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オリジナル漫画「scope」原作-15

【吹星姉妹篇】VS違法ドラッグ組織(橙)第4話


辺りを包む暗闇と、どこからともなく漂って来るひんやりとした冷気。 ボワ―とした何かが視線の端っこを過る。気配を感じた構成員たちが後ろを振り向いた。

構成員 「 …そうそうそう、公園を散歩している死神ちゃんがね … ウギャーーーーーーー!!!! 」
分かりやすい二度見をする。


6mを超える、浮き出た3Dホログラムの死神に腰を抜かす構成員。周辺で、出現したお化け軍団に次々と叫び声が上がる。

構成員たち 「 …ウギャーーーー!! うわぁああーーーーーーー!! ひぃーーーーーーーーー!!!! 」

未だ見ぬお化け軍団に、次々と悲鳴を上げて腰を抜かしていく闇の構成員たち。リアルな闇に精通している割に、まやかしの闇にはめっぽう弱いようだ。驚き氷で滑って転ぶ、アワアワ言って腰を抜かす、その場で失神するなど… 滑稽に混乱する現場を見て、クスクス笑っている、“ここ”。

ここ 「 お化け、エグいぐらいリアルだけどさぁ、そんなに分かりやすいリアクションする? ダッサーw さてと、そろそろ後片付けしなきゃね。 」

つま先をトントンとして、シューズに仕込まれた刃を出し、スケートの要領で凍った床を滑って行く。< ザサー、ザサー、ザサー >フィギュアスケートの選手を彷彿とさせる見事な滑りっぷりだ。ぐんぐんスピードを上げ、白熊型拳銃 「 SHIROKUUMA-BZ 」を豪快に振り回す。

ここ 「 おらっ 一匹ー! そりゃ 二匹ーー!! もいっちょ 三匹ーーー!!! っと。 」 < バチコーン!バチコーン!バチコーン! >

錯乱している構成員たちを、これ見よがしにバズーカでぶん殴って行く。 最後の一人になった構成員に向かってトリプルアクセルをかます、ここ。

ここ 「 < クルクルクルー > フィーニィーーーーーッシュ!!!! どう?芸術点満点でしょ? ヒッヒヒ。 」
< ドゴーン!! > 吹っ飛ぶ構成員。

倉庫前にたむろしていた構成員たちを一掃する事に成功した、ここ。立ち昇る冷気、スケートショーを終え、ここからが本番だという引き締まった表情に戻る。倉庫の扉から少し離れた場所まで、スケートで後ろ向きに滑って行く。 < サー、サー、サー >

ここ 「 よしっ この辺でいっか。 んじゃ、そろそろ本気で行きまっせ。 < 倉庫の扉の方に向けて、“SHIROKUUMA-BZ”を構え、照準を合わせる。 > 食らえ、殴(Beat)! 」< ボガーン!! >

白熊の拳を模したドデカい砲弾が、倉庫扉へと放たれる。< ゴゴゴゴゴぉ~ ズガーン!!!!!> 扉に被弾し、肉球型の煙が立ち上る。モワモワモワ~ 徐々に煙が晴れて来る。扉を吹き飛ばされ、ガラ空きになった倉庫入口にそびえ立つ、バズーカを担いだ、ここの後ろ姿。

ここ  「 もも~ 待った?  ニコッ 」

突然の爆発と、吹き飛ばされた扉に、ざわつく倉庫内。拍手をしながら、奥にいるゴウラクが声を掛ける。

ゴウラク 「 おぉ これはこれは、派手なご登場で、お姉さん。ちゃんと秘密兵器持参して来てくれたようだな。 クックク。 」

ヤッキー 「 やれやれ、もっと大人しく登場して欲しいもんだねぇ。いくらパーティーのメインディッシュだからって、何でもアリは違うっしょ。 」

ここ 「 おいっ! “もも”はどこだ? 5秒待ったる。 ごぉーー、よぉーーん… 」

 倉庫内に向け、“SHIROKUUMA-BZ”を構え、カウントを始める。

ヤッキー 「 …ったく、せっかちなお嬢ちゃんだねぇ。 面倒っ 」< スチャっ > 特殊拳銃:猫型拳銃 「ハイエナ」を構える。

ゴウラク 「 おっとっと、まぁ待て待て、ご両人。こっちには人質がいるって事忘れないように。 クックク 」
納得した表情で拳銃を降ろすヤッキー <!?>

ここ 「 知ったことかー 取りあえず食らえ!! 爪(Claw) 」< ドゴーン >


倉庫中央の天井に向け、 白熊の爪が付いた砲弾を撃ち込んだ。< バラバラバラ >大きく開いた天井から木の破片が落ちて来る。混乱する倉庫内、“ここ”に向けて、幹部連中が拳銃を発砲して来る。< パン!パン!パン! >

