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オリジナル漫画「scope」原作-50

【暗堂篇】VS武器密輸組織(紫)第3話


条 「 割と緩い感じだと思ったが お前らはどうだ? 」

舞 「 アタシだったら完全にあそこから行くかな? 」

瞬斗 「 あんな強面の警備員なんて違和感だらけだろ… 決して緩くはねぇと思うけど、強いて言うならあそこからかな? 」

以臓  「 …どこから入っても目的地の会場は一緒だろ? 作戦を練る必要性が感じられんな。 」

舞 「 じゃぁ、“せーの” で指差そうか? いくよー 」

< せーのっ >

< バンッ > 広げた見取り図の「 東側 第2ブロック 」を揃って指差す4人。何故か以臓もシレっと指を刺していたが、全く同一の場所であった。

条 「 ほぅ~ 珍しく気が合うじゃねぇか ニヤっ 」

瞬斗 「 ヘラヘラして、全くやる気が感じられねぇヤツらだったな、あのブロックの警備員は。 …たぶん、あいつら酒飲んでるぜ。 」

舞 「 大体、闇の人間に警備員なんて勤まるはず無いんだから。 そもそものプラン自体が破綻してるわね。 」

以臓 「 決まったのなら、すぐに行こう。 」

条 「 おしっ 行こうかぁ やり過ぎず、いい塩梅で悪人面しとけよ、お前ら。怪しまれても厄介だからな。 」

早速 「東側第2ブロック」へと向かう条たちご一行。 本展示会のメインである“裏”への潜入を前に各々緊張の面持ちを見せている。目的地に到着すると、軽くアイコンタクトをして、警備員へと歩みを進める。すると、必要以上にこわばった顔で警備員を睨みつける、瞬斗。 中学デビューした新米ヤンキーのような、不慣れな凄みを利かせた態度である。…完全にやり過ぎだ。

以臓 「 おぅ? あんちゃん、トイレはどこだったかのぅ? 」
< 渡した案内図の下に現金を忍ばせている。 >

警備員 「 んあ? …トイレですかい?うぃっ こちらです。 えぇと、皆さんご一緒で? トイレは男女兼用ですので、ご注意ください。 」

瞬斗のイキった顔を見て、一瞬苦笑いをしていたが、酒に酔っているためか、金を見ると怪しむ事無く、すんなりと案内をし始める警備員。事前に調べていた、“トイレの場所を聞く”というキーワードと、共に入場料を支払う、と言う“裏”への入場方法が正解だったようだ。 裏の関係者通路へと入ると、すぐ脇にある隠し扉を開ける警備員。< ギギギッ > そこには、地下へと直結しているエレベーターが存在していた。

