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オリジナル漫画「scope」原作-48

【暗堂篇】VS武器密輸組織(紫)第1話

コンクリート打ちっぱなしの、とあるデザイナーズマンションの一室。 部屋の中は、整理整頓がなされているというよりは、無駄な物は一切置かないという、徹底したアイデンティティと武骨さを感じ取る事が出来る。 特筆すべき事が無いような、普通の部屋である。

… 一点の“異様さ”さえ除けば。壁面を見渡すと、ありとあらゆる世界の武器がズラーッとディスプレイされている。一言で言うと、異様でしかない。 “無駄な物”という概念は本人のエゴで、他人から見れば理解し難いものである。

これら自慢の武器を一つ一つを手に取り、丁寧に磨き上げる事が日課の、長髪の男 ヴォルグ 暗堂< ヴォルグ アンドウ >。 三度の飯より武器が好き!という、生粋の武器マニアである。 その執着ぶりは異常で、趣味や愛情を通り越して、軽く変態の領域にまで達している。



【 --- 回想 --- 】


< 数年前、暗堂 幼少期 >

親の仕事の都合で、別の小学校に転校して来た、暗堂少年。 担任の先生が紹介をしてくれるも、人見知りが激しくモジモジしている。

先生  「 おーい、静かにしろよー 今日からこのクラスに転校して来た、暗堂くんだ。 みんな仲良くしろよ! さっ 暗堂くん、簡単に自己紹介して。 」

暗堂  「 ………………  あ、暗堂、ヴォルグ暗堂です。 よ、宜しくお願いします。 」

生徒A 「 は? ヴォルグ? 何だよー 変な名前だなー!! きゃっははは 」

生徒B  「 なんかさー 髪長くて女子みてぇじゃね?  てか、目つき悪いからお化けの方が似てるか! ギャハハハ 」

暗堂 「 …………………………。 」
下を向き、唇を噛みしめている。

先生 「 こらこら~ あんまり からかうなよ! えーと、あそこが君の席だから。 ささ、授業はじめるぞー 」

先生に指示された席に座ると、隣の男子生徒がヘラヘラしながら、じーっと顔を覗き込んで来る。

生徒A 「 ほんとだ~ 何だ?その目つきは。お化けそっくりじゃん、お前。呪われるからこっち見ないでー ギャー ハッハハハハ 」

暗堂 「  ………………………。 」

転校初日から、恰好のイジメの的になってしまった、暗堂少年。加害側も子供のため、さして悪気の無い不要な純粋さが、逆に厄介である。ただ髪が長いだけで、名前が珍しいと言うだけで、人の人生は簡単に左右される。「楽しい」か、「苦痛」かの二択の選択肢しか無い時点で、地獄の審判のようなものである。暗堂へのイジメは、リアルな蛮行だけに留まらず、ネット上のあらゆるSNSにて誹謗中傷を受けるようになっていた。言葉の暴力、いわゆるネットリンチである。

暗堂に対するイジメは昼も夜も24時間止むことが無く、いずれ部屋に引きこもるようになってしまう。大好きなアクション映画に没頭する毎日。偶然手に取ったある映画を観た事がきっかけで、再度学校へ登校してみようという気持ちになった。

<  ある日  >

生徒A 「 あれぇー 珍しいじゃーん! もしかして、オレ霊感強くなったんかな? お化けが見えるようになったぞ!! きゃっははは 」

数カ月ぶりに席に座っている暗堂を発見するや否や、悪い生徒が早速いじり出す。

暗堂  「  ………………………。 」

生徒B 「 地縛霊じゃないんだからさぁー 返事でもしたらどうだよ! なぁ?…!? ヒ、ヒー! 」
肩を組み、何かを確認した生徒が怯えている。

生徒A 「 なになに? ホントに呪われちゃったの??   …!?  うわぁぁああああ 」
同様に覗き込んだ生徒の顔が、絶叫と共に青ざめる。

暗堂 「  ………………………。 」< ニタァ >
気味の悪い笑顔で、生徒を見上げる、暗堂。

机の下を見ると、鞘から抜かれた小型の刀が握られていた。 さらには、その切れ味が本物と言わんばかりに、暗堂自身の腕を斬り、血が滴り落ちている。散り散りに逃げ惑う、生徒達。 …決して暴れる事も無く落ち着いた様子で、駆けつけて来た先生に素直に取り押さえられ、連れて行かれる暗堂。

