にどと手の届かない場所
フランク•ロイド•ライト設計の旧帝国ホテル本館はすでになく銀座のカプセルタワーは消えてしまった
丹下健三が設計し、文化的な価値が高いとされた赤坂プリンスホテルも日本モダニズム建築の傑作といわれたホテルオークラ東京本館も取り壊された
かつての歴史的な造形美をもつ建造物はわれわれのあずかり知らぬところで音もなく消失してゆくのだ
平安京の正門であった羅城門が消えたときの京都人の気持ちはいかばかりだっただろう?
“淋しいけど東寺あるからよくね?”とでも思ったかな?
それとも悲しみに暮れただろうか?
当たり前のようにそこにあったランドマークが消える気持ちをぼくには推し量ることしか出来ない。
九龍城砦
さて、本題
香港の九龍城砦は知っているかい?
雑多で猥雑、近未来モノとの相性はすこぶる良し
《懐かしい未来》 変な言い方だけどこれがなんとなくしっくりくる。
【AKIRA】【ブレードランナー】などの世界観が好きなひとなら分かってくれるかな?
近年?☜いや、古い なら【シャングリラ】【カウボーイビバップ】などもその系譜であろうと個人的意見
九龍城はそんな《サイバーパンク》な世界をもっと荒廃させた《デストピア》を想起させ、微かに仄暗さを匂わせる別世界に人々を誘うのだ
成り立ち
もともと辛亥革命以前から城砦として機能していた地区ではあったが1960年代後半〜1970年代の文化大革命の余波により、九龍城砦には中国からの難民が殺到した
彼らはここを団地として定住することにした
やがて色々あって香港だか中国だかイギリスだか曖昧な状況があったタイミング(逆説的にどこにも属してないのでは?なタイミング)で無法地帯化したら辺で
どんどん移住者は増えていき、徐々にバラック小屋から鉄筋コンクリートのビルへと姿を変えていった
その後もどんどん人は増え続け、
ビルの上にさらにビルを増築していき、まるで迷路のように複雑化していったんだ
そして、まさに魔窟と言って誰が咎める者がいようか?いや、いない
思わず反語が出てしまうようなさもありなんな【九龍城砦】に成っていったのである
生活
彼らの生活は、まさに映画のワンシーンのようだった
九龍城砦には、ありとあらゆる仕事が存在しており学校や美容院や老人ホーム的なものまで揃っていて普通の生活が出来るくらいには商店も整っていたようなのでスラムというのは言い過ぎかな?って思ってたんだけど、やっぱり裏の顔というものはあってだな
なんと夜になるとストリップ劇場や賭博場へと切り替わりアヘンを中心とした薬物の違法取引も頻繁に行われていたんだって!
そうして九龍城砦はマフィアの温床となり、治外法権として知られるようになっていったんだ
売春やギャンブル、海賊版商品の売買など、悪名高き犯罪組織が九龍城砦の舞台を支配したんだ
漫画みたいだね
環境
九龍城砦の人口過密は驚異的で、わずか0.03平方キロメートルの土地に、12階建てのビルがびっしりと並んでたんだ。最盛期には5万人のヒトがここにすんでたそうだ
これは一畳に3人住んでる計算になる
ちょっと発狂してしまいそうだね😨
そういった訳で、徐々に【スラム化】していくわけなんだけど九龍城砦に住む人々は、意外にも自衛団なども作られ、独自のルールに従い、彼らなりに平穏な生活を営んでいたみたい
※もちろんかれらの尺度で言えばなのだが…
また、ちょっと違う話なんだけど九龍城砦の建物の高さは近くにある啓徳空港のために制限されてたんだけど、おかげさまで飛行機との距離はまさにハラハラドキドキ!だよね!
住民たちは飛行機が通過するたびに息を飲み、ビルの屋上から迫力満点のパフォーマンスを楽しんでたんだろうな
水問題
前述の通り、違法建築だらけの建物だけあって水はとても貴重なものだった。水道屋さんは(※といっても地下水組み上げて各家庭へ配水するだけ屋さん)はかなり法外な水道料金をふんだくっていたみたい
九龍城砦の建設において水を節約するために、コンクリート製造に尿が使われたという逸話も残っているくらい!
こんなふうに、九龍城砦の成り立ちはドラマチックで、奇想天外なエピソードが詰まっていて、歴史の中で繰り広げられた人々の生活はちょっとした冒険談
まるで映画の一場面みたいじゃない?
実際ゲームになったり漫画になったりしてるし
終幕
-1994 九龍城砦は取り壊しされ、その跡地には九龍寨城公園が建設された
かつて昼間でも日が全く差し込まなかった場所は広々とした公園となり、皮肉にも今や燦々と降り注ぐ陽の光のなか観光客が香港の美しい景色を楽しんでいる
あの不夜城は夢まぼろしだったのか?
無くなってなお、ぼくたちの心を魅了するクーロン城砦
一度いってみたかったなぁ…
でもそれは叶わない
そこはにどと手に届かない場所
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