『葬送のフリーレン』構造的に無限に続けられる過去回想の使われ方がおもしろい

葬送のフリーレンを出ている3巻まで読んだ。魔王を殺す勇者パーティにいたエルフが、魔王討伐後何十年も経って死んでいく仲間たちを看取り、その思い出の地を順々にめぐっていくというただそれだけの話である。

今の週刊少年サンデーでいちおしの話だけあっておもしろい。世界観の描写は魔法周りの描写も丁寧で、戦闘もなかなかおもしろく、キャラ周りの処理も丁寧だ。構造的におもしろいのが、思い出の地をめぐっていくうちにその土地の魔族を対峙したり、昔封印するしかできなかったヤバいやつをあらためて殺していったりするんだけど、そのたびに過去回想が増えてくるんだよね。少年漫画における過去回想って設定開示として便利な反面メインストーリーが停滞するからいいところで回想に入って戻ってこなかったりすると「どうなってんだよ!!」とブチギレそうになるんだけど(ONEPIECEとかそう)、このフリーレンの場合、回想こそが本編=魔王討伐の物語であって、本筋の方は何の切迫感もないし、どうでもいい旅をしているともいえる。

過去回想も別に時系列に沿って回収されるわけではなくて、ゼルダのブレスオブザワイルド的に断片がばらばらに集まってくるわけなので、いってみれば過去を無限に生やすことで無限に物語を続けられる便利な仕組み、構造だ。やるな、とは思うんだけど、それがまた同時に物語としては弱点でもある。結局、現在の時間軸としては大きな目的は何もないわけであって(パーティの過去の足跡をたどるというのはあるけど)、物語はフワッとしていて、緊迫感もなければ大きな盛り上がりもない。どこかに向かっている感もない。

3巻とかでは現在でいちおう盛り上がりを作ろうとしてはいるんだけどうーん……。短くてそれなりにオチのある話を作り続けるのもなかなか大変そうだな……。

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