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「冬は眠りについてみる」ショートショート【400字】

愛した事は寂しくはないから遅くない。
寂しさに震えても戻らない日を頭で巡らせても陽気な冬に春を求める桜にはどうせ花は咲かないものだ。

風は乾きすぎて頬を刺す。
赤く染まる落ちた葉を拾いあげて慈しんでも緑の葉の頃には気がつかなかったのだから。

埃は舞い散り心も折れて視界を奪うけど、やがて絡み合うように落ちた葉も埃もそのうち土に還り新しい葉が出てきて小さな花が咲く。

拾った赤い葉は元には戻らないけど別に寂しいわけじゃない。

小さな緑が生まれる頃には前を向いて歩ける日も来る。

だからもう戻らない日々に、いつか花が咲く日まで今は少しだけ眠りについてみたい。

遅くはないから歩きたくならなくてもいいから、今日は眠る。

だれも寂しさには勝てないから勝たなくていいから、せめてゆっくり眠る冬になれるといいなと思ってる。

春になったら赤くなる前の小さな葉を見てみよう。

それが今は楽しみだ。

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