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オリジナル漫画「scope」原作-47

【入来篇】VS殺人代行組織(藍)第9話

ノーモーションで放たれた糸弾(silk)が、瞬斗の目の前で蜘蛛の巣のようにバッと広がり、魚を捉える投網のように瞬斗を包み込んだ。 銃口から蜘蛛の糸を引きちぎると、捉えた瞬斗ごと、ハンマー投げのようにグルグルと振り回し出した。 < グルーン グルーン グルーン> 成す術も無く、振り回される瞬斗。

瞬斗  「 うわっ やめっ なんだよーーーー!ぎゃぁーーーーーー!! 」

ブォーグ 「 クックク どこが良い? やっぱ男なら、“角”一択だよな? オラッ!! 」

 < グルーン グルーン グルーン… >

糸の檻で捉えた瞬斗を、回転の遠心力を最大限活用し、応接室にあるテーブルの角目掛けて叩きつけた。 < ボゴンッッ!! >

瞬斗 「 グハッ!」  大きく飛び散る血しぶき。

あまりに強大な破壊力で、大破するテーブル。背中から直撃した瞬斗は、身体を逆くの字に曲げ、悶絶している。 純粋な叩きつけのダメージと、脊髄損傷による体の痺れにより、身動きが取れない。

ブォーグ 「 どうだ、丈夫だろ? この糸。 弾丸を糸状にしてるから頑丈でしかねぇ。しかも、攻撃にも防御にも使えて、優秀なんだぜ。 」

先程の瞬斗の奇襲を防いだのが、この糸弾だったようだ。 自身に向けて撃つと、ミイラのようにグルグル巻き状態になり、攻撃こそ出来なくなるが、鉄壁の防御を誇る仕様となる。 一度叩きつけたぐらいでは、到底満足出来ない様子のブォーグ。

手を止める気などさらさら無く、瀕死状態の瞬斗を 左右の床に向かって、ガツンガツン!と繰り返し叩きつける。 叩きつけられる度に、飛び散る瞬斗の血しぶき。 床に押印される瞬斗の“人拓”スタンプが実に痛々しい。

瞬斗 「  ………………………。 」

全身血だらけで、目は半開き状態。かろうじて意識はあるようだが、見るからに非常に危険な状態である。

ブォーグ  「 あれれ? もう限界なのか? お前みたいな煩悩の塊には、戒めに108回叩きつけてやろうと思ったのだがな。 クックク 」

瞬斗 「 ゴホ ゴホッ …………。 」 
瀕死の状態ではあるが、目の奥の光は、完全に消えていないように見える。

ブォーグ 「 良い目つきだ。 だが、今さら何が出来る?  …しょうがねぇなぁ 特別に絶望体験をお届けしてやろう。リヴァース! 」

ブォーグの合図と共に、瞬斗を捉えていた蜘蛛の糸弾がほどけ、シュルシュルと拳銃へと吸い込まれ、戻って行く。 < バタッ > 力無く その場に倒れる瞬斗。一方的にやられる事しか出来ない自分の力の無さを嘆き、半分潰れた瞼の奥に悔し涙が溢れている。

瞬斗  「( うぐっ …クソっ クソゥ )」

 床に広がる自分の血液に、悔し涙が混ざっている。

ブォーグ 「 これで最後だ。 何か遺言でもあるか? 口開く元気もねぇか。 …せいぜい あの世でも復讐ごっごしてろよ、負け犬くん。 」

いよいよ これで最後なのか、と覚悟を決める瞬斗。 思えば今回の作戦は、勝率が一桁の無謀でしかないものであった。 それを分かっていながらも、瞬斗の男気を優先して、敢えて止める事をしなかった条には感謝しかない。 古太郎の言葉も思い出す。 困った時は、条を信じろと。顔を思い起こすと…

優しい笑顔とは程遠い、人をクソ小バカにしているような顔しか思い出せなかった…。 出る顔出る顔、もれなく全てが文句なしにイラっとする顔ばかり。気を取り直して今回協力してくれた、仲間の顔を思い出す。 “ここ”、趙、飛山… こちらもクレームの嵐で、罵詈雑言の口の形をしている顔しか思い浮かばなかった…。 