幹部たち 「 お、お前、正気か!? 人質の意味知らねぇのか? この小娘が! 」

とっさに倉庫入口外へ身を隠す、“ここ”。人質が取られている事などお構いなしに、バチバチに応戦する。

ここ  「 だから、知らねぇっつうの!! ほらほら、くらえ!! 爪(Claw) 」< ドゴーン、ドゴーン、ドゴーン! >

幹部たち 「 ウギャっ! ウギィっ! ウギョっ! 」
連射されるバズーカの砲弾の威力で、次々と吹っ飛ぶ幹部連中。

もも 「 …アタシまだいるんですけど。。 “ここ”、スイッチ入ると歯止め効かなくなるんだよねぇ…汗 」
裏部屋で捉えられている“もも”が苦笑している。

ここ 「 まだ まだ まだぁー! イッツア ショーーーターーイムっ!! 」


“スキャナーマガジン”を親指で操作し、特殊弾丸を選択する 【 結氷弾(Frazil) 】 地面に向け自分が進む方向に絞り込んで、咆哮(Roaring)を放つ。“FROZEN ROAD!”< バリバリバリ > 幹部たちに向け、氷のレールが敷かれて行く。レッドカーペットらしからぬ、助演男優賞を受賞したアシカが滑って来るかのような、ひんやりアイスカーペットだ。つま先をトントンとして、シューズに仕込まれた刃を出し、そのレールの上を滑って行く “ここ”。< ザサー、ザサー >

幹部たち 「 な、なんだこれは!? おわぁっ! グフッ! 」

スピードに乗った勢いで、 “SHIROKUUMA-BZ”を振り回し、幹部たちをぶちのめして行く。< ドゴッ、ドゴッ、ドゴッ >

ここ 「 はぁ はぁ ふぅ~ ……アイスショーも連チャンだと流石に息が切れるねー  さてと。 」

放たれた“FROZEN ROAD”により、ゴウラクのいる方向に向け床が凍って行く。 < バリバリバリ > 今回はスペシャル版のようで、ループコースターのように一回転した氷のレールが敷かれて行く。勢い良く滑り出したところで、ゴウラクが叫ぶ。

ゴウラク 「 はい、そこまでー おい! 連れて来い! 」

後ろ手に縛られた“もも”が倉庫裏部屋から連れて来られた。“もも”に拳銃を突きつけるヤッキー。

ここ 「 っとと、ストーップ!! あっ もも! 無事で良かった!! 」
急ブレーキを掛けて止まる、“ここ”。

ゴウラク 「 よろしいよろしい。 感動の再会だ、せっかくだからもっと盛上げようかー こちらもショータイムだ。 クックク 」< パチンと指を鳴らす、ゴウラク。 >


倉庫の後方部にある鉄扉が音を立てて開き出す。< ビー、ビー、ビー >

< !? > ドライアイスのように、モワ~っと出て来た煙と共に、何とも言えない不気味な群衆の影が現れた。< ザッ… ザッ… ザッ… >

俯いていて、顔の表情が良く確認出来ない。 ん? 良く見ると、サラリーマンや主婦、学生など、ぱっと見普通の一般人のようだが…

ゴウラク 「 お前ら、こいつを殺った奴に、ドラッグ1年分を無償で提供してやろう~ さぁ 早い者勝ちだ! イッツ、ショータイム!! 」

その正体は、末期のドラッグ中毒者であった。< 目は血走り、口の端っこからおぞましい泡のようなヨダレがじゅるじゅると噴き出ている。>禁断症状にて凶暴化したその姿は、暴れ狂うゾンビの群れのようにおぞましく、そして、とても悲しい姿。母親の姿をオーバラップさせる、“ここ”。 ギュ―っと胸が締め付けられる。その複雑な心情とは裏腹に、末期のドラッグ中毒者が目の色を変えて、次々と襲い掛かって来る。

ここ 「 …くっ …ダメだ。 」

 “SHIROKUUMA-BZ”を構えるが、悲痛な表情のゾンビに母の面影を重ね、トリガーを弾く事が出来ない、“ここ”。
そんな事とはお構い無しに、容赦なく襲い掛かってくる末期のドラッグ中毒者たち。 素早い身のこなしで、襲撃をかわしていく“ここ”。

もも 「( ここ… うぐっ )」

テープにて塞がれた口では言葉は発せないが、あまりの驚愕の光景に“ここ”を心配し、涙ぐむ“もも”。 同様にゾンビに母親の姿をオーバーラップさせているようだ。隙を見て助けに動こうとするも、ヤッキーに阻まれ、拳銃をこめかみに強く突きつけられる。

