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【ラジオ文字起こし】「アジアのポップスを聴く時間!!!」#2 タイ編 ★Guest:山麓園太郎さん

ーー「アジアのポップスを聴く時間!!!」第2回は、タイ音楽探検家でWebメディア”STUDIO MUSHROOM IRON”を運営されている、山麓園太郎さんをお招きし、タイ音楽について掘り下げていきたいと思います! 本日はよろしくお願いいたします。

よろしくお願いします。山麓園太郎です。

ーーよろしくお願いいたします。山麓園太郎さんは現在、執筆だったりラジオの出演などなど…タイ音楽を国内に知らせるべく様々な活動をされております。前回の放送でも少しお話した「サバーイ(สบาย)ポップス」、サバーイというのは「快適、心地良い」という意味だそうで。この単語個人的にすごくグッときたんですよね。それがキッカケになったのと、あと漠然となんですけど、山麓さんとライター座談会したいなぁという思いもありまして、「サバーイな」タイと韓国の音楽、そしてタイの音楽シーン全体の現在と今後についてをお話した座談会レポート記事をBUZZYROOTS企画で行いました。

ーーそして。前回の放送でもご紹介したのですが、今LUSSにハマっておりまして…… 

うんうん(笑)。彼らは2人組で活動しているのですが、Pun(ボーカル)は元々ドリームポップバンドのJerry Rocketというインディーズですごく人気があったバンドのボーカリストでした。ただ、本人は元々R&Bがすごく好きで。相方のBen(プロデューサー/ビートメイカー)は、ポップスとかダンスミュージックとかも手がけてる売れっ子プロデューサーです。その2人が自分たちが本当に好きなことをやってるバンドっていうのがLUSSです。

ーー2度にわたり特集していて、もはや番組の推しミュージシャンになりそうなLUSSですが(笑)、今回はLUSSの新曲をお持ちいただきました。山麓さん曲フリをお願いします。

ではお聞きください。LUSSで「KUNGFU」。

M1. LUSS 「KUNGFU」

ーー続いて2曲目いきましょうか。Quicksand Bedというバンドだそうですが。

実はここのところですね、TBSラジオの『アフター6ジャンクション』に2回連続で出させていただいて、タイポップスをかけまくったりして。

番組ではシティポップ風味の強い楽曲をたくさん紹介したのですが、せっかくIzumiさんの番組なので、それ以外の音楽も実は面白いよというのをご紹介しようと思って、タイの現代ファンクからQuicksand Bedというバンドを持ってきました。バンコクで今一番注目すべきモダンファンクバンドで、シルキー&スムースなサウンド、でもしっかりしたファンクネスもあって。Prince好きな人は絶対気に入ると思うんですよね。あんまり良いので2曲ご紹介しようと思って、まず1曲目にお届けするのが「Round and Round」です。どうぞお聞きください。

M2. Quicksand Bed 「Round and Round (feat.Pleng Daynim)」

ーー所謂アーバンな、本当におしゃれなサウンドで。

Quicksand Bedって色々なタイプの楽曲出すんですよ。すごくスローなバラードっぽいものや、ビートが効いたポップなのも出したりして多様性があるんだけど、それ全体に“ファンクネス”が通底してあって。そしてタイのバンドの中でもすばぬけて演奏力が高い、そこが魅力なんですよ。洋楽をすごく研究してるなと感じるバンドの一つでもあります、英詞もポイントですね。

そもそも彼らの親世代が、タイ従来の歌謡曲から洋楽へと流行がシフトしていった世代なので。そのような親からの影響もあって、今の高校生や大学生とか若い人たちは洋楽のヒットソングは常にチェックして聴いている。そうなると、自分たちは洋楽好きだから洋楽っぽい曲書きたいし歌詞も英語で書いて当たり前だ! ってなる。もちろん、タイの言葉で書かれた所謂タイっぽいメロディーの曲も並行して聴いていたりしますけどね。若くなればなるほどその比率はどんどん高くなっているんじゃないかと思いますね。

