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オリジナル漫画「scope」原作-54

【暗堂篇】VS武器密輸組織(紫)第7話


条 「 んな!? あいつ 」

以臓 「 全く、せっかくの修行の邪魔をしおって。 いちいち騒がしいヤツだな。 」

次の瞬間周囲を確認すると、既に必殺の間合いに入っていたはずの側近や、鬼島は既に姿を消していた。一瞬の隙をついた撤退劇は、闇の人間ならではの超危機管理能力であり、もはや芸術の域に達していると言えるだろう。闇の世界こそ引き際が重要なのである。

瞬斗 「 なんだ、なんだ!? おー あいつじゃん。 くたばって無かったようだね。 」

舞 「 あいつ、短時間で何か雰囲気変わった??…それより、イイこと思いついちゃったー 護衛してくれるよね? “S”くん  ひっひひ 」

瞬斗 「 何その満面の笑顔。( …か、可愛い )ふっ この天才に、何なりとお申し付けください! 」

舞 「 えへへへぇ そうこなくっちゃ。んじゃ行くよ! 」
混乱に乗じ、瞬斗の手を引っ張って、中央ステージへと走って行く。< ダダダダツ >

瞬斗 「 ちょ、ちょっと待ってくれー んぎゃーー!! 」
強引に引きずられている。

< ビー!ビー!ビー! > 館内に響き渡る、緊急警報。 突如侵入して来た怪しい変態によって、会場内はパニック状態である。 騒ぎを嗅ぎ付けた警察にでも来られては困ると、我先に ぞろぞろと会場から出て行く闇の人間たち。対照的に、1人突っ立ったまま、監視カメラを見上げている暗堂。

暗堂 「 おーい? 見てるんだろ? いつもいつも安全圏からでしか、ちょっかいが出せないヘタレヤローが!! こいつみたいな人間の組織のTOP、ここで取り逃がすと思うなよ!! 降りて来いやぁ!!!! 」中指を立てて挑発している。

さっきまでのホクホク顔をしていた状況が一転して、険しい表情をしているバーヘッド。真っ先に思い浮かんだのは黒幕の存在である今世紀最大の闇市を完全にメチャクチャにされ、収益は吹っ飛び、さらに来場していたVIPとの今後の取引にも大きく影響する、再起不能な最悪の事態になってしまった。文字通り、合わせる顔が無い。 …と言うか、整形して別人になるか、消される前に国外逃亡するぐらいしか、選択肢が残されていない。

バーヘッド 「 アハハハ 完全に殺られるな、こりゃ…  逃亡する前に、お前には落とし前付けてもらうぞ!! 待ってろ、クソガキがぁあ!! 」

ゲリーポスター 「 同感ですねぇ… あいつ1人さえいなければ、こんな事にはならなかったのに… ゆ、許せねぇなぁああ! ブチ殺してやる!! 」

天国から地獄に突き落とされた気分の2人は、怒りに狂った表情でオークション会場へと向かう。 手にはいびつな“特拳”を所持しているようだ。
そんな中、猛スピードで中央ステージへと向かう、舞と瞬斗。< ドダダダダダダダー >