ヤッキー 「 お宅はさぁ じっくりこのショーを楽しんでなよ、今度余計な動きしたらさぁ 撃っちゃうよ。 」< スチャ > “もも”を踏みつけ、拳銃を構える。

尚も中毒者の群衆による襲撃は、勢いを増すばかりだ。 “ここ”を取り囲み、奇声を上げながら、四方から同時に襲って来る。

ここ 「 …この人らはウチらには関係ないし、いくらヤク中とは言え、一般の人だからなぁ… 家族もいるだろうし、攻撃なんて出来ないよ。」

まるで牛若丸のように、ひらりひらりと身をかわす、“ここ”。目の色を変えて群がる群衆。次の瞬間、倉庫内に銃声が鳴り響いた。 < バキューン! >

ヤッキー 「 牙(Fang) 」

猫型拳銃 「ハイエナ」 から放たれたハイエナの牙弾丸が、“ここ”の太ももをかすめる。 不意打ちにバランスを崩す“ここ”。

極甘の果実に群がるアリの如く、倒れた“ここ”に群がって襲い狂うドラッグ中毒者たち。< ド・ド・ド・ド・ドォ > 瞬く間に群衆に飲み込まれてしまう、“ここ”。

もも  「 ( ここー!… ) 」

姉のピンチにこわばる表情を浮かべるも、ヤッキーに踏みつけられ身動きが取れない、“もも”。

ここ 「 …しまった。 ちょ やめろって …くそっ くそっ 」

群衆を振り払おうとするも、数が多すぎて、やがて暴動の渦に飲み込まれてしまう。その様子を見て、薄ら笑いを浮かべる、ゴウラクとヤッキー。…もうダメだと姉妹が諦めかけたその時、大きく開いた天井の縁に立っている人影が叫んだ。

謎の人影 「 何だかカオスな状況だなぁ、まぁいい。…位置について、 よーい ドンっ! 」

復讐開始の号砲が、混とんとした倉庫内に鳴り響く。

ゴウラク 「 !? …ん? 何事だ?? 誰だ、あれは? 」

天井を見上げる。

復讐への号砲を放ったその男、大噛条一狼、見参!
パーカーコートをなびかせ、最良のタイミングで颯爽と天井に姿を現した、条一狼。

条 「 お取込み中のところ申し訳ないが、オレも参戦させてもらうぜ! “スキャナーマガジン”にて特殊弾丸を選択する【 黒影弾(シャドウ)】 なかなかねぇぞ… 出血大サービスだ!くらえ! 影走り!→ MAX!! 」< バズーン! >

“ここ”に群がるドラッグ中毒者に向けて放たれた弾丸が、途中から黒豹型の影に形を変え、群衆足元に向かって地面の中を潜って進み、複数に分散した。しっぽを出して横回転する黒豹形の影 <グルグルグルんっ> ドラッグ中毒者たちを次々と捕縛して行く。

ヤッキー 「 おい おい おい、せっかくのショーが台無しじゃんかよー 誰だ? あいつ。 牙(Fang) 」
条に向けて発砲する。 < バキューン! >

条 「 …危なっ テメーいきなり撃ってくんじゃねー! 」
とっさに銃弾をかわす、条。

ゴウラク 「 一体何者だ?貴様。 理由は知らんが、どうやらお前も秘密兵器持ってるようだな? ニヤっ 」


オンギャーーーーーー!!! 何だこりゃーーーーーーー!!!! 倉庫の外で叫び声が聞こえる。 次の瞬間、倉庫入口から別の男が飛び込んで来た。

瞬斗 「 ぜぇぜぇぜぇ …マジかよ、死神って本当に存在するんだな。 って おい!お前だけ天井からって、ズルいぞ!! 条! 」

ヤッキー 「 何だ? また変なヤツが入って来たな。 牙(Fang) 」
瞬斗に向けて発砲する。 < バキューン! >

瞬斗 「 …危なっ だから、いきなり無表情で撃ってくんなよ! このダボがぁ! 」物陰に隠れる瞬斗。

 ここ&もも 「 ………………。」

 あまりの突然の出来事に、状況を理解出来ずにいる姉妹。 二人が着ているパーカーコートを見て、少し安心しているようだ。

瞬斗 「 取りあえず、ダメ押しだけしとくか。 見てろよ~ 」

小ぶりなハンドガン、ヤマアラシ型拳銃 「ヘッジホッグ」を構える。“スキャナーマガジン”にて特殊弾丸を選択する【 痺毒弾(ナンブネス) 】

瞬斗 「 ちょっとだけ、痺れてもらうぜ、 針(Needle)! 」

ヤマアラシの針と化した弾丸が、次々とドラッグ中毒者たちに被弾する。条の影走りにて身動きが取れなくなったドラッグ中毒者たちに、追い打ちで放った痺毒弾の針が突き刺さる。 中毒者たちは、痺れて完全に動けなくなった。

