見出し画像

オリジナル漫画「scope」原作-56

【暗堂篇】VS武器密輸組織(紫)第9話


暗堂  「 …ゲスは所詮ゲス。最後まで見苦しいヤローだ。 おいっ ちょっと避難しとけ、巻き添え食らうぞ。 」パワーをチャージしているようだ。

条 「 おっと、こりゃヤバそうだなぁ …ご忠告ありがとよっと 」

< ダダダダダッ > 観覧席を飛び越え、中央舞台下へと逃げ込む、条。

暗堂 「 やった事ねぇから、加減出来ねぇぞ。 くらえっ! 降り注ぐ光閃_ライトニング エクスターミネート!! 」

上空に飛び上がった暗堂の全身が激しく発光している。 次の瞬間、逃げるバーヘッドに向けて必殺弾が撃ち込まれた。体内に彗星弾をセットし、胸(chest)からダイナミックに発射された弾丸は、激しい閃光と、隕石が落下する際のインパクトを併せ持つ、大砲の破壊力を優に超える威力を発揮した。 オークション会場全体が吹き飛ぶ勢いである。

< チュドォゴゴゴゴォォォオオオオオオン!!! >

バラバラバラっ 破壊された会場の瓦礫と粉塵が舞っている。直撃は免れたようだが、広範囲に渡る衝撃であったため、半裸状態になったバーヘッドは、倒れたままピクリとも動かない。度重なる絶望の状況に精魂尽き果て、白目を剥いて完全に気絶しているようだ。

< ガタ ガタ ガタ ガタ!!> 中央舞台下の倉庫室も爆撃のインパクトでガタガタと揺れている。

舞 「 …えっえっ なに? 戦争でも始まっちゃたー?? 」

瞬斗 「 おいおいおい! 勘弁しろよー! お前が入って来た途端の衝撃じゃねぇか… 」

条 「 あのままあそこにいたら、流石にちょっとヤバかっただろうなぁ。避難して正解だぜ。 」


< 場面転換して、以臓サイド/暗堂が必殺弾を放つ少し前に遡る >

両手に持った“特拳”を懐にしまいながら、何事も無かったかのように、すまし顔でスタスタと歩いている以臓。 

< ブォォオオオン!! > 

その背景に、身体を反って大きく吹き飛ぶゲリーポスターの姿が。拳銃で撃たれた痕跡とはまた別の、凄まじい衝撃が加わったような傷跡が胸に刻まれている。

< ドサッ > 

まるで人形のように力無く地面に叩きつけられるゲリーポスター。吐血しノックアウト状態である。


以臓 「 水丸・森丸以外の実戦で使うのは初めてであったが、まだまだ改良の余地がありそうだな。 “M”に相談すべきか… 」

< チュドォゴゴゴゴォォォオオオオオオン!!! >

爆音と共に、オークション会場が吹き飛ぶ様子が目に入る。

以臓 「 ぬお? 随分と派手にやっているようだな。…あいつら大丈夫なのか?? 」
< シュタタタタッ > オークション会場へと急ぐ。

オークション会場前に到着した、以臓。先程の衝撃で、会場の大半が崩壊している。入口付近をまたいで中に入ると、条たち一行が集まっていた。瓦礫の上に座っている、条、瞬斗。1人乗り用トカゲ型戦車 “エリマキトカタンッ” に跨ったままの舞。そして少し離れた所で背を向けて立っている暗堂。