もう1曲は、よりビートが効いててファンクバンドとしての演奏能力の高さを満喫できる曲です。ということで、Quicksand Bedから「Tough Guy」。

M3.Quicksand Bed 「Tough Guy」

ーーレトロだなっていうのはまず感じたんですけど、ボイシングとか細かい要素を聴くと、微妙に時代感って違うのかなって思ったりもして。

世界共通ですけど、やっぱり今の若い世代のミュージシャンは音楽をチェックするのが基本YouTubeからなので、良い曲を時代関係なくどこからでもつまんでこられる。それがきっと表れているんじゃないかなと思いますね。

ーーなんとなく、つぎはぎっぽい感じがあるけど、絶妙なバランスで綺麗にまとまっているなっているなと。そこに彼らのセンスのすごさを感じて。

でも意図せずしてそうなるのでしょうね。その代わり、一番良いとこから拾ってくるから悪くなりようもないっていう(笑)そういう、“タフさ”っていうのがあるんじゃないかと思いますね。

ーー続いて4曲目ですが。今回、タイのロックソングをもっと聴きたいなと思ってまして。ソフトロックとか夏にぴったりな感じの曲を山麓さんに選んでいただきました。ご紹介いただけますか

今のタイポップスってシティポップ感が強かったりするものが一般的に流行でもありますよね。ですが、日本や世界と全く同じで、ゴリゴリのヘビーメタルのバンドもいるし地下アイドルもいるし、アメリカの南部の香りがプンプンするようなブルースバンドもいるし、もちろんレゲエもあるしヒップホップもあるんで、タイの音楽シーンって本当に色んな音楽ジャンルがあってどれも全部面白いんです。これまでシティポップを中心に紹介してきましたが、それだけだと漏れちゃうものも多すぎて、良い機会なのでロックテイストの強いものをこの番組のために持ってきました! 次にお届けしたいmute.という女性シンガーソングライターなんですけど、インディーズで出したデビュー曲はシティポップだったんです、大人の夜の街の悲しい恋の物語みたいな。そんな感じの曲を出してきたのに、メジャーレーベルと契約後の1発目に持ってきたのがこの上ない3コードのシンプルなロックだったんですよ。そんな驚きもあったこともあるのですが、ソフトめなロックシーンにどんなアーティストがいるのか? っていうところで、mute.を持ってきてみました。では、mute.で「Ouch!」。

M4. mute. 「Ouch!」

ーー爽やかだなぁと。夏の夜にぴったりの爽やかな曲だなと感じました。

シンプルアンドストレートの極みたいな曲なんですけど、この曲ヒットチャートの22位まで上がったんですよ。この曲って、コード3つしか出てこなくて、サビは1番と2番どちらも同じ詞を繰り返してる、すごくメッセージ性が強いものになってるんです。

どうしてお互いに無理しなきゃいけないの?
思いやりのない人
もうたくさん!
私たちを縛るものは何もない
あなたがいなくても私は上手くやってる
それだけのこと
もうどうでもいい!
mute.「Ouch!」よりサビの歌詞

英語のタイトルは「Ouch!」“痛い” なんだけど、タイ語のタイトルは「ฝืน」“気乗りしない” なんです。恋愛する中でそういう状態になった時に相手に対して感じそうな感情を歌にするっていうのが逆に響くんです。タイの人って歌詞をすごく重要視するんです。洋楽が好きで英語で歌詞を書く人たちがいる一方、自分たちの国の言葉で書かれた歌詞はもちろんすっと入るしヒットしやすいです。その理由っていうのが、歌詞にどれだけ共感できるかってことらしくて。その辺がタイポップスの一つの特徴ですよね。

ーー続いて5曲目、紹介をお願いいたします。

次もタイのロックを紹介させていただきたいと思います。H3Fで「Waste My Time」。

M5. H3F 「Waste My Time」

彼らを知ったのが、僕がタイで行きつけにしてるCDショップでオススメされたのがきっかけでした。音も聴かずに買って、聴いてみたら結構なロックでこれはかっこいいぞ! と思いましたね。しかも、古いロックの感じがすごくしたのでこれはすごいなと。その時ちょうど、タイの野外音楽フェス"CAT EXPO"があって出演するのを知っていたので、彼らの物販ブースに行って直接会って、その時売ってたニューアルバムを買って、ライブも見ました。こんだけすごい古いスモーキーなロックのにおいがするから、どんなアーティストの影響受けてるんだろうと思って直接聞いてみたことがあって。Gong(作曲&ギター/ボーカル担当)がJimi Hendrixや、Stevie Ray Vaughan、Albert Collinsとか本当にド・ブルースのギタリストたち。Ping(ギター)はMichael Jackson。Max(ドラム)はbond、Mhom(ベース)はHYUKOHだそうです。ジャンルも年代もボーダーレス感ありますよね、若い世代ならではの。