生徒達 「 (…なにあれ? 怖ぁーい…)(マジかよ、あいつ狂ってやがる…)(イヤァー… )」 < ザワ ザワ ザワ >

警察署に両親が引き取りに来る。 しばらくすると、両親と一緒に出て来た暗堂。 俯きながら歩いている暗堂だが、どことなく晴れ晴れとした表情をしている。

暗堂 「 …やっぱ強くならないと。 …もっと強く、強くなるんだ。 もう舐められる人生は終わりだ。 」

< 数年後 >

カウンセラーと対峙する毎日。 長年の通院生活を経て、心身共にリフレッシュした暗堂。 無事整備工場に就職し、毎日機械いじりに没頭しているようだ。

上司 「 おーい、暗堂ー! その辺にして今日は上がってくれー 」

暗堂 「 …うっす、これ終わったら上がります。 」
< カチャ カチャ カチャ >車の下に入り込んで作業をしている様子。

仕事を終え、缶コーヒー片手に自宅へと帰宅する暗堂。エレベーターが開き、自宅ドアを開け入って行くと…
壁一面にありとあらゆる“拳銃”が飾られていた。ほとんどレプリカのエアガンのようだが、中には本物のようなものまでが飾ってある。 ソファに座ると、飾ってある1丁を手に取り磨き出した。< キュッ キュッ キュッ >

暗堂 「 やはり、武器こそチカラだ… そして拳銃こそ最強のチカラ。もっと、もっと力が欲しいぞぉーー!! グッフフ 」

< ある日の休日/自宅にてネットサーフィンしている暗堂 >

< カタカタカタタタ… >

薄暗い部屋にて、咥えタバコでPCを作業している暗堂。 片手にはスマホも持っている。 見るからに怪しいオークションサイトにダブルスタンバイしている様子だ。


何かに憑りつかれるように、武器を探しては買い続ける、生粋の武器マニアの暗堂。いつしか公に市販されている武器では物足りず、闇のオークションサイト等にも入り浸るようになっていた。そんな中、ある闇のオークションサイトに、都市伝説として噂レベルでしか聞いた事が無い “特殊拳銃Genima”が出品されると言う情報を得て、目つきが変わる暗堂。 何が何でも競り落とすという強い気迫と、消費者金融から借りた多額の資金を用意し、準備万端である。 出品されるや否や、ガンガン上がって行く金額。

暗堂 「 キタキタキタぁーー!! 絶対に競り落としてやるぞ!! フーフー 」

 興奮状態をキープし、次々と引き上げられる金額に負けじとついて行く。

一定のピークが過ぎ、1対1の対決で互いに引く気配が無い両者だが、数分の後、変態の領域に達している暗堂が、何とか競り勝つ事に成功した。その額は闇のオークションでも異例の、破格中の破格で、一等地のマンション一棟が買える程の金額にまでに跳ね上がっていたようだ。 消費者金融からの借金では到底足りず、特殊なクレジットカードを取り出す、暗堂。 どうやら、親の仕事の関係なのか、暗堂家はとんでもない大富豪のようである。

暗堂 「 ウエッーーーーー はぁ はぁ はぁ …やった、ついに手に入れたぞぉぉおおおおお!!!!! ニタァ 」

数日後、商品の納品日になって、そわそわドキドキしている暗堂の元に、不穏なメールが届いた。“急遽変更いただいた別の住所への納品が完了した”と言う、ある種死刑宣告のような内容のメールであった。どうやら、納品手続きの際に不正アクセスをしてきたハッカーに、Genimaを横取りされたようであった。

暗堂  「  ………………………。 」

< ビターンッ ブシュー >

無言で両鼻の穴から鼻血を出し、後方へと倒れる 暗堂。 ショックでピクリとも動かない。サイバー警察へ通報しようにも、対象がゴリゴリの違法サイトのため、身バレを気にして連絡する訳にもいかず、打つ手が無い。倒れたまま、死神フェイスで、ただただ鼻血と涙を流すしか無かった。