飛山に関しては、唯一見下すような冷めた無表情であった。自然と、今流している悔し涙とはまた異質の涙が、大量に溢れて来る。

瞬斗  「( ヤベッ 美しい思い出が全然ねぇじゃん… クソっ こうなったら、もうやけくそだ。)」

ごそごそとポケットをまさぐっている様子。

ブォーグ  「 おいおい、そんなに号泣すんなよ。 すぐに楽にしてやるから。 こいつの先祖は川か? 」

“スキャナーマガジン”を親指で操作し、特殊弾丸を選択する 【 飢渇弾(スターベーション)】

ブォーグ 「 一滴残らず、全てを吸収してやろう。…干からびろ!雁字の監獄_アングイッシュプリズン!!!! 」

飢渇弾にて糸(silk)を発砲した、ブォーグ。蜘蛛の糸にてターゲットを捕縛した後、全ての英気を吸収してしまう、末恐ろしい必殺弾だ。放たれた糸弾(silk)が、瞬斗の目の前で蜘蛛の巣のようにバッと広がり、先程同様に瞬斗を捉えるかと思われた瞬間、ブォーグの足元から飛び出して来た黒い物体が立ちはだかった。

< ブシュシュシュシュー > 
黒い物体に触れた途端、蜘蛛の糸が消滅していく。

ブォーグ  「  !? …何事だ!? 」

瞬斗 「 はぁ はぁ はぁ …ZERU<ジール> 」

「ケツアゴデス」として、あらゆるサイトへのハッキングを繰り返す日々。 ある日、常人では決して辿り着けない闇サイトへの侵入に偶然成功する瞬斗。 そこは、今まで感じた事が無い、圧倒的なヤバさを感じる個人サイトであった。 そのサイトで見つけた、闇の未完兵器「ZERU」。まだまだ開発途中段階の代物で、使用者への危険を大きく伴う未完兵器だ。無機物な物質を有機物化させるという無茶苦茶な内容で、 この「ZERU」は、特殊拳銃に装填して対象者の影に撃ち込む事で、その影を“未知なる怪物化”出来るというものである。解き放たれた“未知なる怪物”が、その後どのような行動を取るかなど、完全に運任せのアンコントローラブル状態である。

ブォーグ 「 何だよ、このバケモンは!? こんなもん見た事ねぇぞ… 」


ブォーグの影から出現したZERUは、4m前後の人間のようなフォルムで、腕が長く悪魔のような爪が付いた手は、異常に大きい。また、全身が漆黒に包まれているため、人間のような表情は読み取れない。その他の特徴としては、輪郭部分が何やら煙のようにモワモワと動いている。驚愕しているのも束の間、次の瞬間、ブォーグの方へと移動して行ZERU。湖の湖面の上を水紋を付けながら、ポワンポワンと歩くような移動手法である。


ブォーグ 「 気持ち悪ぃ野郎だな… くらえ! 飢渇弾(スターベーション)→ 咬(bite)! 」

 < グガウッ!グガウッ!グガウッ! >


特殊拳銃を連射するも、ZERUに触れた途端、異次元に吸い込まれるように、全ての弾丸が消滅してしまう。 < ブシュ ブシュ ブシュ >


ブォーグ 「 マジかよ!? チッ! しょうがねぇ  糸(silk)! 鉄壁のミイラ男_スパイダーズバリケード!! 」


自身に向けて 糸(silk)を放ち、とっさに防御態勢を取る、ブォーグ。見る見るうちに、蜘蛛の糸弾が全身を包み込む。まるで、鋼鉄製の有刺鉄線でグルグル巻きにされた、何とも近寄り難い パンキッシュなミイラ男のようだ。 

瞬斗 「 こりゃ想像以上にヤベェな… 何する気だ? 」

パンク調のミイラ状態になったブォーグの目の前に立つと、徐に片手を上げ、剥き出しにした爪を斜め下へと振り下ろした。 < ブォン >

瞬斗 「 !? 」

振り下ろされたブォーグの脇腹付近が、ネズミがかじったチーズのように、丸くえぐり取られている。 えぐり取られた部分は見当たらず、異次元に投げ捨てられたかのように消滅している。 この世の物とは思えない異次元の“消滅撃”に、ブォーグは痛みも感じていない様子。

ブォーグ  「 なんだ? その下等動物のような攻撃は。 まるで効かねぇじゃねぇか。 クックク 」

ZERU  「  ………………………。 」

立て続けに爪を振り下ろし、ブォーグの肉体を、蜘蛛の糸弾毎えぐり取る。 < ブォン ブォン ブォン ブォン > 一瞬で、ボコボコに穴が開いたチーズ状態となった鉄壁ミイラのブォーグ。異次元の攻撃に、痛みも衝撃も感知する事が出来無いので、依然ブォーグは余裕の表情で籠城を決め込む。