ーーちなみに、普段山麓さんはどのようにタイポップスを探しているのでしょうか?

先ほど言った、行きつけのCDショップのオーナーさんの紹介で、アーティストや音楽関係者と一気に繋がったのは大きかったです。僕の場合はそんな感じですが、番組をお聴きの皆さんには、タイのラジオ局とかインディー系音楽サイトのSNSやYouTubeチャンネルが役に立つので、そこから掘っていくとプレイリストがすごく潤って楽しくなるんじゃないかなって思いますね。タイ語表記しか無いサイトも多いですが、自動翻訳でなんとなく意味は伝わると思いますし(笑)。メインをYouTubeにセットして関連の動画にどんどん飛んだりとか、気に入った曲のMVを上げているレーベルのチャンネルをお気に入り登録するとか。結構ディープな掘り方が出来ると思いますよ。

ーーなるほど。具体的にはどういったものですか?

抑えとくと良い4大サイトが、インディーズ専門のラジオ局《CAT RADIO》、インディーズの音楽情報を専門に発信するサイト《Fungjai》。それからタイの大手レーベル《GMM Grammy》《RS》。この4つをYouTubeとかFacebookとかでおさえておくと、すごく自分にしっくり来るタイポップスが必ず見つかると思います。《Fungjai》は直接サイトから音源聴けたり、ミュージックビデオが観れたりします。《CAT RADIO》はYouTubeチャンネル登録しておくと、ウィークリーチャート「CAT 40」がチェック出来るんです。そこから個別に各アーティストのミュージックビデオに飛べるから、本当にオススメ。

<リンク一覧>
・《CAT RADIO》
WebSite:http://www.thisiscat.com/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UClbaLl8eAG2zRpaO1eNntPg
Facebook:https://www.facebook.com/thisiscatradio/?fref=ts
Twitter:https://twitter.com/ThisisCatRadio
・《Fungjai》
WebSite:https://www.fungjai.com/
YouTube:https://www.youtube.com/user/hellofungjai
Facebook:https://www.facebook.com/hellofungjai
Twitter:https://twitter.com/hellofungjai
・《GMM Grammy》
WebSite:https://www.gmmgrammy.com/th/index.html
YouTube:https://www.youtube.com/user/gmmgrammyofficial
Facebook:https://www.facebook.com/GMMGRAMMYOFFICIAL/
Twitter:https://twitter.com/GMMGRAMMY
・《RS》
YouTube:https://www.youtube.com/c/rsfriends

ーーぜひ皆さんもチェックしてください! そしてもう一点、山麓さんはタイの音楽とどのように出会ったのでしょうか? 

初めてタイに旅行で行った時、雑貨屋のレジ前でCDが売っててジャケ買いしたんです。僕もタイに行くまでは全く想像がつかなくて、民族楽器的なのがビヨーンって鳴ってるんだろうと想像してたんですけど、CDのジャケットは可愛い女の子だったり、ハートマークのグラフィックだったり、結構垢抜けたジャケットのものが並んでて、気になって聴いてみたいと思って。それで買ってみたのが、タイのシティポップのコンピレーションでした。そっからずぼってハマって。その頃シティポップブームは日本でもまだ起きていなくて、7-80年代のシティポップの匂いがする音楽がそのCDにたっぷり入っていて「なんじゃこりゃ! これはすごいもの見つけた!」って思ったのが最初ですね。それまではシンガポール、香港とか色んな国を巡ってったのが、毎回タイになっちゃって。行く度にCDショップ探して入ってジャケ買いするっていう。タイ語読めないからジャケ買いする以外無いんですよ(笑)。自分の引きの強さもあると思うんだけど、どれ買っても大体シティポップ絡みだったっていう。伝統的歌謡のルークトゥンとかそういうのはジャケットの雰囲気で分かるので、あんまり手がいかず……。元々シティポップすごい好きだからそういうのばかり掘る時期が続きました。

