学食へ行こう 7
「はー、なるほど。大変ですねぇ……」
二人が学校を休んだ理由を聞いて出てきた感想は、そんな他人事な感想だった。
いや、そもそも事実として実際他人事なのだから仕方がない。
散々事件に巻き込まれているので、自分でも忘れそうになるが俺は本当に普通の男子高校生なのだ。
他人よりも顔が怖いかもしれないけれど、それだけだ。
たまたま、奇妙な巡り合わせによって目の前の『特別な』先輩二人と知り合い、こうして仲良くしてもらっているがそれはたまたま、偶然なのだ。
だから、俺は今こうして彼女たちと一緒に食事できるという奇跡のような幸せを噛み締めるべきなのだ。
「なに、他人事面してんだ」
「いやぁ、実際他人事じゃないすか」
「お前なぁ……」
「周くん。周くんの話題も出てましたよ」
「へー、そうなんですね……って、え? ぐっ!?」
思いがけず話がこちらに飛んできたものだから、啜ったラーメンが気管に入りかける。
息が詰まり、大きく咳き込む。
「わ、わ! しゅ、周くん!? 大丈夫ですか!?」
「だ、大丈……ゴホッ!? ゲフッ!!」
「とりあえずお水、飲んでください!!」
伊吹先輩が水を差し出してくれる。
ありがたく受け取り、飲んで、呼吸を整える。
しばらく咳は出て来るが、なんとか落ち着いてくる。
落ち着いてきたところで、「これ、間接キスでは?」ではなんていう考えが過ぎり始める。
このまま考え続けるとなんだか邪な考えが浮かびそうなのでなんとか理性を働かせ、努めて冷静に話題を替える。
「ど、どういうことですか!? お、俺の話って!!」
「あー、うるさいうるさい。声がでけぇ」
心底面倒臭そうな顔をする部長。
「すいません……」と謝って、話を戻す。
「でも、どういうことなんですか?」
「どうもこうもねぇよ。今回の会合の議題のほとんどは『道具屋』の話題だったんだよ」
「直近で一番巻き込まれているのが周くんなので、どうしても話題になってしまうんです」
「な、なるほど……」
不本意ではあるが納得の理由だった。
一般人のくせに巻き込まれている奴が居れば気になるのは当然だろう。
それも複数回巻き込まれていればなおさらだ。
器に残っていた最後のラーメンを、今度は一応慎重に啜る。
「つうか、私が今回会合に参加したのも『道具屋』絡みだったからだしな」
「あの人、あの事件以降動きが活発化していますから、こちらとしても警戒しているんです。周くんも気を付けてくださいね」
「はい……」
返事はしておくが、神出鬼没の相手をいったいどう警戒すればいいのか、というのは何も思い付かない。
実際に『道具屋』と出会った数回も彼の方からいきなり表れているのでこちらとしては避けようがない。
出来る自衛といえば、目の前の二人、あちら側でも最上位の強さらしい月瀬水仙と伊吹湊の頼もしい先輩方に頼ることぐらいだろうか。
俺は最後のチャーハンをかき込んで、ぼんやりと考えた。
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