警備員 「 ごゆっくりどうぞ。 げへへ 」

20人は乗れる巨大なエレベータにて、地下へと下って行く条たち御一行。 気のせいか地下へと進むにつれてヒヤッとした冷気も感じられるような気がした。

条 「 …おまっ やり過ぎんなって言っただろうが! イキり散らかした、ちびっこギャングみてぇな顔しやがって。 」

舞 「 あれで入れちゃうなら、誰でもイケそうよね。 ププッ 」

瞬斗 「 ギャーギャー うっせーな! オレ様の名演技と事前の調査力が物を言わせた良ケースだろが! ったく感謝しやがれってんだよ。 」

以臓 「 < パチ パチ パチ > いやいやぁ 中々良かったと思うぞ? “Z” ~ 大したもんだ。 …虫歯菌のモノマネだったんだろ? 」

瞬斗 「 …む、虫歯菌じゃねぇし! “Z” でもねぇ。。 お、お前異次元だな… 」

条 「 ガッハハハ こいつとまともにやり合ってたらキリねぇぞ。 正直どこまでが本気でどこまでが冗談だが、さっぱり分からねぇ。 」

舞 「 ププッ 虫歯菌ってぇー 闇の幼稚園のお遊戯会じゃないんだからー でも、なんか似てる気がしちゃうよね! キャハハ 」

条 「 …さぁて 遠足に来てるんじゃねぇんだ、気を引き締めやがれ。言っとくが、ここから先にいる人間は… “全て” 闇の人間だ。 」

以臓  「 なるほどな。であれば、潜入調査目的で無かったら、全て壊滅させたいところであったが。 」

条 「 無理は禁物だ、猛獣限定の動物園の檻の中に入っていると思え。…それに、研究所に辿り着く前にくたばっても本末転倒だろ? 」

以臓 「 それは、そうだな。 …さらに、黒幕が紛れている可能性もある、軽率な行動は控えるとしよう。 二度としっぽが掴めなくなるかもしれん。 」

瞬斗 「 …んだよ、急にマジメかっ 」

条 「 “M” 準備は万全か? 」

舞 「 うん、万全よ。両目に仕込んだコンタクト型のカメラで、気になったモノは全て記録してくから。同時転送も出来るし問題無いわ。 」

条 「 敵の手の内を知り、敵のふんどしで逆にこちらがパワーアップしちまう… 成功するなら、言う事ねぇな。 おっ そろそろ着くぜ。 」

< チンッ > そうこうしている内に、エレベーターが最下層階へと到着した。漂う禍々しさと、濃密な空気の重さが、強制的にドヌゥっと纏わり付いて来る。飛び交う、法外なダークマネー。拭っても拭い切れない、世界のあらゆる黒色が混ざって出来た悪幣だ。一枚の壁を跨ぐだけでこれだけ世界が変わるんだ?という程の激変空間、“裏”黄泉の市。唾をごくりと飲み込み、各自緊張感MAX状態で、会場へと潜入する。

< ギィ~ バタンッ > 大きな観音扉を開けると、そこは地上階で見た展示会場と、瓜二つの光景が広がっていた。 来場客は地上階と比べると比較的少なく、ゆったりと各ブースを見て回れるようなキャパシティー感だ。 地上の展示会との大きな違いは、現金での売買がその場で行われているという点が挙げられる。

瞬斗 「 まさに場違いだな… こんな危ねぇとこ、早く出ようぜ。 」

舞 「 マジかー!? 画に描いた治外法権ってこの事ねぇ、やりたい放題じゃん… うわぁああ  えっ あれも!? これも!? 」目を輝かせている。

条 「 …善人から巻き上げたクソ汚ぇ金で、何を平然と売買してんだ? こいつら。マジで虫唾が走るぜ。 チッ 」

以臓 「  ………………………。 」

サングラスの奥の目つきが、鋭さを増しているのが分かる。

条 「 おいっ “I”! 変な気起こすなよ。 軽率な行動は控える… って言ってるそばから戦闘モードに入るんじゃねぇよ、ったく。 」

以臓 「 …あぁ 大丈夫だ。 」

条 「 “表”同様、様子見で軽く1周するぞ。 …イイな?自然に振る舞えよ。 」

一同  「( OK )」
 
アイコンタクトを取り、コクンと首を縦に振ってうなずく。

緊張感を3枚ほど重ね着し、慎重にブースを見て回る、条一行。一般的な展示イベントとは一線を画し、性能や残酷さ・非道さ以外、楽しさは一切無い。「歴代犯罪者愛用の武器コレクション」 「暗殺専用の武具」 「世界の拷問器具」 「マッドサイエンティストの違法実験品」 「独立国家からの密輸品」…法治国家であるという事を完全置き去りにした、非日常アイテムが、包み隠さず堂々と販売されている。まるで見た目が異形でグロい、採れたて野菜のようだ。

さらに各ブースでは、展示以外に有料にて武器の“お試し体験”が出来る模様。こちらは“表”同様のVR体験かと思いきや… モルモットなどの小動物や、世の中からその存在を抹消された囚人ら、生身の生体が用いられた闇仕様の“お試し体験”であった。

< ダンダンダンッ > 有料にて拳銃のお試し体験をしている、とある闇界隈の参会者。狙いを定め、逃げ惑う囚人の背中を躊躇無く撃っている。野次馬にて群がる来場客達からは、悲鳴では無く歓喜にも似た奇声が聞こえて来る。その光景を、感情を押さえつつ胸糞悪い表情で見て回る、条一行。

黒客  「 ほぉ 中々の破壊力だ。おいっ もう少し消音タイプの物はねぇのか? あるなら30丁は買ってやるぜ。 」

売人 「 おいおいおい、この破壊力で消音だと? そりゃ無理ってもんだぜ。これが気に入らねぇんなら、あっちの暗器でも当たってくれよ。 」

黒客 「 チェッ…  分かったよ。冗談だ 10丁くれ。 」

売人 「 毎度ありっ  …ついでに弾丸も買っておくか? 何なら10発ぐらいサービスするぜ。 ニヤっ 」

黒客 「 うーむ、後々買うのも面倒だからな。分かったよ、50ダース貰っておこうか。その代わりにクスリの1つでもサービスしろよ。 」

売人 「 あ? クスリ? ウチは武器専門だからなぁ、クスリ専門の企業でも当たってくれ。おらよっ 毎度っ 」

拳銃は勿論、まるで高級ゴルフボールのように、ダース単位でガンガン売れている弾丸。ごく自然に行われている売買は、実に感覚が鈍る光景だ。ただし、このような闇専門のマーケットでも、今のところ特殊拳銃は見当たらない。それだけ希少価値の高い代物なのだろう。この異様なマーケットを周っていると、ひと際、目を覆いたくなるようなブースに辿り着いた。