ブォーグ 「 無駄 無駄ー まるで効かねぇな。 デカい図体して拍子抜けじゃねぇか? クックク 」 < ギシッ ギシッ >

次にブォーグの頭と足を上下から掴み、半分に切ったグレープフルーツの果汁をねじって搾るように、万力の要領でに圧力をかけ出した。< ギギギ… ブォン > ねじり潰すと同時に異空間へと投げ捨てられた、ブォーグ。 寝落ちする瞬間のように、視界が完全シャットアウトされた。 感知する事が出来ない漆黒の闇。

自身の身体がえぐり取られていた事も、敗北した事も把握が出来ないまま、二度とこの世に起床する事は無いだろう。

瞬斗の方を振り向くと、湖面の上を水紋を付けながら、歩くように近づいてくる。< ポワン ポワン > 衝撃でしかない、異次元の消滅SHOW。 一部始終を目の当たりにしていた瞬斗は、瀕死のダメージと恐怖で身動きが取れない。

瞬斗 「 う、うわわわわわわ こっち来んなてーー! ご主人様はオレだぞ。 」

瞬斗の目の前まで移動して来たZERU。しゃがみ込み、横たわっている瞬斗の顔を覗き込んでいる。 間近で見る“未知なる怪物”は、想像の何倍も大きく、宇宙人に感じるような未知なる存在感が、さらに恐怖を上乗せする。

瞬斗 「( ひぎゃぁぁぁああーーーーーーーー  も、もうダメだ… )」 この期に及んで、死んだふりでその場をごまかそうとしている。

しばらくして、何かきっかけでもあったのか、真っ黒で表情が分からないZERUがスーッと立ち上がり、振り返って立ち去るかと思った刹那、一拍置いてから徐に片手を上げ、剥き出しにした爪を斜め下へと振り下ろして来た。 

< ブォン >

絶体絶命、もうダメかと思った次の瞬間、何者かが瞬斗に体当たりをして来た。 < ドガっ > 衝撃でゴロゴロと転がって行く、瞬斗。 間一髪のタイミングでZERUの“消滅撃”をかわす事に成功した。ギュッと縮こまった身体に込めた力を解き、恐る恐る薄目を開けると… 手を広げ、自分をかばうように立ちはだかる人物の姿が視界に入った。 大きくも温かい見慣れた背中のその男… 


何と!古太郎であった。


古太郎 「 ワ、ワシの可愛い孫に、何してくれとんのじゃ!! …ゴホゴホッ 」

瞬斗 「 …ジィちゃん!? 何でこんなとこ来てんだよ… 」

先程とはまた違う涙を流している。

古太郎 「 病院のメシが不味くてな。 バーガー買いに抜け出したついでに、立ち寄ったんじゃよ。 …もう後悔はせんと決めておったしな。 」

瞬斗 「 …そんなにバーガー食いたかったのかよ、いい年齢して。 」

古太郎 「 って、そっちの後悔じゃねぇわ! 見たところボロボロのようじゃが、そんな減らず口叩けるようなら、少し安心したぞ。 ニヤっ 」

瞬斗 「 そっちこそ怪我だらけじゃねぇか。 瀕死の老人に助けてもらう程、オレも腐っちゃいねぇよ。 …ウソだ!やっぱ助けてぇーーー 」

古太郎 「 素直か!心の声が漏れておるぞ。 …それにしても、何じゃこいつは?? まさか、“シャドーピープル”ってヤツか? 」

瞬斗  「 えっ こいつの事、知ってんの? ジィちゃん。 弱点とかあれば良いんだけどさ! 」

古太郎 「 知らん。 」

瞬斗  「 ……… んだよ! 病院帰れ! 」

古太郎 「 昔の都市伝説で、世界各地で“シャドーピープル”の目撃情報が上がったという噂があってな。 正味それぐらいしか知らんよ。 」

瞬斗 「 そうか。 …仮に、こっちが持ってるマテリアルの全てが上手く噛み合ったとして、絶望に変わりは無い感じだな。(せめてジィちゃんだけでも逃がさなきゃ…)で、何してんだ?ジィちゃん。 」

古太郎 「  ……………。( 話掛けるな! 生きてる事がバレるだろうが。) 」

瞬斗 「 死んだふりは効かねぇって、先程実証済みだよ!…って来たぁあああーー!!! 」

瞬斗が転がった先を確認すると、湖面の上を水紋を付けながら、歩くように近づいてくる。< ポワン ポワン > 覚悟を決めた表情で、とっさに古太郎が瞬斗に覆い覆い被さった。