瞬斗 「 ガッハハ どうだ!見たか? オレ様のハリネズミ型拳銃の威力を。(※本当はヤマアラシ型だが、本人はハリネズミ型と勘違いしている) おっ!“ここちー!” “ももちー!” お待たせしたね! オレだよ、オレ!情報屋の!! 」

ここ&もも 「 < !? > …お前が情報屋か。 想像より全然若くて貫禄ねぇな。 …あとで絶対しばく! 」

ドラッグ中毒者たちが完全に身動きを封じられたのを見て、激高するゴウラク。

ゴウラク 「 お前ら、せっかくのショータイムを… 随分とやってくれたなー!! 生きて帰れると思うなよ! 」

蠍型拳銃 「 デスストーカー 」を構える。

ヤッキー 「 社長~ オレ上の奴やっちゃいますねぇ。さぁて今日もノッテくかー!! ヒャッハハ 」

手の甲に乗せた怪しい粉を、鼻から吸い込む、ヤッキー。違法ドラッグを吸い込み、異様なほどに興奮度が増しているように見える、ヤッキー。 非合法なドーピング程、危険な物は無い。後先を考えない闇の人間の強さと言うのは、こういったイカレた精神力そのものと言っていいだろう。しかし、その何でもアリの相手に一歩も引く事が無い、条。こちらの信念もガチで強い。

条 「 …うっへぇ~ 変な薬吸いやがったー キモっ  おい!瞬斗!お前が姉妹を護れ! いいな? オレはこっちを片付ける。 」

瞬斗 「  お、おうよ。この天才ハッカーを舐めんなよ!ってか 既に手を打ってたりしてねぇー ガッハハ。 」特殊弾丸 【 透明弾(ステルス)】

突如、“もも”が後ろ手に縛られているロープが切れる。気付かれないように、見えない 針(Needle)を放っていた瞬斗。これ見よがしにドヤ顔である。

瞬斗 「大体人間の行動なんてのは、せいぜい数万パターンに分類されるからさぁ、先読みするも逆算するも めっさ簡単だぜ。 へっ 」

< バサっ >

縛られていたロープから解放され、口に貼られたテープを自ら剥がす“もも”。“ここ”と瞬斗のいる方に駆け寄って来る。< タッタタタ >

ここ 「 ももー! 大丈夫だった? 遅れてスマヌ。 」

もも 「 ここー! 助けに来てくれて、ありがと! 」

< ガバッ > お互いに抱き合う、姉妹。抱き合い、涙している姉妹を見て、もらい泣きをしそうになっている、瞬斗。 くるっと振り返った2人がこっちに向かって駆け寄って来る。

瞬斗 「 ホント良かったよ~ 2人とも無事で。オレの胸で同時に泣いていいよー! 」

2人を受け止めようと両手を広げて待ち構える、瞬斗。スローモーションで駆け寄って来る2人が、どんどん近づいて来る。 笑顔で迎え入れる、瞬斗。 接近するに連れ、2人のスピードがどんどん加速して行く。
「 あら? ちょ、ちょまっ… 」< ドダダダダダダ > 最高速度に達した時、2人同時に飛び上がり、渾身のダブルドロップキックが炸裂する。< バキーン!! >

ここ&もも  「 テメぇー! 騙しやがったなー!! 」

Wドロップキックを顔面に食らい、吹っ飛ぶ瞬斗。 さっきドヤってた行動パターンが全く把握出来ていない。

瞬斗 「 ご、誤解だよ… あいつに指示されてやったんだよ。 ほらっ あれっ。。。 」

天井を指差すと、既にヤッキーと共に姿を消している、条。

ここ&もも 「 はあ? 誰もいねぇじゃねーかー! このウソつきが!! 」

2人がかりの激しいストンピング(踏みつけ)が繰り広げられる。< ドガドガ >

瞬斗 「 …ザッギ イダデショ?アイヅが全部悪いンダヨ… てか助けたジャン… 」

顔中を蜂に刺されたかのように、ボコボコになった瞬斗が反論する。

ここ 「 まぁ こいつが言ってる事も全部間違ってる訳じゃないから、もういっか。リアルでは初対面だし。 」

もも 「 そだねー こいつ蹴ってアタシのケガが酷くなってもアホらしいしね。 リアルでは初対面だし。」

捉えられていた際にケガを負っている“もも”。

ゴウラク 「 …もういいかね? 君たちの秘密兵器は置いてってもらうよ。 それと、ケガしてるようだから、後で飛び切りの薬を処方してあげよう。 クックク 」


( つづく )



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