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75歳以上のばあちゃんが働く会社

「ばあちゃんたちが働ける会社を作りたい!」
少子高齢化が進行する福岡県うきは市で、その想いから立ち上がった人がいる。

うきはの宝株式会社の代表取締役の大熊充さんは、うきは市の全人口29,000人の1割以上に及ぶ、約3,500人の方々と実際に会い、対話を重ね続けました。

すると、「まだ働きたい」「年金プラスあと月2~3万あれば生活助かるのに・・・」そのような声を多く聞き、そしてそんなばあちゃんたち、特に75歳以上の人が働ける場所が全くないという現状を知ることに。

身体が元気なばあちゃんが、年金だけでは生活が苦しい現状を解決するため、「75歳以上のばあちゃんたちが働ける場を作りたい。」その想いを胸に、うきはの宝をスタートさせました。

なぜ、この事業をやるのか。

大熊さんは、20代の頃に大きなバイク事故を起こして約4年間の入院を余儀なくされました。長い入院生活で精神を壊し、無気力となり笑顔を完全に失ってしまいます。

入院中は、夜になると認知症のばあちゃんたちと一緒にナースステーションに並ばされました。そこで、認知症のばあちゃんたちが話し掛けてきたそうです。

「あんた名前はなんて言うとね?」
「どっから来たとね?」と、そして次の日も
「あんた名前はなんて言うとね?」
「どっから来たとね?」と。

毎日毎日、同じ質問をしてくるので、病んでた大熊さんもたまらず笑いが出てしまいます。なぜだか分からないけど、おかしくて、爆笑したそうです。笑顔を失ったはずの彼に、笑顔が戻った瞬間でした。

この経験から、「ばあちゃんたちに何か恩返しがしたい。今度は僕がばあちゃんたちを笑顔にする番だ!」「頼られる人間になろう!」
と思うようになります。

彼がこの事業を遂行しようとする圧倒的な理由は、自身がばあちゃんたちに頼られることに、生きがいとやりがいを感じているからだそうです。

その後、退院した大熊さんは地元に戻りました。

故郷である、福岡県うきは市は自然豊かな町ですが、車がないと生活できない場所です。

そこで、ばあちゃんたち高齢者の実態調査と同時に困りごとや、買い物弱者
の問題も解決しようと思い、高齢者の無料送迎を開始します。

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田舎で暮らす高齢者の現状

「多くの方々と対話をすることでわかったことは、身体が元気な年寄りが孤立し、年金だけの受給では生活が困窮していっているということ。また、買い物すらいけない現実を目の当たりにしてきました。」

年金にプラスして月に2~3万円あったら生活が楽になる、買い物にも行けるという声を多く耳にしたそうです。

そして、うきは市内の3,500人の人との対話と、現在75歳以上の300人と対面にて調査を実施。

「身体が元気なら、働きたいですか?」との質問に対して、6人に1人が働きたい、「働かざるを得ない」との回答。

「これからは、ばあちゃんたちを、保護するのではなく「機会を」、保護よりも「協働」で、一緒に協力しながら働こうと決断します。

要望のあった、月2~3万円の収入を作り、「収入」と「生きがい」の、この二つを実現させるため、動き出しました。

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実際に働くばあちゃんたちの声

ばあちゃんたちが働く、ばあちゃん食堂のオープンを2020年4月に控え、会社設立セレモニーが先日行われ、ばあちゃんたちの手料理も実際に振る舞われました。

その中で、食堂オープンに向けて働かれている方のお話を聞くことができました。

「私たちは本当に田舎のおばあちゃんたちばかりですけど、生まれた時から、この田舎での生活が一番気に入っています。結婚も地元の方とご縁をいただき、子供が2人おります。でも子供とは一緒に住んでおらず、自営の仕事が忙しいため、なかなか会うことができません。皆さんはまだまだ若い。ご自身のお父さん、お母さんを大事にしていってください。お金ではなく、言葉。「お父さん、お母さん、ありがとう」と言ってほしい。他の人と会う時も一番に挨拶をしてください。それが幸せへのいちばんの近道です。」

「私は、昔から料理が得意で、生きがいです。田舎のだご汁(九州の郷土料理)なども用意しています。この味は田舎でないと作れません。それを若い人たちに食べてもらって、喜んでもらいたい。田舎の料理を食べてもらって、その味を感じてもらって、ご主人や奥様に作ってあげてください。この食堂を応援してくださいね」

もう一人のおばあさん。

「大熊さんから、ごげなつ(こんなこと)があるということで、関わりました。今は生きがいを感じています。ルンルンです。一生懸命頑張っていきたいと思っています。私は隣町から来ています。今日は自分なりに、春雨と酢物。それから大根の漬物を作ってきました。お口に合わないかもしれませんが、どうぞ召し上がってください。」

今現在、うきはの宝株式会社では、このばあちゃん食堂オープンの準備以外に、うきは市内の道の駅に、ばあちゃんたちの作った「おむすび」「漬物」「お惣菜」を卸売りしていて、ばあちゃんたちの商品が華やかに並んでいます。

またケータリングやおむすびの注文販売、今後はばあちゃんたちの作った商品のオンラインショップを作り、遠方の方でも購入することが可能になります。

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これからの目指す高齢者像

身体が元気なうちは、適度に「働く」ことで生きがいと幸せを感じる。
いくつになっても働くことが出来て収入を得ることが出来る。

・生きがい
・収入を増やす

この二つが目指す高齢者像に重要であり、会社の最大の目的だと大熊さんは強く仰っています。

ばあちゃんたち高齢者が生きがいを持って地域や社会に関わることで、他者から必要とされることで健康寿命が延びる。

働くことで職場の仲間やお客さんとコミュニケーションを取ることで孤立をしない。働くことが楽しい。

そんなばあちゃん、高齢者像を思い描いているそうです。そして実際に会社の中では、生きがいを持って働くばあちゃんたちが沢山いるそうです。

ばあちゃんたちが経済活動をすることで、若者と共に協力して働き、サポート役の若者の雇用を生むことも出来る。

そして次の世代のばあちゃんジュニア(大熊さんの会社では、75 歳以下のばあちゃんたちを、ばあちゃんジュニアと呼ぶ。
ジャニーズ事務所のような。。。)を育ててバトンタッチ、次世代に繋げる事業を目指しています。

まさにピンピンコロリンへの道。

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