVamp)の妄想をしている時にこんなようなのを考えていたのでさらに連帯感がですね

・グレートブリテンの歴史やケルト好きにもおいしい
あまり細かく書くとネタバレしてしまうので控えますが、ケルトの伝承、ブリトン人の時代の要素も含んでいます。この辺は雰囲気が好きなだけで知識のない分野だもんで、翻訳する時に「えっ誰それ何それどういう背景なん?」と頭を抱えながらggり倒して勉強になりました。イギリスの歴史に詳しい方なら、きっとにやりとする場面があるんじゃないでしょうか。
・他人の秘密を暴き出すうふふ感
ジョナサンさんが夜のロンドンで出会う人たちは、大抵何か脛に傷を持っています。医者という立場と吸血鬼の催眠能力を利用し、疫病と治安の悪化による不安に付け込んで、隠し事を暴いたり、彼らが密かに抱えている悩みを解決したりする昏い楽しみを満喫できるのも楽しいです。
・誰を餌にしようかな?
登場人物の中には、もう君生きてても仕方ないよね?みたいな人たちがちょいちょい出てきます。この人がいなければもしかしてこっちの人が幸せになるのでは?こんなにかわいそうな境遇なら、命を奪ってあげる方がいいのでは?みたいな医師と捕食者の間で揺れる倫理観みたいなものを楽しみながらプレイするのはとてもワクワクしました。ゲーム的には誰も殺さないのが本筋ではあるのですけれども、37564にしてロンドンを荒廃させるのもまた一興ですようふふ。

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手術もあるでよ。血の誘惑に耐えるか耐えないかだけでなく、その衛生状態でその服でやっていいんですかおてて洗いましたかという点でもスリル満点オペ。

VAMPYR、ここが残念

・なんたらコレなんたらの棍棒はいらないんだ
基本的に、吸血鬼になった医師として、捕食者となって人の命を奪うかどうすっかという倫理のせめぎ合いに重点を置かれたゲームですので、そこはいいんです。でも、ゲーム内で一つだけ、その返答がその部分の進行に多少影響するデリケートな政治問題に関係したやり取りがあり、そこは非常になんというか興ざめでした。あなたの正義を否定はしないが、ユーザーに押し付けないでほしいという反発を感じてしまったのは残念です。それが進行に全く影響しないものなら全然気にならなかったと思うんですけどね。

先日Epic GamesのCEOが「ゲームは政治的になりえるが、ゲーム会社は政治から距離を置くべきだ」と発言したニュースを思い出しました。

同感です。政治的なゲームがあってもいいんですが、他者を殺傷してはならないとか、盗んではいけないみたいな国や文化を問わない普遍的なこと以外で、制作側がユーザー個人の意見を否定したり、誘導したりするようなものはちょっと遠慮したいなあ。
・戦闘がわりと大変
フロムのように難しくはありませんが、フロムを意識しつつクセのある戦闘スタイルになっています。ヒットアンドアウェイアウェイアウェイからのヒット!みたいな感じ。1対1のボス戦よりも、多勢に無勢の雑魚戦の方がより一層苦労が多く、キャラ強化が困難な不殺プレイではタイミングを読み間違うとあっという間にボコられて終わってしまいます。特に雑魚も相当強化される終盤以降は本当に雑魚戦がつらい。
・ファストトラベルを作ってほしかった
ゆえに移動が大変なのです。終盤になればショートカットが開通しますが、もう少しはよう開いてほしかったわここ!!とか、そこを通っても気を抜くところがる雑魚戦が待っているのがストレスになりました。せっかく吸血鬼なのですし、コウモリになって飛べる設定とかにして、発見した拠点間はファストトラベル可能にしてもらいたかったなあ…
・オートセーブのみ、しかも上書きは厳しい
KC:Dの記事でも言及しましたように、このゲームは100%オートセーブのみで任意セーブがなく、3つのセーブファイルを常に上書きしていくLife is Strange方式。ですから、セーブのタイミングを過ぎてしまったダイアログの中の選択肢を複数試すには複数周回する作業が必要になってしまいます。これはやっぱりほんと時間的に厳しいのでここまでストリクトにやらんでほしいです。翻訳してたら結果的にプレイ時間が300時間を超えてしまった私でもそう思います。(セーブデータを退避させておいて戻す小技を使いましたが、そういうことしなくてもいいようにしてほしかった)
・本当はもう少しやりたいことあったっぽい
初めてこのゲームのことを知ったのが、確か2015年のE3だったと思うんです。その時見たティザーでこれはたまらんですねちょっと!!と発売を心待ちにしての2018年発売だったんですね。難航したんだろうなと思いながらくまなくプレイしてみると、やはりここに何かの仕掛けを作る予定だったんだろうなあ…みたいな場所がありました。DLCでもいいから出ないかなあと願っていますが、出ないみたいなのが残念。
・そこ??そこなの??そこ??
本当にネタバレしてしまうので詳しく書けませんけども、私そこわりとどうでもよかったんですよね…そんなに本筋にされるって思ってなかったんですよね…という展開があくまでもNot for meでした。いや、だからつまんなかったとかそういうことではないんです、本当に。そこに至るジョナサンさんの独り言とかちょっとかわいくて萌えるんですけど、あっ…そうなん…みたいな。しかしこれはこれで感動的な展開でもあり、悪いわけではないんだ本当に。私がゲームにおいてロマンス的なものにそれほど重点を置いていないだけなんだ。

まとめ

・Bloodborneに似てるという評判だけなら買わない方がいい
暗さとか悲しげな感じとかは似てますけどそこだけだと思います。啓蒙も上がらないです。大丈夫です。
・吸血鬼と20世紀初頭のロンドンが刺さる人は絶対に持っていていい
・ADVでNPCの話を聞く、ゲーム内書籍を読むのが大好きな人に向いている
・育ちがよくて純情なイケおじジョナサンさんはおいしい
・腐女子的にもおいしいポイントは多分多い(当方発酵程度なので不明)
・戦闘はアウェイ7割ヒット3割ぐらいの気持ちでやるとまあまあ勝てる

全エンディング見たクリア後にSteamにも大して変わらない内容の短いレビュー書いたんですが、改めて長々と書くと人を選ぶゲームだと思いましたw
移動や戦闘の煩わしさを超えて楽しむためには、吸血鬼コンテンツが好きであること、文章を読むのが好きであることがわりと求められる感じです。(それと、今現在の感染症騒動で心が疲れている人は、少しプレイを待った方がいいかもしれません。全然違う内容だけどリンクはしているのでね。)
そういう意味では寝転がってのんびりプレイできるSwitchが向いているのに日本語がないのが本当に歯がゆいので日本語化してくれないかなあほんと。

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