謎の人影 「 …こんなにうまく行くかね?Genimaなんて滅多にお目に掛かれない代物、悪党が使うぐらいなら、こっちで使わせてもらうぜ!ガッハハ 」

PC画面に映った特殊拳銃は… なんとヤマアラシ型拳銃であった。



< 場面転換して、条自宅 >

殺人代行企業(藍)との激闘から数週間が経ち、自宅屋上にてトレーニング中の条。テーブルには飲みかけのコーヒーカップが3つ置かれており、どうやら来客が訪れている様子。タオルで汗を拭きながら、条がリビングへと降りて来た。

条 「 …うむ、かなり戻って来たようだな。 ボチボチ準備でもすっか? クソガキくん 」 
左腕を見つめながら回復を喜んでいる。

リビングには、瞬斗と古太郎が訪れていた。 高齢のくせに ZERUに立ち向かう等、かなりの無茶をしたため、まだ回復していない古太郎は車椅子に乗っていた。それに比べ、順調に回復して元気を取り戻しつつある瞬斗が、古太郎を優しくサポートしている。

瞬斗 「 …タフがアホの皮被って動いてんの? ったく、病み上がりの身体でバリバリ筋トレしてんじゃねぇよ! 」

古太郎  「 カッハハ 相変わらずじゃのー そういう所も豹尾にそっくりじゃな。 」

条 「 そっくり? そうか? 別に普通だと思うが。 」
左手に力を込め、グーパーグーパーしている。

古太郎 「 …ところで、どうやって闇市に潜入するつもりじゃ? “表”と“裏”があるようじゃが、文字通り“裏”は凶悪人だらけじゃぞ。 」

瞬斗 「 そんなメジャーなイベント、“裏”だろうが何だろうが、潜入なんて訳ないよ。 チョロ過ぎて、逆に罠なんじゃね?って疑いたくなるレベル。 」

条 「 “裏”に関しては、“表”公認なんだろ?どうせ。 だが、こんなところに黒幕なんて出て来る訳がねぇ。単純に情報収集でイイんじゃねぇか? 」

古太郎 「 いずれにせよ、法が通用しない連中じゃ 当然裏では巨額のダークマネーも動く。 …くれぐれも用心する事じゃな。 」

瞬斗 「 表向きは民間の展示イベントだけど、裏の主催は、武器売買系闇企業(紫)だ。 さて、儲けた金は、どこに流れるんだかねー 」

条 「 武器売買系闇企業(紫)かぁ…こりゃ楽しめそうだぜ。ニヤっ …の前に、ちょっと寄る所がある、お前らはもう帰れっ 」< しっしっ >

瞬斗 「 てめっ 入来家をゴキブリ一家みてぇに扱うな!言われなくても帰るわ! こんな汚ぇ家、長居出来ねぇし! 」

古太郎 「 カッハハ 仲が良いコンビじゃのぉ、お前らは。 」

条 「 どこがだ! 格ってもんが分からねぇのか? とっととくたばれ、ジジイ!! 」

瞬斗 「 ゴキブリみてぇに言われてヘラヘラしてんじゃねぇよ! まさか、図星なのか? ジジイ!! 」

古太郎 「 …このクソガキ共がぁ 調子に乗りおって!! 高齢者の底力、舐めんなよ!! うりゃ! 」

< 車椅子を振りかぶっている >

瞬斗 「 危なっ 落ち着けジィいちゃん! …ウギャ 」

< ガシャーン >


闇市への潜入に向け、準備を始めた条たち。それと同タイミングで動き出す2つの影が。また、インターネットの深部に潜む闇の人間たちも、数年ぶりに開催される、今世紀最大級の闇市=“黄泉の市”に興奮している模様。 多種多様な欲望が、早くも渦巻いている。


