#100 百鬼堂農園(35) 泥濘と老大人の知恵
米大統領選が終わり、食糧自給率を上げていかねば、というぼんやりした思いはなんとなく強まっている。来季はイモ類をしっかり育てていこうと、ひそかに決意した。
朝晩は寒さを感じるようになった。タマネギはなんとか根付いたように見える。これから大きく育ってくれるとうれしい。試供品の種によるコマツナはほぼ全滅。ダイコンの葉も盛大に食われて、いくつかはそれなりに育ってきたものの、きちんと防虫に手間を惜しんできた周囲のみなさんのに比べると、ひどく見劣りする。まあ比べても仕方がないことだ。成長を温かく見守りたい。ハクサイはぶわっと芽を吹いて、間引きしなければならない。あんな大きな球状になるとはとても思えないが、楽しみにしよう。
写真をみていただきたい。それほどの豪雨でなくても、降るとこんな感じである。なんでうちの畑だけ?と思うが、これが現実なのである。周囲の畑はこんなことはなく、「百鬼堂さんのところだけ水はけが悪いね」とみなさんに心配されるほどだ。
ダイコンの収穫がうまくいったらフカフカの土になるよう、冬から春にかけて土壌改良に挑んでみたい。籾殻や腐葉土を入れるくらいしかしていなかったので、どうしたらいいのか皆目見当もつかない。金銭的にも体力的にも、あまり無理をしないように、動画や本で勉強しながらやってみよう。
「けっこう虫に食われたねえ。うちもやられたよ」と南東さんから声がかかる。大東さんが種から育てたタマネギの苗が余ったとのことで、分けてもらってもっと植えたらいい、という。植え方を教えてあげる、という。タマネギ植え付け講座が始まった。
私は今まで、畝をつくって指で穴を空けて苗を差し込んでいた。「それでもいいけれど」と言いながら、南東さんは大きな鍬をものすごく器用に使って畝に細い溝を作った。そこに苗を立てかけるように言われる。言われた通り10センチ間隔で立てかけたところに、鍬でひょいひょいと土をかけていく。根元を踏み固めるよう言われ、泥状の土を踏み固める。踏み固めた一足分ほどの幅の隣に「足の幅くらい空けるのがちょうどいい」と言いながら、南東さんはまた細い溝を作った。同じように苗を立てかけ、土をかぶせ、踏み固める。あっという間に3列30本ほどの苗を植え終えた。早い。すごい。
土壌改良について聞いてみたら、いますぐでなく、土が一度凍ってからやるのがいいのだという。なんだか楽しみになって、土壌改良がんばろう、という気になった。古老はえらい。
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番外とつぶやきを除く投稿がめでたく100回を迎えました。読んでくださっている皆さまに、深く御礼申し上げます。飽きるまでボチボチやっていきますので、今後ともよろしくお願いします。