条 「 ん? あいつら、あんなとこで何してんだ? 猛ダッシュしてやがる… 」

以臓 「 トイレが見つからないのか? それともガスの元栓でも締め忘れたのに気付いたのであろう。 」慣れたように受け流す、条。

舞 「 ぜぇぜぇ …無事着いたわね。 さぁ、今こそケツアゴデスの力を見せる時よ! 瞬斗くん!! 」 商品と共に取り残されているMCを指差す。

瞬斗 「 ちょっ… だからNGワード連発すんなよな!で? なるほど、アレが欲しいってのね。 任せてよ! 」

< チャッ > MCにGenimaを構える。

MC 「 な、何なんだよ!急に… いくらギャラ良いからって、闇オークションの司会なんてするんじゃなかったよ! ヒーっ!」
 両手を上げて逃げて行く。

瞬斗 「 うりゃー! 恐れをなしたか、この腰抜けめ。 どう? この“S”の勇姿、ちゃんと見てくれてた? 」
くるりと振り向くと、舞の姿は無かった。

< ウィン ガシャンッ ボ・ボ・ボ・ボッ >

取り残された闇の兵器 1人乗り用トカゲ型戦車 “エリマキトカタンッ” に颯爽と飛び乗る、舞。かかとを踏んでエンジンを起動させ、手綱を握る。

舞 「 ふむふむ  …なるほど。 イージーね、これの操作方法。あっ ありがとねー! “S”くん! じゃっ 行くとこあるからさ! バイバーイ! 」

< ドスッ ドスッ ドスッー!! > 見事に “エリマキトカタンッ” を乗りこなし、中央ステージの舞台下へと消えて行った。

瞬斗  「 なっ! “M”ちゃん! ちょっと待ってくれよ~ 使い捨てみたいじゃねぇーかー そりゃないぜぇ。。」

条 「 ガッハハ、あいつやるなー 立派な強盗犯じゃねぇか! まぁ この治外法権エリアにて、相手が闇となりゃ逆に称賛される行動だがな。 」

舞 「 …おっ 予想通り、まだ色々置いてあるじゃーん。諸々と、参考にさせていただきますね! 」
出品予定だった闇アイテムなどを漁っている。

パニックで荒れていた館内は静けさを取り戻し、出展者の武器売買系闇企業(紫)の2名と、条たち4名、それと暗堂を残し、全ての人間が退散した状況だ。人の気配も無くなり、ガランとした館内はやけに広く感じる。しばらくすると、控室にいたバーヘッドとゲリーポスターが会場へと降りて来た。

中央舞台へと移動した暗堂が、スポットライトに照らされながら、相手を睨みつける。まだその存在がバレていない条たちは、それぞれの場所で身を潜め、一先ず戦況を見守るようだ。

暗堂  「 おい! 復讐の前に、闇のアイテムを買いたいのだが、何故オークションを終幕にするのだ? 」

バーヘッド 「 …どの口が言ってんだ? キサマのせいでオークションがメチャクチャになったんじゃねぇか!! 舐めてんのだろ、テメェ!! 」

暗堂  「 何だと? 訳の分からん事をベラベラと。せっかく急いで戻って来たのに、意味ねぇじゃねぇか。 チッ 」

ゲリーポスター 「 何故戻って来れたんだ?? お前はもう、生きては帰れない運命にあったはずだぞ。 」

暗堂  「 貴様らがこいつの上司か… 言わば、親同然という事だよなぁ? こいつから受けた仕打ちと、変な研究所に引き渡した殺人未遂の恨み、ここで晴らさせてもらおうか。 」

床に倒れている、武器売買系闇企業(紫)の構成員。 幼少期に暗堂をいじめていた主犯格である。 辛うじて意識を取り戻し助けを請うている。

構成員 「 …うっうぐ  しゃ、社長、こいつやっちゃってくださいよ… ゴホゴホッ 」

バーヘッド 「 何だ、こいつ? ウチの人間か? 下っ端の顔なんぞ、いちいち覚える趣味は無ねぇな。」

<ボスっ> 倒れている構成員の頭を蹴り上げる。

ゲリーポスター 「 ウチの人間ですよ、こいつ。 確か去年ぐらいに入って来た奴かな? まぁ、良いのは威勢だけのカスですね。 」<ペッ> 唾を吐きかける。

暗堂 「 …酷ぇ扱いだなぁ。所詮悪人ってのは、犯した悪事が自分にそのまま帰って来る運命にあるんだ。だから、同情はしねぇぞ、だが… 」

バーヘッド 「 …情けねぇ、目障りだ! おいっ ゲリー! 片付けろ。 」

構成員 「 やっ やめてくれ! オ、オレが何したってんだよ。。 」 理不尽なる暴挙に酷く怯えている姿を、複雑な表情で眺めている暗堂。

ゲリーポスター 「 もし、この世にお前と言う存在が無かったら、そいつもこの場に現れなかった可能性が高い。…完全にお前の責任だな?二度とオレたちの前に姿を現すな! ボケがっ!!」< チャッ > 特殊拳銃を頭に向けて構える。

