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アーヤと神楽と、きれいなもの

優しい彼女は夢を見る。そう、優しい子なのだ。出会ったばかりの頃は、それが分かっていなかったと思う。
「神楽の将来の夢って、案外ギャヴィみたいに乙女チックだったりするの?」
「な、何ですかいきなりアーヤさん……」
今日はオフで、神楽と二人でお茶。この組合わせはちょっと珍しいかも。
「この間、神楽の……FreyMENOWの曲を聴かせてもらったの。つばめにも色々聞きながら──まぁ、つばめの言ってたことは私にはよく分からなかったんだけど……」
「つばめさん……」
「だけど、何もかもがキラキラしてる、理想郷みたいな世界だってことはわかったの。だから神楽も……」
「ああ、昔の曲を聴いてくださったんですね……ありがとうございます」
少し困ったように眉を下げる神楽。
「あの頃の私が、ああいった綺麗な世界を思い描いてたのは確かです。ちょっと気恥ずかしい話ですが……だけど今は、そこまで純粋に美しいだけの世界は描けないと思います」
その顔を見て、浅はかなことを聞いちゃったと後悔した。あの哀しい破壊の歌もまた、彼女か歌った世界なんだから……。
「だけど、今はそれで良かったって思うんです」
けれど、そんな私の暗い思いを掻き消すくらいの明るさで、神楽はそう言った。
「夢みたいに綺麗な世界を、描けなくなったのに?」
「ええ。──ずっと前の私は、ただ明るい世界を夢見るだけでした。ちょっと前の私は、現実の暗さに失望するばかりでした。だけど今は、ちゃんと知ってます。現実は明るいことばかりじゃなくて、でもだからこそ、大切なものが眩いくらいに輝いて見えるんだ、って」
彼女は、そう言って綺麗に笑った。
その顔を見て、私は、
「……神楽って、素敵な子なのね」
「勿論ですよ。気付かなかったんですかアーヤさん?」
そう、やっと気付いたのだ。痛みや苦しみを糧にする強さがこの子にはある。
その強さこそが、彼女を愛おしく感じさせるんだ、って。

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