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2020年、肉汁の海にて


本を借りた。
2020年の年の瀬、地元への帰省を諦めた友人や先輩とで年越しをエンジョイするべく集った。すでに集合していた3人と合流して、まずはさわやかのハンバーグを納めに。片道1時間かけて隣県への小旅行だ。

席に着き注文を終え、ぐたぐた話しながら肉の塊を待っている間に、向かいの席に座る同級生のマジマが取り出したのが、岩手の歌人・くどうれいんさんの『わたしを空腹にしないほうがいい』。

おもむろに鞄を漁り、貸す、と言われて渡された。
ちょっとこれ、ずっと読みたくて購入ページを何度も開いてはその度に送料が高くて買うか迷っていた本。読んでいいのか。舞い上がるくらい嬉しい。私はくどうれいんさんがすきだ。

いやでも、それにしたって、本を渡すなんて来る途中だって、これから家に着いてからだってできたよね。このタイトルの本を、敢えてさわやかのげんこつハンバーグを待ちながら渡すのか、君は。
まるではやくハンバーグを食べたくて仕方のない私の気持ちを見透かされているようで、がは、と笑った。
なるほど、このタイミングで渡そうと思うほど良い本なんだな。あー、はやく読みたいな。

本を読もう。うまい肉を食おう。
日々は、なにもしなくても誰も平等にすぎていってしまう。毎日じゃなくていいけど、自分のために好きなものを摂取できるような、自分のための生活をしよう。
これから迎える新年は、そんな日々を積み重ねていこう。

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