暗堂 「 やめとけよ。 …こいつに同情はしねぇが、弱い者イジメは見過ごせねぇな! 」< ガツッ > 手首を掴んで発砲を阻止した。

構成員 「 あわわわわわわ。。。。 < ガクンっ > 」

拳銃を突きつけられた恐怖と、阻止された安堵にて、気絶してしまう、構成員。

暗堂 「 …邪魔に変わりはねぇ。 あっちでくたばってろ! 」

< ブンッ > 1回転のショートジャイアントスイングで壁側に投げつけた。 

< ドガンッ >

たったの1回転ではあったが、ジャイアントスイングの勢いが強すぎて、壁にめり込んでしまう、構成員。身体を痙攣させて、失神しているようだ。

ゲリーポスター 「 …止めた割に、お前も似たような事やってるじゃねぇか。 」

暗堂 「 同情はせんと言っただろう? それにこいつを許した覚えもねぇよ。 」

バーヘッド 「 んまぁ、何でも良いわ。 いずれにせよ、オレの人生をメチャクチャにした事への落とし前は、キッチリつけさせてもらうぞ。 」

ゲリーポスター 「 お前がどんなにお強いのか知らんが、この場に丸腰で現れるほどイカレた行為はねぇぜ? 」

暗堂  「 フッ お気遣いどうも。 だがオレは日々“力”を求めるあまり、究極の“力”を手に入れてしまったんだ。 もう、“Genima”にも興味はねぇ。 」

バーヘッド 「 何だ、こいつ? 言ってる意味が全然分からんのだが。 まぁ良い、そのへらず口、すぐに塞いでやるよ。 」

見るからに極悪そうなフォルムをした“特拳”を構える、バーヘッド。魚型拳銃「バラクーダ」

バーヘッド 「 目障りだ、野垂れ死ね!  牙(Fang)!」
< ドスッ ドスッ!> バラクーダの牙を模した弾丸が、暗堂に襲い掛かる。

条件反射にて、とっさに両手をクロスさせ、防御態勢を取る暗堂。 放たれた牙弾は直線の軌道を突き進み、腕あたりに被弾する。 

< ガギンッ ガギンッ >

人体ではまず聞いた事が無い、鈍い金属音が鳴り響いた。クロスされた腕の奥からチラ見えする暗堂の顔が、不気味にニヤッと笑っている。

バーヘッド 「 !? 」

ゲリーポスター 「 な!? …機械音?? 」

暗堂  「 あれあれ? これが“Genima”とやらの威力ですかい? …流石にちょっとだけ痛ぇが、効かないねぇ。 」

条・以臓 「 !? 」

意表をついた暗堂の超肉体に、驚きを隠せない一同。 暗堂自身も驚きがあったようだが、「知ってますが、何か?」的な、さも当然のような素振りを見せている。

暗堂 「 オレを引き渡した研究所ってのは、一体何なんだ? 違法の人体実験ってのを繰り返してんだろ? しかも、その成功率は限りなく0に近い 」

バーヘッド 「 あっ? 研究所だと? オレらはあくまで取引をしているだけだ。 そっから先、何をしてるかなんて知るかよ! 」

条 「 む!?  随分とキナ臭ぇ話だなぁ… これは有益な情報が得られるかもしれんぞ。 」

以臓 「 !?  …ここに来た甲斐があったのかもな。 」

その頃… 舞と瞬斗は舞台地下の倉庫にて、闇のアイテムをこれでもかと言う程、物色していた。 今後の研究のヒントとなるアイテムが存在するのだろうか?

暗堂 「 なるほど。お前のような小悪党には絶対に漏洩されるような情報では無かったな、スマン スマン。 クククッ 」

バーヘッド 「 キサマぁぁあああああ!! どんな手術が施されたかは知らんが、闇の人間を舐めるなよ。…必ず殺すぞ。 」

ゲリーポスター 「 まぁ、待ってくださいよ、社長。 一応、正社員と言えど、オレも用心棒なんで。任せてもらって良いですか? 」

< ガサッ ゴソッ > 誰もいないはずの館内にて、もぞもぞと動く人影が。

条 「 おーっと、オレも混ぜてくれよ。 色々聞きてぇ事があってな。 その前にこれでも着てろ、見苦しいぞ、お前。 」 パーカーコートを暗堂に投げる。

以臓 「 待て待て、オレが先に行くし、先に聞く。 」

暗堂 「 おっサンキュー …って、あんたは忍者じゃねぇかー!! また会えるとは、こりゃ奇跡続きだぜ。なぁ、拙者にサインくれよー 」

ゲリーポスター 「 何者だ!? まだ館内に人がいたとはな。 …もはや、VIPだろうが何だろうが、関係無い。 邪魔をするなら、仕留めるまでだ。 」

条 「 状況的に、3対2か。どうする? ジャンケンで決めるか? 」

以臓 「 そうだな、それが賢明だろう。…オレはホジャスを出すぞ? 」

条 「 ホジャス?? ( 何だそれ? マズいな、そんな未知のクリーチャー出されたら何で勝てるか分からん… そんなもんねぇーわ!と言って、オレが知らなかったら赤っ恥だしな… ヤベッ こいつ、強敵だ!)