古太郎 「 どうせ死ぬなら、1秒でも長く生きてくれ。ワシにはこの程度の事しかしてやれん。 …スマンな、瞬斗。 」

瞬斗 「 お、おい!どけよ!! オレがジィちゃんを助けるんだ!! 」

泣きながらジタバタするも、覚悟を決めた古太郎の力は強く、振り切る事が出来ない。

未知なる怪物に、慈悲を求めるのもナンセンスな話。 当然そんなものは皆無で、容赦無く剥き出しにした爪を、再度瞬斗に向けて振り下ろして来る。


クソ―!! も、もうダメだ……。



< バズーン!>

どこからともなく発せられた発砲音が室内に鳴り響く。 地面の中を潜って進んで来た黒いモノが、途中から黒豹形の影に形を変え、振り下ろして来るZERUの爪に対抗するように飛び掛かった。< バチッ! > 先程のブォーグの時のように一瞬で異次元に投げ捨てられる事は無く、影同士がぶつかり合っている。

条 「 影走り   …ったく、小汚ぇジジイとクソガキが、そんなとこで何やってんだ? とっとと、どけぇい! 」

古太郎 「 …おぅ 条か? 遅ぇぞ。 ニヤっ 」

虚ろな目で条を確認すると、ホッとした笑顔になり、ガクッと気を失ってしまう、古太郎。

瞬斗  「 おいっ!ジィちゃん! しっかりしろよ… 何だ、息してるじゃねぇか。 ふぅ テメー! 遅ぇよ、条!! 」

条 「 ん? 殺人代行企業のTOPがいねぇじゃねぇか。 そのバケモンがそうなのか? ってか、そこ 危ぇぞ。 」

< ズサァッ! > 黒豹の影を掻き壊すと、再度瞬斗に向けて剥き出した爪を振り下ろして来る、ZERU。 < ダダダダダダッ > またも間一髪のところで、一気に飛び込んで来た大男が、2人を抱きかかえてその場を避難した。

趙 「 …危なかったゾネ。 オリャっ 手土産だゾナ。雷地<ライチ>! 」

ピンを噛んで取り外し、ライチ型の手榴弾をZEROに向けて投げ込む。 < ジュワー!> 爆発と同時に赤い煙幕が巻き上がった。

ここ 「 …なにあれ?影?? 影に氷は効くのかねぇ。 ほっ、殴(Beat) ザ・フローズン ジャイアント!!!! 」

< ボガーン!! > 白熊の拳を模したドデカい砲弾が氷を纏い、被弾と同時に肉球型の煙が立ち上る。

瞬斗 「 !? 趙! それに“ここち”まで!! …やっぱ、みんなオレの事好きなんじゃーん。 」


趙 「  ……………………。 」( やれやれだゾイ。 )

ここ  「 ………………………。 」( 後でシメる。)

< モワワ~ > 何事も無かったかのように、手榴弾の煙幕と砲弾の凍気をかき分けて、ZEROが姿を現した。キョロキョロと瞬斗を探しているようだ。

ここ  「 ありゃりゃ 全く効いてねぇじゃーん。 ねね? どうすんの? 一斉攻撃でもしちゃう? てか、何でまだ仮面被ってんの? 」

飛山 「  ………………………。 」

条 「 う~む。 特殊拳銃だろうが何だろうが、物理攻撃は効きそうにねぇな。 趙のおっさんにでも食わせて、胃袋に閉じ込めるか? 」

飛山 「 あながち間違って無いかもね。 まぁ、別の所に閉じ込めるけど。 」

サイコロ大の小さな箱を取り出すと、ZERUに向かって歩き出した。

瞬斗 「 …あいつが例のキレモノか。 ん? あれは?? まさか… なるほど、吸い込むって訳か。 」

< スタスタスタ >恐れる様子も無く、ZERUの前に立ちはだかる、飛山。 興味津々にZERUを観察しているようだ。 特に何もせず、至近距離でしばし向き合う両者。

飛山 「 へぇ こいつは珍しいね。 だが、まだまだ粗削りのようだ…。 さて 」

サイコロ大の箱の上蓋を親指でピンっと弾くと、その小さな箱の中には、想像を絶する程の、宇宙のような広大な亜空間が広がっていた。

飛山 「 PAN・DORA 」

飛山の掛け声と共に、ターゲットにされた対象物が物凄い吸引力で箱の中へと吸い込まれて行く。< シュ、シュゴゴゴゴゴゴゴゴォォォオオオオオオオ!! >無表情ながら、抵抗しているようなZERUであったが、PAN・DORAの吸引力には敵わないようだ。 逆ハリケーンの如く渦を巻きながら強烈に吸い込まれて行く。

