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既存の議論プラットフォームは議論がしやすいのか?

以前の記事に書いたように「SNSでは議論ができない(やりづらい)」と感じました。そして「議論ができる場所」について検討し、それを「議論プラットフォーム」と名付けました。

そして、いろいろと調査していくうちに「議論プラットフォーム」と呼べるものは世の中にいくつもあることを知りました。しかしそれらのいずれもが「議論する場所として用意されているサービスではあっても、実際に議論がしやすい仕組みになっているだろうか?」という疑問を抱かざるをえないものでした。

以下にその疑問について記します。最終的に僕が作った議論プラットフォーム GironHub (この記事執筆時点では未公開)がどういうものを目指しているのかが、おわかりいただけると思います。

相談箱型、提言型について

既存の「議論プラットフォーム」を調査する過程で、「教えて○○」「○○箱」「○○袋」のようなサービス(ここでは仮に「相談箱」と呼びます)に多く遭遇しました。

「相談箱」も「議論プラットフォーム」の一形態だと考えて良いと思います。というより GironHub 以外の議論プラットフォームのほとんどが「相談箱」あるいは「提言ボード」のような形態だと考えた方が良いかと思います。

相談型:「なぜ○○は○○なのですか?どう思いますか?」という質問者に対して、いろんな人が回答する方式。

提言型:「○○だと思います」という意見に対して、いろんな人がサムズアップやサムズダウンで賛成や反対の意思表明をし、理由を記述する方式。

これらと、私たちが考える「議論プラットフォーム」の違いは、ザックリ言えば「誰が主役なのか」だと思います。「相談箱型」はあくまで「相談者が納得すれば終わり」という相談者が主役のサービスですし、「提言型」は提言に対しての投票システムです。そのため相談者や提言者と発言者の間でのやりとりが主になり、発言者同士でのやりとりはほとんどありません。あったとしてもあまり好まれません。しかし「議論プラットフォーム」では議論をする人が主役になります。主催者と参加者の間のやりとりよりも参加者同士のやりとりの方が重視され、その議論に参加することで発言者一人一人が収穫を得るのが「議論プラットフォーム」だと考えています。主催者はその議論を開催しようとする言い出しっぺであったり司会者であったりはしますし、そこには大きな収穫がありますが、唯一の主役というわけではありません。

このことは議論のテーマに大きく影響します。

たとえば「職場でこのようなことがありました。みなさんどう思いますか?」というテーマの場合、おそらく相談箱の方がうまくいくでしょう。それは「職場でこのようなことがあった」の内容はとても個人的で、感情移入なしに一般化や共有が難しいからです。

逆に「原発を廃止すべきかどうか」というテーマであればどうでしょうか?一見「相談型」でも「提言型」でも議論はできそうです。しかし、相談型では相談者が納得する回答が得られたら終わりという議論としては消化不良なものになりやすいですし、提言型では提言者の意見が最初に出てきてそれに対して賛成/反対を述べるしかないので、提言の意見に左右されやすいですしどちらでもない意見や新しい争点による議論の活性化が難しいという問題があります。これらはどこまで行っても一対多のコミュニケーションツールなのです。

僕は、何かのテーマに対しての賛成/反対というのは、いろんな意見を聞き対話を行いながら、徐々に自分の中に形成されていくものだと考えています。提言よ読んですぐに「賛成です/反対です」という投票を行うのでは、議論にとって重要な対話プロセスと客観的な熟考をすっ飛ばして「持論を押し通す」だけの結果になるのではないでしょうか。それではSNSと何ら変わらない結果を生むように思います。

そこで「GironHub」の出番です。GironHubは「相談者が納得したら終わり」なものではなく「既存意見に対する持論での賛成/反対」の投票でもありません。他の人の意見を聞きながら自分の意見を形成していく、場合によっては自分の意見を変えていく、そういう「熟議」を行える場所です。そして議論に参加した全員が自分なりの成果を持ち帰ることができます。

ここで「議論の成果」と呼んでいるものは何でしょうか? それは誰が議論に勝ったとか負けたとかそういうことではありません。「自分と違う考えを持っている人に出会いその意見を聞くこと」や「自分と近い考え方を持っている人の論拠を学ぶこと」などによって自分の考えがより深まったり軌道修正されたりすること、それが議論から得られる「成果」ではないでしょうか。

議論では、結論を急ぎすぎないことが重要です。すぐに結論に飛びつかないような仕組みが必要なのです。

インターネット掲示板(フォーラム)について

インターネット上の掲示板あるいはフォーラムと呼ばれるものは、その書き込みの仕組みのことを指します。その掲示板(フォーラム)がどういう目的で設定されているかによって、商品のサポートであったり、サークルのコミュニケーションであったり、議論の場であったりします。そういう意味では「掲示板(フォーラム)形式の議論プラットフォーム」というのも可能性としては有りだと思います。

GironHubが掲示板(フォーラム)形式を取らなかった理由はいくつかあります。

掲示板にもいろんな形がありますが、スレッド型掲示板の場合、(運用方法次第ですが)前述の相談型あるいは提言型と同じ問題に直面する可能性があります。ツリー型掲示板の場合、会話が進むごとに末端の数が増えていき、どこに返信すればいいのかわからなくなり、結論をまとめることも難しくなります。

それから、掲示板には書き置き式でとても静的な印象があります。リアルタイムに議論することが難しいと感じました。私たちはLINEのようなリアルタイムチャットのような感覚で(も)議論できる方が良いのではないか?と考えました。チャットで書き置きはできるけれども掲示板でリアルタイムは難しいのではないか?ということです。

これらの理由から、掲示板(フォーラム)のような形態は取りませんでした。

で、GironHubはいつ公開されるの?

現在だいたいの機能の追加が終わり、テストを行っているところです。

5月の中旬頃には、事前アンケートに連絡先を書いていただいた方を対象に限定公開を行う予定です。また、その際にZoomによる使い方の説明会や質問会を行いたいと考えております。こちらもアンケートに連絡先を書いていただいた方が対象になります。

その後、安定稼働の目処がつき次第、正式公開したいと考えています。

もうしばらくお待ちください。

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