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こちら、日向坂探偵局!

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日向探まとめ
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#妄ツイ

こちら、日向坂探偵局! File.00「騒がしい日々のはじまり」

こちら、日向坂探偵局! File.00「騒がしい日々のはじまり」

今思い返せば、日向坂探偵局を訪ねた日―2018年3月28日は僕にとって運命的な日になった。

その日は例年に比べて気温が高く、初夏のようなポカポカ陽気だった。

バスを降りた僕はボストンバッグを持ち直すと地図を片手に見知らぬ街を歩き始めた。

坂道県日向市日向町。

坂道県は東海地方に位置し、日向市は県内4番目の規模の都市だ。

日向町は市の中心部から離れた閑静な住宅街である。

僕は県庁所在地で

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こちら、日向坂探偵局! File.01「サインボール~前編」

こちら、日向坂探偵局! File.01「サインボール~前編」

菜緒:見つかったー?

菜緒の声が僕のいる場所の反対側から聞こえて来る。

汗だくになりながら草むらを掻き分けていた僕は「まだー」と応えた。

屈んでいた足腰を伸ばし一息つく。

菜緒の方を向くと、同じように草むらを掻き分けているはずなのに彼女だけ苺狩りみたいな雰囲気なのが納得出来ない。

菜緒が美少女故に醸し出せる雰囲気なのは間違いない。

草むらを苺畑に幻視させる美少女探偵、恐るべし。

戯言

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こちら、日向坂探偵局! File.02「サインボール~後編」

こちら、日向坂探偵局! File.02「サインボール~後編」

病院からタクシーで15分ほど。

僕らは再び空き地にいた。

2時間前まで僕と菜緒が掻き回していた草むらは、暮れ始めた光の中でより鬱蒼とした存在感を高めている。

その中に隠れるように佇む件の物置小屋。

そこにサインボールはあった。

同じ場所で持ち主の家族が倒れていた。

偶然にしては妙じゃないか。

それにあの圭太くんの目。

明らかに何かを隠している雰囲気がある。

引っ掛かりを覚えた。

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こちら、日向坂探偵局! File.03「転校生はつらいよ~前編」

こちら、日向坂探偵局! File.03「転校生はつらいよ~前編」

自室の姿見の前で新しい制服に袖を通す。

ネクタイを結び、ブレザーを羽織る。

◯◯:よし

2018年4月9日。

春休みが終わり、今日から新学期が始まる。

1階に降り、リビングに向かう。

◯◯:菜緒おはよう

菜緒:おはよーさん。よぉ似おてるやん♪

日向坂高校の制服は、男子はブレザー、女子はセーラー服となっている。

菜緒:ウチの制服姿、どない?

菜緒のセーラー服姿、なかなかにかわいい

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こちら、日向坂探偵局! File.04「転校生はつらいよ~中編」

こちら、日向坂探偵局! File.04「転校生はつらいよ~中編」

翌日。

2年生は入学式に出席する決まりになっているので、登校したら体育館に用意されたパイプ椅子に着席して、新入生の入場を待つ。

◯◯:朔田くんの彼女さん…えっと、宮地さんだっけ?写真もらった?

菜緒:うん。昨日朔田くんからLINEで送られて来たで

菜緒がスマホ画面を向ける。

◯◯:かわいい娘だなぁ

菜緒:セクハラや

◯◯:なんでだよ

ひより:その娘だぁれ?かわいー!

後ろの席のひ

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こちら、日向坂探偵局! File.05「転校生はつらいよ~後編」

こちら、日向坂探偵局! File.05「転校生はつらいよ~後編」

1時限目の後の休み時間。

僕と菜緒は金村さんの席に向かった。

僕は訊ねる内容を知らないので菜緒の横に控える。

菜緒:美玖~。ちょっと訊きたいことあんねんけど

美玖:どした?

次の授業の教科書を取り出していた金村さんが顔を上げた。

菜緒:もしかしてやねんけど、1ヶ月前に朔田くんらとカラオケ行った?

美玖:行ったよ~

菜緒:そん時すみれちゃんおったよな?

美玖:朔田の彼女の?いたよ

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こちら、日向坂探偵局! File.06「日向商店街狂騒曲~前編」

こちら、日向坂探偵局! File.06「日向商店街狂騒曲~前編」

新学期が始まって最初の週末。

昼食を食べた後、菜緒と一緒に日向商店街へ買い物にやって来た。

愛萌さんにおつかいを頼まれたのだ。

探偵局には臨時休業の札を出している。

菜緒:そういえば◯◯は日向商店街来るん初めてやな?

◯◯:そうだね

商店街は、土曜日ということもあってか、かなりの人で賑わっている。

◯◯:そもそも、商店街ってものに来るの自体初めてかも

菜緒:さすがやな。こういうとこ

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こちら、日向坂探偵局! File.07「日向商店街狂騒曲~中編1」

こちら、日向坂探偵局! File.07「日向商店街狂騒曲~中編1」

史帆さんと陽菜ちゃんに連絡し、急いで日向屋に来てもらった。

ちなみに史帆さんと陽菜ちゃんは事件が解決すると日向屋にチゲ味噌ラーメンを食べに来るのがルーティンらしい。

史帆さんと京子さんは日向高の同級生だ。

京子:史帆~!陽菜ちゃ~ん!レンゲがぁ

史帆:お~よしよし~

陽菜:京子さん落ち着いて下さい!

史帆:こしゃ~。また盗みなの~?

菜緒:連続窃盗事件の可能性があります

史帆:マジ

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こちら、日向坂探偵局! File.08「日向商店街狂騒曲~中編2」

こちら、日向坂探偵局! File.08「日向商店街狂騒曲~中編2」

菜緒とふたり、<北山デンキ>へ向かっていると、

?:盗まれたぁ!!!

アーケードに響き渡る声。

◯◯:またか!

菜緒:行ってみよ!

声のした店へ駆けつける。

金物屋さんだ。

菜緒:何が盗まれたんですか!?

金物屋店主:おぉ菜緒ちゃん!五寸釘だ!ここに展示してあったのがいつの間にか無くなってんだ!

店主は頭を抱えた。

五寸釘展示してるってどんな趣味だ…

それはさておき。

看板

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こちら、日向坂探偵局! File.09「日向商店街狂騒曲~後編」

こちら、日向坂探偵局! File.09「日向商店街狂騒曲~後編」

夕方の日向商店街は、急いで夕飯の買い出しをする主婦や仕事帰りのサラリーマンの姿が目立ち、そこそこの賑わいだ。

◯◯:どこ行くの?

菜緒:犯人に直当たりする

◯◯:そんなことして危険じゃない?

菜緒:いざという時は頼りにしてるで♪

◯◯:武道の心得とか無いんだけど…

菜緒:体当たりくらいは出来るやろ

◯◯:相手がナイフ持ってたら…

菜緒:ナイフ避けて体当たりすりゃええやん

◯◯:そ

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