4mの巨体が、強制的に徐々に徐々に箱へと吸い込まれて行き、最後まで抵抗して箱の角にしがみ付いていた巨大な手まで、その全てを吸い込み切った。
< プスンッ > 吸い込み完了のサインとして、サイコロの目が全て「満」の字になっていた。

ここ 「 スッゲぇー! 何それ何それ? アタシにもちょうだいよー! 」

飛山 「 これ、1回のみの使い捨てタイプだよ。それでも、表の市場で換算すると10億メロぐらいの価値があるかな。 」

ここ 「 !?  高っ!! 変態助けるために10億なんて… モッタイネー!ったら、モッタイネー! 逆に払えよなー テメー 」

瞬斗 「 …まぁまぁ。そんなに惚れるなって。えーと、お前とは実際に会うのは初めてだな、色々助かったよ、ありがとう。 」

飛山 「 アンタの事はずっと意識してたよ、天才ってこの世にいるんだなって。まだ若いんだな。 」

被っていたケツアゴデスの仮面を取る。

瞬斗 「 …って、イケメンかーい! んだよ! なんか気に入らねぇー  えー オレの方が天才だしー 足長ぇしー 」

飛山 「  ………………………。 」

瞬斗 「 シカトすんじゃねーよ! なんだ、勝負すっか? おっ? 」

趙 「 あれだけ瀕死の状態だったのに、随分元気になったゾイ。 カッハハ 」

条 「 ところで、今回 “もも”はどうした? 」

ここ 「 ジャンケンに負けて、ひとり店で留守番してるよー こんなんだったら、アタシも店に残れば良かったわー 」

条 「 …ひとりで店に残ったのか? なるほど。おっ 」
何やら難しい顔で考え込んでいる様子の条。意識を取り戻した古太郎に気付く。

ボロボロの状態の古太郎の元に歩み寄り、声を掛ける。

条 「 気付いたか? ったく、いい年齢なんだからよぉ、あんま無理すんな。おっさん情報屋だろ? 闇との戦闘なんて、するもんじゃねぇ 」

古太郎 「 …しゅ、瞬斗は無事か? ふぅ お前が来てくれて安心したよ。 本当助かった。万が一の事があったら、娘に合わせる顔がねぇ… 」

条 「 まぁ ついでだから気にすんな。それより、すぐ病院戻った方が良いぞ。 特に顔面が重傷だ。 」

古太郎 「 …ついでだったか。( どこかで聞いたような気がするな。) それより、お前も酷くやられたようだが? …!? なんじゃその腕は。 」

条 「 あぁ これか? カスリ傷だ。それより、何か新しい情報は入手出来たのか? こっちはてんでダメなもんでねぇ。 」

古太郎 「 ………………………。( 何がカスリ傷だ、バカ言うな ) …くれぐれも無茶はするなよ。新しい情報じゃと? もちろん仕入れてるぜ。 」

条 「 おっ さすが、おっさん! やるじぇねぇか。戦闘なんぞに首突っ込んでねぇで、情報だけ収集してりゃいいんだ。 …んで? 」

古太郎 「 あぁ そうする事にするよ。仕入れたネタだが… 主に武器を取り扱う、今世紀最大級の“闇市”ってのが近々開催されるらしい。」

条 「 ほぅ 聞こえからして、すこぶる物騒だなぁ。 …オモロそうじゃねぇか。 詳細聞かせろよ! ニヤっ 」



【 --- 場面転換して、ダークサイド --- 】


薄暗い部屋にて、外部からの連絡を受けている様子の、謎の人影。< ジジッ > 見るからに高級そうな、革張りの大きな椅子に腰を掛けている。

謎の人影 「 …何が殺人のプロだ? 所詮、チンケな悪党でしか無かったな。 まぁ良い、他に収穫があったからな。 ニタァ 」

血生臭さをべっとりと纏った、胡散臭くも強烈な視線が、戦いを終えて休息している条たち一人一人の顔を捉えた後、飛山の顔へとズームアップされた…

依然 手掛かりも薄く、研究所や黒幕の存在には辿り着けない状況ではあるが、瞬斗・古太郎の奮闘により、またひとつ闇の組織を壊滅させる事に成功した。闇への被害をきっかけに、仲間も集まりつつある。 各々、真の復讐を成し遂げるべく、まだ見ぬ明日の闇を探し続ける。


第1部 入来篇 -完-


( つづく )



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