ーーそこからジャンルや時代を広げていったのですね。

そうですね。"CATEXPO"行ったときは、シティポップ系だけじゃなくロックバンドもやってるし、アコースティックでフォーキーなものもあって感心しました。それで色んなジャンルに手を出していって今に至るみたいな感じ。

ーーそのCATEXPO、フェスは大きかった?

うん。人生の転機でしたね。

ーー具体的にそれってどういったアーティスト?

The Darkst Romanceっていう、タイで多分一番やかましいっていうロックバンドだったり、

これから紹介するZom Marieもその一人です。タイポップス好きになった頃にYouTubeで掘っていく中で出会ったのですが、その時聴いたのはアイドルとして活動していた時の曲で、それで”CATEXPO”で実際にステージ観た時は、アイドルから大人のポップシンガーに転身を図る節目のところで、ギターの弾き語りで出てきたんですよ。

ーーそんな、Zom Marieが次ご紹介される曲ですね。山麓さん曲フリをお願いします。

はい、Zom Marieで「Still Talking」。

M6.Zom Marie 「Still Talking」

ーー洋楽というか、ビルボードのチャートに入っているような感じでも全然おかしくないなっていうのをまず本当に感じて。

楽曲から受ける印象が本当に洋楽感アリアリ。英語で歌われているっていうのもありますけど、タイポップスが世界で勝負出来るコンテンツなんだということが実感出来る一曲ですよね。

ーーそうですね。歌の実力もすごく高い。

アイドル時代から含めるとキャリア10年になるので、培ってきたシンガーとしての経験なんですかね。どんどん深みが出てきて、もう大人のシンガーの仲間入りって感じですもんね。

ーーでは、最後の曲ですね。紹介をお願いいたします。

ではお届けいたしましょう。Safeplanetで「NEW WORLD」。

M7. Safeplanet 「NEW WORLD」

ーー本日はタイ音楽探検家でウェブメディアの"Studio Mushroom Iron"を運営の山麓園太郎さんに様々なタイの音楽を紹介いただきました。

僕もこの機会を頂いて、所謂シティポップ以外のタイ音楽を紹介できたのはとても嬉しかったです。タイは本当に色んな音楽ジャンルがあってそれぞれどれも面白いので、自分のライブラリーを広げるって意味で、ちょっと頭の片隅に置いて気にしてチェックしてもらえると面白いんじゃないかと思います。

ーーまた別の角度だったり今回ご紹介したアーティストの最新曲だったりを、また山麓さんを迎えてご紹介できればと思います。本日は山麓園太郎さんにタイ音楽についてご紹介いただきました。ありがとうございました!

どうもありがとうございました。

「アジアのポップスを聴く時間!!!」※偶数月一週目に放送※
FMおだわら78.7Mhz 火曜日午後8時〜
(再放送は翌週月曜日午後9時〜)
「Radio Freedom FM」内にて放送
インターネットラジオ・リアルタイムでのみ聴取可 
サイマル放送リンク:https://www.jcbasimul.com/?radio=fm%E3%81%8A%E3%81%A0%E3%82%8F%E3%82%89

◆概要◆
近年同時多発的に生産され続ける、いま最もエキサイティングでプログレッシブなアジアミュージックたち。メディアプラットフォーム88Risingや コーチェラなど海外大型フェスへの出演をはじめ、国内でもフジロック、サマソニなどアジアのアー ティストたちの活躍が見られたりと、新たなムーブメントを起こしています。 音楽ライターのIZUMI(BUZZY ROOTS)が溢れる好奇心とともに、メジャーからインディまで自由気ままに探求していきます。
「Radio Freedom FM」
オーディオアーティストタカハシ主宰の不定形電波的プロジェクト
https://www.facebook.com/Radio-Freedom-FM-237098932985769

バナー画像:タイ・バンコクより、山麓園太郎さん撮影