< 場面転換して、ダークサイド >

豪華なリビングにてくつろぐ、ほくほく顔の悪人面、武器売買系闇企業(紫)代表 : バーベット である。今回の件に関して、側近と会話をしている。

バーヘッド 「 どんな塩梅だ? 集客状況は。聞くまでもねぇか、ダッハハハー!! いよいよ、ウチが資金力で闇界隈を牛耳れる時代が訪れるぜ。 」

ゲリーポスター 「 そうですねぇ 小国だったら何か国か買い取れるぐらいの金が集まりそうですからねぇ、まんざらでも無いんじゃないですか? キッヒッヒ 」

バーヘッド 「 いっその事、上納金シカトしてやろうか? あいつらガッサリ持って行きやがるからなぁ クソ野郎が。 まぁ 良いぜ、ダッハハハー!! 」

ゲリーポスター 「 …あいつらの話は止めましょうよ、胸糞悪いですわ。悪人からガッツリ吸い上げる極悪人… 関わりたく無いっすね。 」

バーヘッド 「 あぁ そうだな。オレらが相手に出来るようなモンでもねぇしな。 …さぁ、引き続き準備進めてくれ、ガツっと稼ぐぞ! ダッハハハー!! 」

ゲリーポスター 「 承知しました、キッヒッヒ 」



< 場面転換して、暗堂自宅 >

< カタカタカタタタ… >

薄暗い部屋にて5本の咥えタバコでPC作業に没頭している暗堂。ある日、裏サイトにて、海外から密輸された武器の詳細をネットで調べている内に、これら裏取引をメインで仕切っている存在、武器売買系闇企業(紫)へと辿り着いてしまう。あまりにも武器が好きなため、闇企業であるにも関わらず、転職を希望しようか迷うが、結局人見知りのため断念する。そんな悶々とした日々を繰り返していると、闇のビッグニュースが飛び込んで来る。数か月後に武器売買系闇企業(紫)主催の、大規模な闇市が開催されるという情報であった。 その情報だけで、今にも昇天しそうな勢いだ。

来るXdayに向け、デスクに置かれたカレンダーに、日を追うごとにペケマークが刻まれている。 そのままベロンっと外側にめくれるんじゃねぇか?って程大きく見開いた目は、雷神の如くギンギンに血走っており、全身から湯気が出る程興奮しているようだ。

暗堂  「 デヒャッ ヒャッ ヒャッ ヒャッ  …今度は横取りはさせねぇぞ。 」

タバコの火を消すと、爪を噛みながらあふれ出る笑みを必死で抑えている。

父親 「 うぉーい、ヴォル~ ちいと手伝ってくれよー 」
地下室のような、下のフロアから微かに声が聞こえる。

暗堂 「 あぁ? またガラクタいじってんのか? ちょっと待ってくれ、今行くよ。 」< カツ カツ カツ カツ >

父親 「 おう、悪ぃな。 こいつが生意気に、また熱暴走し掛けてやがってよー ちょっと手が離せねぇから頼むわ。 」

暗堂 「 チッ またかよ。 公務員ってこんな事もするもんなのか? ったく、こっから先は家族でも行かせてくれねぇんだよなぁ… 」

外観はオシャレなデザイナーズマンションのような建物だが、どうやら一棟丸々が暗堂の家らしい。 さらに同規模の巨大な地下室も存在するとかしないとか… v見た目が暗堂そっくりな父親は、延々地下への引きこもり生活を続けている。 公務員と豪語する事以外、家族でさえも彼の素性を何一つ知る事は無い。


< 黄泉の市/開催日 >

各々“ならでは”の準備を整え、さらに数日が経過した。 開催日が近づくに連れ、世界中の曲者達が ほくそ笑む怪音が、徐々にボルテージを上げて行く。

【 ×月 ×日 】  いよいよ、今世紀最大級の闇の祭典=“黄泉の市”が、爆音と共にアンベールされる。
南国の海上に埋め立てられた人工島。 ドーム球場が20個は入る、巨大な展示施設が「オレを観ろ!」と言わんばかりに太々しく建っている。内陸から架けられた芸術的な橋は、“表”“裏”相まみえた来場者で埋め尽くされている。 館内の要所要所には強面の警備員が配備され、万全のセキュリティ体制に見える反面、マフィアのアジトに招待されたような物々しさも感じられる。

各所で複雑に交差される視線を1歩1本掻い潜るように馴染みの人物が集合する。橋の終点あたりにて、待ち合わせをしている風の小柄な男が立っている。 明らかに着慣れていないようなスーツ姿にサングラスを掛け、完全にイキっている。


( つづく )



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