条 「 よう、以臓。 早かったな? 見た感じ、苦戦のくの字もねぇようだが。 」

以臓 「 あぁ、里に籠って延々と修行していたからな。実戦の感触が多少掴めたが、 そもそも、相手が弱かったのではないか? 」

瞬斗 「 いやっ あいつ闇の用心棒だぜ。そんなヤワな相手じゃねぇと思うけど。 」

舞 「 何にせよ、みんな無事で良かったねー。 ねー? そこの君もさー 」

暗堂 「  ………………………。 」

以臓 「 おっ お前も無事だったようだな? これはお前がやったのか? やるなー 」

暗堂 「 え? ちょ、ちょっと待ってくれよぅーーー!! 忍者に褒められちまったよぅーーー!! ところでサインはいつくれるんだ? 」

目を輝かせている。

条 「 切り替えが異常に速ぇな… お前、少しは話す気になったのか? 憧れの忍者は、オレたちの仲間だぜ。 ニヤっ 」

暗堂 「 …察するに、どう見てもお前らは悪人には見えねぇな。 なのに、何でこんな所にいるんだ?? まずはそちら側の説明をしてもらおうか? 」

条 「 中々用心深いじゃねぇか。とにかく変わったヤローだよ。おいっ 虫歯菌! オレらの経緯を、掻い摘んでこいつに話してやれ。 」

瞬斗 「 だーかーらぁー! こんなにイケメンの虫歯菌がどこにいるってんだよ!! うっざ!お前、うっざ! 」

拒否した瞬斗の代わりに、条がこれまでの経緯、ここにいる面子の境遇を掻い摘んで共有した。今まで警戒していた暗堂の表情が少し和らぐ。

条 「 …という訳だ。 オレらは、“闇への復讐”という名の共通の目的にて、自然と集まった間柄だよ。 少なくとも敵じゃねぇ。 」

舞 「 素直に仲間って言えばいいじゃんねぇー 条って、まだ一匹狼気取ってんの? ププッ 」

以臓 「 単純に友達がいないのでは無いのか? 」

瞬斗 「 ギャハハハハっ! そうに違いねぇ!! 良く言った、以臓!! 」

条 「 ノヤロー! お前らみてぇな足手まといがいると、調子が狂うだけだよ! ったく。 」

暗堂 「 シリアスな悩み抱えてるわりに、お気楽なもんだなぁ。 仲がよろしいことで。デヒャッ ヒャッ ヒャッ  …オレはお前らほどの理由は無いが…」

多少心を許したのか、暗堂が重い口を開いた。 幼少期凄惨なイジメに遭っていた事。復讐のために“力”を欲した事。 “力”とは武器であるという事。その“力”を求めるがあまりに道をされ、今回の黄泉の市に潜入した事など、全てを話した。

条 「 ほぅ~ ただの陰険な変質者じゃねぇか。 キモっ 」

暗堂 「 !? ( 陰険な変質者だと… ) 」

瞬斗  「 …お前ってヤツは、ストレートしか打てねぇ、脳筋ボクサーか! もっとあるだろ? 目つきの悪い変態野郎とか… 」

暗堂  「 !? ( 目つきの悪い変態野郎だと… ) 」

舞 「 ハハハ、全然フォローになって無いじゃーん。 ププッ 」

暗堂 「 おいっ お前らには、気遣いって概念がねぇのかよ! 中々言ってくれるじゃねぇか。この場で吹っ飛ばしてやろうか? ニヤっ 」

以臓 「 やめとけ、やめとけー 許してくれ、こいつらなりのコミュニケーションなんだ。 …はっ お前、お化けみたいな顔してるな? 」

暗堂 「 !? ( さらっと、小学校以来のバケモノ扱いしやがった… ) んまぁ、あんたに何言われようが光栄だぜ! 」

舞 「 ところでさぁ~ 暗堂くんで良いのかな? ヴォルグくん? この身体どうなってんのよー 完全にタブーの領域よ、こんな手術しちゃうのって。 」

暗堂  「 …あ、暗堂っていいよ。 ぶっちゃけ、オレにも良く分からん。あそこで捕まって、麻酔された状態で連れて行かれ、目が覚めたら手術され… 次に目覚めたのが、ロボと人形だらけの無人島だった。恐らく散乱してたロボもどきは、違法手術の被害者って所だろう。」

瞬斗 「 さらっと言ってるけど、色々と濃すぎるぞ、お前。 」

暗堂 「 目覚めてすぐは理解が追い付かなかったが、改めて自分自身が武器化した事に、正直興奮が鳴り止まなかったぜ。 ヒッヒヒ 」

条 「 良くもまぁ、そんな状況下で理解出来たものだな。 」

暗堂 「 違法実験の存在は薄々知っていたからな。言っても都市伝説レベルで実際にあるとは思って無かったし、それがまさか自分に施されるなんて夢にも思ってなかったぜ… 宝くじに当たったレベルの強運の持ち主としか言いようがねぇ。 」

瞬斗  「 身体を機械に改造されて、そんなに嬉しそうなのは、たぶんお前だけだろうな… 」

以臓 「 簡潔に言うと、ロボ化したという事なのだな? 」

舞 「 間違っては無いけど、ロボ化したって訳じゃないのよね。恐らくアンドロイドとサイボーグの間の、サイボロイド化って感じかな? トランスヒューマニズムの考え方の変化球ってヤツ? 」
< ガンガンッ >暗堂の胸あたりをノックするように確かめている。