“世界の拷問器具”ブース だ。厳密に言うと武器とは別物であるが、来場者の中には別角度の“闇を”持った人間も多く存在していた。犯罪にて生計を立てる闇企業の連中では無く、突飛な趣味を持った変態の富豪連中である。

下衆谷 「 ウチのメイドたちは教育が必要でねぇ おススメ品はあるのかね? でぃっひひ 取引先の“人材派遣企業”が倒産してしまったから、メイドが 辞めない程度のソフトな奴が良いんだが。あまりに厳しいと二度と来なくなるだろ? 楽しめないじゃないか。 ニタァ 」

売人 「 えぇと死なない程度にお仕置きするって感じですかい? ここのは拷問目的で、殺傷能力が高い品しかねぇんだがねぇ。」

下衆谷 「 …そうか、殺しに興味は無いのだよ。 ム、ムチとかは無いのかね? 」

売人 「 ムチですかー …イイのがありますぜ、旦那ぁ。 真意は分からねぇが、どこぞの研究機関が復活させた? 恐竜の皮を使ってる代物だ。 」

下衆谷 「 !? 恐竜とは、さすがの品揃えだなぁ。 まんざら嘘でも無さそうじゃないの。 …それで“試打”は出来るんだろ? でぃっひひ 」

売人 「 試打ですかい? もちろん可能ですぜ。結構いい値段になりますが、大丈夫です? 」

下衆谷 「 誰に物を申しとるんじゃい。金なんぞ溢れる程あるわ。より精度を上げた試打がしたいのだが、若い娘はおるんだろうな? 」

売人 「 えぇ、いますよ。付き合いのある人身売買企業から調達して来てますのでねぇ。 オラッ 来い! 」

少女 「 ………………。 」

 目は虚ろで声も涙も枯れているようだ。既に人間としての魂を取り除かれたような、人形のような状態である。

下衆谷 「 でぃっひひ えぇのぉー えぇのぉー! 痛みはまだ感じるのかいぃ? 皮膚が裂け、骨が折れる感触… たまらねぇなぁ 」

野次馬として群衆に紛れている、条たちの表情が明らかに強張っている。今にも飛び出してしまいそうな気持を押さえ、ギリギリのところで堪えている。

以臓 「 …クッ 外道がぁぁああ 許せんぞ!! 」

懐に潜ませた特殊拳銃に手を掛けている。

条 「 チッ 待て “I”! 変な気起こすなよ… クソがッ 」

今にも飛び掛かりそうな以臓を必死に静止しようとするも、自身の制御も効かなくなってきており、葛藤している。 瞬斗も舞も同様の気持ちで堪えている。< ズバチンッ!ズバチンッ! > 裏からムチを持って来る売人。 軽く振ったムチが空気を引き裂き、ピンポイントで床を破壊する。 見るからに凄まじい威力だ。

売人 「 お待たせしましたぁ、これ加減が難しいですよぉ。 すぐ逝っちゃうので、くれぐれもご注意してお楽しみくだせぇ。ギヒヒ 」

下衆谷 「 …はぁ はぁ はぁ < ゴクリっ > いくでぇ いくでぇ~ お仕置きだぁ! でぃっひひ 」

ペタっと表情無く床に座り込む少女に、満面の笑みを浮かべながら、ムチを振りかぶる 下衆谷。 興奮の絶頂を迎えた変態の表情は、この世の者とは思えないほど、不快そのもので、込み上げる吐き気が止まらない。そして今、まさにムチを振り下ろす瞬間、少女の目から一筋の涙がスーッと落ちた。この光景を見て、リミッターが外れてしまった以臓と条が、下衆谷に特殊拳銃を構えた… その次の瞬間、ズサー!っと 何者かが割って入った。

< ズバチンッ!>

 打たれて裂けた皮膚の破片と共に、飛び散る血栓。 座り込んで身動きが出来ない少女を包み込んで庇うように、ある人物が立ちはだかり、モロに背中でムチを受け止めた。どこかで見覚えのある、胡散臭い長髪の男…


