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『ユニコーンオーバーロード』やめ時の見つからないSRPGの傑作

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ゲーム『ユニコーンオーバーロード』、とりあえず一回クリア。おもしろかったー。『十三機兵防衛圏』のヴァニラウェアの新作。とはいえディレクターが異なる(十三は会社代表でもある神谷盛治、ユニコーンは野間崇史。)のでそこまで期待していたわけではなかったが、ちゃんとおもしろい。

このゲーム、『十三機兵防衛圏』と2ラインで動いていた企画だから十年ちかくかかっているんだね。だいたい構想うん十年とかいう企画は微妙なことが多いのだけど今作の場合はシンプルに時間がかかる作りで、時間が質に転化されている感じ。SRPGにしては多いキャラクター数(60体以上)、各キャラクター同士のかけあいは豊富で、しかも各キャラにはみんなボイスがあって──と、とても贅沢な作品だ。デザインも素晴らしいキャラクタが多い。

基本的にストーリーは超王道で、国を追われた元王子の少年が成長し、仲間たちと反乱軍を結成し各地をめぐって解放していく──というだけの話である。特に大どんでん返しみたいなのもないし、出てくるキャラクターは「ああ、こういうのいるよね」というやつばかり。主人公を導いてくれる老いた師匠キャラ、幼馴染の女の子と男の子などなど。そういう意味でいうとシナリオが素晴らしいゲームとは思わないんだけど、とはいえSRPG部分がしっかりとおもしろいので、シナリオはこれぐらいがいいんだよとも思う。

物量があるタイプのゲームだと尖った世界観、尖ったキャラクタばかりだと辟易することもあるからね。ちなみにクリアまでかかる時間自体はだいたい40時間ぐらいじゃないかな。僕がやってだいたい35時間ぐらいだった

90年代のSRPGが蘇ったようで、ちゃんと新しい

ゲームシステム的には「90年代のSRPGが蘇ったよう」なクラシックスタイル(シナリオも含めて)でありながら、ちゃんと新しさもある作品だ。たとえばSRPG、SRPGと言っているが、本作はターン制のSRPGではない。

戦闘が始まるとフィールドに兵士ユニットらが存在することになるのだが、すぐに敵の兵士はリアルタイムで動き出していてこっちも慌てて兵士ユニットを出さないとあっというまに敵がこっちの陣地を攻撃し始める。そのため一回ポーズして、兵士ユニットを出して、移動経路や行動を選択させ(スキルを使うのかとか休息させるのかとか)、陣地を取り合っていく。おおまかな指示を与えたらユニットは勝手に戦闘状態に入るので非常にテンポが良いし、クラス、兵種も膨大なので考えることも多くておもしろい。

SRPGとRTSのあいのこといった形か。手に入ったユニットを全部使えるわけでもないのでデッキビルディング的な楽しみもあり(本作は1部隊最大5人までで兵種をどう揃えるのかとかいろいろと構築の楽しみがある)、終盤敵が強くなってくるとより最適な構成を探して何十分も入れ替えたりしていた。ただUIとこの構成周りの操作性は劣悪で気分が悪かったのだけれども。

こうしたゲームがおもしろいものになるかどうかについてはシナリオとか大まかなゲーム性以外にもたとえば「プレイヤーにどれぐらいのリソースを与えるのか」という緻密な配分が関わってくるが(たとえば部隊は最初は2だったか3だったかしか構築できないのだが、次第にその数も増やせるようになっていく)少しでもリソースを与えすぎるとヌルゲーになり、リソースが厳しすぎるとやるきがなくなりになってしまう。その点、本作は細かな部分のリソースの配分が素晴らしいと感じた。このへんがちゃんとしているとやりたくてやりたくてたまらないゲームになるんだよね。久しぶりにアリスソフトのTADAゲーをやったような満足感を味わったよ。

あと、戦闘以外もスゴく、ゲームがはじまってチュートリアル的な戦闘などを終えたらあとは広大なフィールドの攻略の進め方は自由に設定されている点にある。なんならいきなりラスボスに挑むことも可能であり、完全な2dゲームなのに近年のゼルダのような遊び方ができる。とはいえ攻略ルートはきちんと示されるので通常はそれに従ってやっていくことになるのだが。

このゲームは特に序盤がおもしろくて、とにかくマップ中にクエスト(メインだけじゃなくてサブが)が敷き詰められていて、クリアするたびに新しい魅力的なメンバーが加入していく。クエストをクリアするとレベルがあがったり武器が手に入るだけでなくこうやって「新しいユニット、新しい兵種」がどんどん入ってくるので、これが中毒性に繋がっている。やめ時がわからなくてずっとやってしまうのだ。とはいえ終盤になるとさすがにユニットの加入ペースがぐっと落ちてゲーム的には失速していくのだけど(シナリオも予定調和的なところに収束していくし)、それでも最終盤までずっとおもしろい。

仲間になるキャラクターも「仲間にしない」選択ができることも多く、たとえばもともと悪いことをしていたやつを許して仲間にするかどうか(仲間にしなかったやつはたいてい処刑される)には葛藤がある。僕は基本的に悪いことをしていたおっさんは殺し、かわいい女の子なら悪いことをしていても仲間にする方針でやっていたが、そうしたロールプレイも良い面だ。

と、非常に大満足な一作であった。

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