暗堂 「 随分と詳しいな。 恐らく、そんなところだろう。 もっと言うと、武器に特化した超人類化。 ようは、オレ自身が特殊拳銃になったって事だ。」

条 「 なるほど。因果応報、手術受けたのがお前で良かったのかもな。何で手術が成功したのかは知らんが、世の中良く出来てるぜ… 」

以臓  「 それで、その研究所については、何か分かった事はあるのか? 」

暗堂  「 さっきも言ったのだが、麻酔で意識を失ってたので、ほとんど覚えてねぇんだ。 う~ん、手術直前、確かマイク越しで、人類のアップデートがどうたら、希望の手術が何たら…とか言ってたような? 思い出せん… 」

条 「 どうやら、研究所の独断で違法手術を行っているというよりは、さらにその上に、指示を出してる黒幕が存在してそうだな。 」

以臓  「 真相はどうあれ、まずは研究所に辿り着く事に集中しよう。 …そこに真の復讐相手がいるはずだからな。 」

条 「 そうだな、仮にその上があったとして、研究所を突き止めれば、必然的にたどり着くだろう。 」

瞬斗 「 まずは、ずらかろうぜ。ここまで派手にやっちまったんだ。もうなってる可能性が高いが… 標的にされるぞ! 」

舞 「 そうね、暗堂くんのお陰で収穫も大きかったし! 帰ってみっちり研究しなきゃねぇー 」

条 「 …お前は、今後どうするつもりだ? 弱い者を救う、正義の味方名乗るなら、闇の壊滅を手伝わせてやってもいいぜ。 ニヤっ 」

暗堂  「 そうだなぁ… この“力”と使う相手は闇しかいねぇだろうからな。 それにお前らについて行けば、まだ見ぬ新しい“力”を色々と見られそうだし。違法手術したヤツに、正式にお礼もしねえとなぁ。…まずはサインくれよぅーー!! 」

以臓  「 しつこいヤツだな、仕方ない。後ろを向け。 」

< キュッ キューッ > 舞が持っていた油性マジックで、直接背中に「イゾー」と書いた。 暗堂以外はドン引きしている。

暗堂 「 究極の“力”に、ホンモノの忍者のサイン。…ヤベッ 今回はこれ以上の無い収穫だったぜぇー!! これで今までの負債は全てチャラだ!!  デヒャッ ヒャッ ヒャッ ヒャッ ヒャッーーー!!!! 」

< カチッ > かかとに付いている蓋が開き、ジェットが噴射する。 < シュゴゴゴゴゴォオオ!!! > 勢い良く空へと飛び上がると、今度は両脇の蓋が開き、激しくなびく腋毛と共に、さらなるジェットが加速される。 瞬く間に遥か彼方へと飛んで行ってしまった。

条 「 あっ テンション上がって行っちまった… なんだったんだ? あのアホ。もう二度と会えねぇんじゃねーのか? 別にいいけど。 」

瞬斗 「 フッ あいつの身体に直接”アクセス”できるから、問題無いねぇ。 …今後は、存分に楯になってもらわないと。 」

舞 「 それぞれ、一旦おうちに帰るのかな? 途中まででも、送ってくよ! 」

以臓 「 お前の家は研究施設が併設しているのか? 少しだけ立寄らせて貰えると助かる。この「風神」「雷神」についてなのだが… 」

舞 「 そうね、研究施設みたいなもんよ。 …って、その“特拳”スゴッ!! お兄ちゃんもいるし、せっかくだから会っていったら? 」

以臓 「 ありがたい、そうさせてもらおう。 」

瞬斗 「 あー!お前だけズルいぞ!以臓!!オレも行く… と言いたいところだが、ジィちゃんあまり1人にしておけないし、しゃあねぇな。 」

条 「 オレも、趙のおっさんのところにちょっと寄ってから、一旦自宅に戻る事にするぜ。 」


リスクと引き換えに、たくさんの収穫を得た条たち一行。 また暗堂という名の兵器も仲間に引き入れ、来る研究所との一戦に向け順調に準備を整える。

ダイアナ 「 いつまで同じ悪夢にうなされてるの?条。 …本当の“悪夢”を見るのはこれからよ。 ニタァ 」


第1部 暗堂篇 -完-


( つづく )



この記事が参加している募集

私の作品紹介