学食へ行こう 2
「はー、なるほど……。……?」
思わず伊吹先輩の言説に一瞬、納得しそうになったが、思い直した。
いや、どういうことだろう?
生徒会長であることと、学食に行くことにいったいどんな関連があるのだろう。
軽く頭を捻ってみるが全く分からない。
目の前の伊吹先輩の顔を見る。
目が合う。
ふわり、と微笑まれる。
可愛い。
……いや、違う。そうではない。
頭を振って伊吹先輩の美貌に囚われそうになる思考を振り切る。
「いや、どういうことですか?」
なんとか口に出した疑問も笑顔に絆される、ということは無いらしく、伊吹先輩はまたピンと人差し指を立てた。
「いいですか、周くん。生徒会長というのは校内の様々なことを自治する役職のトップです」
「はい」
「トップに立つということはそれ相応の責任を負うことになります」
「はい」
「そして、校内を効率的に自治するためには校内の様々な情報を集める必要があり、生徒会長はつまりその責任を負っているわけです」
「はい……。ん?」
「なので、食堂の視察も必要というわけです。だから、私とも学食へ行きましょう!」
「いや……、えー……」
なんだか理論が飛躍してや居ないだろうか。
説明を聞いてみても、正直よくわからなかった。
俺としては、美人で憧れの先輩と一緒に食事ができるのだから断る理由など無いのだけれど、なんだか素直に「うん」とは言いづらい。
助けを求めるように、ダメ元で部室の主の方を見てみた。
部長と目が合うと一瞬無視されそうになったが、珍しく思い直したのかため息を吐いて、それから口を開いた。
「湊」
「なんですか? 水仙ちゃん」
「お前な、誘うんならもっと普通に誘えよ」
流石は部長。
随分ストレートな言葉に伊吹先輩の反応が気になるが、当の先輩は部長を見たまま不思議そうにしていた。
「……普通に、誘ってませんか?」
「……」
「……」
「……。周」
「え? はい」
数秒の沈黙を挟んで突然名前を呼ばれたので思わず背筋を正した。
「湊お嬢様はお嬢様だから普段庶民が使う学食なんて行かねーんだ」
「まぁ、はい」
「ちょ、ちょっと、水仙ちゃん⁉︎ 周くんも素直に同意しないでください!」
同意するな、と言われても伊吹先輩が昼休み、毎回(箱も中身も)豪華なお弁当を食べている姿を見ているので、学食に行かないということは、少なくともこの場では周知の事実なので、同意しないのもちょっと難しい。
慌てて訂正しようとする伊吹先輩を無視して部長は話を続けた。
「だから、まあ、学食程度に行くのにも何かしら理由がいるんだな。対外的にも、伊吹自身にとってもな」
「なるほど」
「うー……」
図星なのか、伊吹先輩は可愛らしい唸り声のようなものを出して、それ以上は何も言わなかった。
「要するに、そこの面倒臭い女の目的は、……まぁ視察っつーのも0じゃないだろうが、ただただ仲の良い奴と自分が行ったことない所で食事したい、というだけだ」
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