ヴォルグ暗堂
だ。

下衆谷 「 …な、なんだ、貴様は!? 」

暗堂 「 おいっ 弱い者いじめは見過ごせねぇなぁ。つ、痛ててて。…そのムチ中々良い素材使ってんな! オレにくれよ。ニタァ 」

条・以蔵 「 !? 」

2人揃って、構えていた特殊拳銃をさっとしまい込み、何事も無かったかのようにとぼけている。

下衆谷 「 うっ うわぁ!! あっちに行け!近付くな! 」
< ヒュンッ! ヒュンッ! >

超至近距離で打たれるムチを、ギリギリのところでかわしている暗堂。 過去いじめられていた経験を持つ暗堂は、圧倒的な弱者を見過ごす事が出来ず、例え相手がどんな強者であっても果敢に立ち向かう、心ある人間へと成長していた。しかも、ただ無謀に立ち向かうのではなく、“力”を存分に発揮する。

暗堂 「 どんなに“力”が強力であろうとも、使いこなせねぇんなら …無力だ、ボケが 」

 懐から出したアイスピックで下衆谷の太腿を刺す、暗堂。

下衆谷 「 うぎゃぁぁぁぁあああああああああ!! 」太腿を押さえ、泣き叫ぶ 下衆谷、腰を抜かしている。

暗堂 「 どうだよ? 圧倒的弱者になった気分は。 トドメだよ! ゴラッ 」 < シュッ シュッ! >

腰を抜かしている下衆谷の股間スレスレに、手裏剣が突き刺さる。下衆谷は、太腿の痛みと恐怖で失禁し、気絶してしまった。一連の騒動を聞きつけ、さらに屈強な警備員に再度取り押さえられてしまう、暗堂。 肩を絞り上げられ、拘束されしまった暗堂は、必要以上に両手足をバタつかせて暴れている。

暗堂 「 お、おい!待てよ!! オレは客だぞー もっと武器見せてくれよー!! あれもこれも欲しいぜぇぇぇええええええ 」

警備員  「 ゴラッ、貴様ぁ! どうやって脱出しやがった! …!? んっ?お前、その髪… お化けじゃねぇのか? やっぱそうかぁ …そうかそうか、古くからの好だ、とっておきの処分を下してやるよ! あそこが被検体が欲しいって言ってたからなぁ ちょうど良かったぜ。 ギャハハハ 」

暗堂  「 !? 」

薬品を染み込ませたハンカチで暗堂の口元が塞がれると、ピタッと動きを止め気絶してしまった。担ぎ上げられ、裏へと連れて行かれる暗堂。絶体絶命だ。一部始終を見ていた条たち一行は、何もすることも出来ず、ただただ不審者=暗堂が連れていかれるのを静観しているのみであった。

条 「 …あいつ、何だったんだ?? 不気味なヤローだが、悪いヤツでは無さそうな… だが、今はどうする事も出来んな。 」

瞬斗 「 こんなところに無断で潜入するなんて、変質者には変わりねぇだろ… その後どうなるかは、あいつの運次第だね。 」

舞 「 こんなのが日常茶飯事な市場って、闇満載よねぇ… でも リスクが高ければ高い程、リターンも大きいって感じ。 ささっ 気分取り直してさ、次行きましょ。 まだまだ得られる情報は多いから。 」

以臓  「 まさか、手裏剣とはな… やるなぁ あいつ。 無事なら良いが… 」

インカムにて連絡をした刹那、気絶している暗堂を、どこからとも無く現れた怪しい組織の人間へと引き渡している、警備員。この警備員、武器売買系闇企業(紫)の構成員のようだが、なんと暗堂の幼少期の同級生であった。 転校初日から暗堂をいじめていた主犯格だ。

警備員 「 久しぶりだったなぁ、暗堂。 …だが、もう二度と会う事は無いかもな。 人体実験って、ホンモノのお化けになるんかぁ? ギャハハハ 」

闇取引にて、秘密裏に被検体の提供を求めていた謎の研究所機関。その存在も実験内容も、闇の人間でさえも一切立入る事が出来ず、大きな謎に包まれている。 瞬く間に、見た事も無い漆黒のステルス機に積み込まれ、暗堂が連れ去られてしまった。 < バシューーーン >

騒動も終息した所で、フロアにある男が姿を現した。 

武器売買系闇企業(紫)代表 : バーベットと、側近用心棒のゲリーポスターだ。


バーヘッド 「 …ったく2度も騒がせやがって、クソガキが。 まぁいい、VIPへ挨拶回りに行くぞ。 」

ゲリーポスター 「 まさか脱走していたとは…失礼しました。 引き続き警備体制を強化します。…挨拶周りですね?同行します。 」


( つづく )


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