以臓 「 そうだホジャスだ。お前もホジャスを出して、アイコになった次が勝負だな。 オレはちなみに、ドンペールを出すぜ。 ニヤっ 」

条 「 ドンペール?? もはやルールが分からん… 」

以臓 「 行くぞ!待った無しだ!! ジャンケーン ポンッ!! 」

条 「 クッ 仕方ねぇ これで行くぜぇえええーーー!!!! コーンッ! 」

追い詰められた条が苦肉の策で出した手は、”キツネ”のポーズをしたオリジナルのモノであった。それに対し、以臓は…普通のチョキであった。

以臓 「 よっしゃー!! オレの勝ちだな。何だそれ? そんなのジャンケンに無いぞ、チョンボだ、チョンボ 」

条 「 こ、こいつ マジでどこまでが本気なのか、全く読めん… 」

 “キツネ”の手をしたまま、途方に暮れている、条。 かなり落ち込んでいるようだ。

暗堂 「 面白ぇな、アンタら。…何だ、そのジャンケン? お前ジャンケンした事ねぇのか? 大人がインチキはいかんぜ。 デヒャッ ヒャッ ヒャッ 」

条 「 テメェ! …チッ お前の相手してやろうか? 」

暗堂 「 ん? やらねぇよー 無駄な戦闘はしない主義でねぇ。こっちの目が淀んだ奴にしか興味ねぇよ。」

バーヘッド 「 ケッ とことん舐めやがって… いいだろう、気が済むまでやってやるよ。 ゲリー! お前はそっちの奴の相手してやれ。 」

ゲリーポスター 「 分かりました。 へっへへ、もうどうなっても良いからなぁ。 メチャクチャにやってやりますよ。 」

以臓  「 ここでは狭い。場所を移すぞ? ついて来い 」

< シュタタタタッ >

条 「 …クソっ オレだけ補欠要員かよ。うーむ、どっち見っかなぁ 」

場所を変えるために、オークション会場を出て行った以臓。 それを追うゲリーポスター。 オークション会場に残った暗堂は、一触即発でバーヘッドと対峙している。以臓の心理戦にまんまと翻弄され、ジャンケンに負けた条は、すっかりやる気を無くしている。 オークション会場に残り、暗堂戦を観戦するようだ。

バーヘッド 「 さてさて、お前の身体がどんなに硬かろうが、殺し合いには関係無いって事を思い知らせてやろう。 」

暗堂 「 ほほぅ 小悪党が言うじゃねぇか。 お前みたいなゲスには、“Genima”は勿体ねぇな。 オークションで売っちまえよ。フッ 」

バーヘッド 「 …様子見は不要、さっさと沈めよ。硬く重い身体は命取りだぜ。底なし沼からの勧誘_ボトムレスパーティー!! 」

“スキャナーマガジン”を親指で操作し、特殊弾丸を選択する 【 汚沼弾(ボッグ)】 暗堂では無く、床に向かって放った。< ドボゥン! > みるみるうちに、床がドロドロになり、沼と化した。 暗い方の緑と茶色と紫が入り混じったような、不気味な色の沼である。 予想外の事態に、足を取られてしまう、暗堂。 膝ぐらいまで沈んだところで、沼が足をロックしストップした。

バーヘッド 「 カーッハハハ フィジカルはバケモノでも、所詮戦闘は素人。油断しかねぇな。いきなり底なし沼に沈める事も出来るが、それではつまらん。まずは、とことん痛ぶってから、永遠の闇に沈めてやるよ。 」

暗堂 「 沼だと!? クソっ 身体が重たいせいもあって、全然抜けねぇぞ… 」

バーヘッド 「 どこまで持つかな?  牙(Fang)ー 連牙!」 < ドドドドドドドドドドスッ!! >

バラクーダの牙を模した弾丸の激しい連射が、休みなく暗堂に襲い掛かる。 < ガキッ ガキッ ガキッ ガキッ ガキッ ガキッ!! > 主に上半身に被弾して行く。

暗堂 「 ぐはっ ぐはっ ぐはっ ぐはっ ぐはっ!! …痛ぇててて 」
全弾弾き返すも、全身に痣のような打撲痕が出来ている。

普通の人間であれば、拳銃の弾を食らったら1発で致命傷に成りかねないが、暗堂には効かない。 しかし決して無傷という訳では無く、棒で突かれたようなダメージを受けているようだ。1発では致命傷にならないが、継続してダメージを負ってしまうと、命の危険に晒される事になる。この部分では人間と同様である。


( つづく )



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