【ショートショート】私もあなたが好きです。
高校生の女子5人ほどだろうか。
私達の斜めの方でレジャーシートを広げピクニックをしている。
「ねー。写真撮ってもらおーよ。」
「人に話しかけるの緊張するよぉ。」
あどけない女子高生達の会話が少し聞こえてくる。
「写真撮ってあげよーよ。」彼女―金地美香が僕にそう言う。
「よし!」僕達は背中を押してあげようと立ち上がり彼女達に近づいた。
「写真撮りましょうか。」僕は低姿勢で彼女達に尋ねる。
「いいんですか!お願いします!」彼女達の性格を表わすような、活き活きとした返事が返ってきた。
「動画回しながら、写真も撮ってもらうと嬉しいです!」
「了解です!」紅葉を背景に5人ピクニック動画を撮りたいらしい。
「動画回していいですか?」
「お願いします!」彼女達は様々なポーズをしながら、まるでモデルのように動画と写真を撮影していく。
「紅葉ひらひらしない?」彼女達の語彙力は少ないが、言っている事はわかる。
彼女達は一握りの紅葉を頭上に投げ上げて、ヒラヒラと舞い落ちる演出をする。
その写真にかける真っ直ぐな思いが僕の心を刺激する。この感情は何なのだろうか。
「もー大丈夫そう?」僕が彼女達に尋ねる。
「ありがとうございます!」気持ちのいい返事はやはり、彼女達の特権だ。
「あのーお二方の写真もお撮りしましょうか?」僕と彼女は目を合わした。
「いえいえ!大丈夫ですよ!」彼女は遠慮気味に断った。
「いや、撮ってもらったので、カップル写真撮ります!」
カップルという言葉は私達には似つかわしくない。そう。僕達は単なる高校生からの同級生なのだ。少し距離が近いだけの。
「レジャーシートも汚いしな。」僕が恥ずかしそうに言う。
「後ろバックにしたら紅葉めちゃ綺麗ですよ!」彼女達の勢いに私たちは押負けた。
「そうかな。じゃーお願いします。」彼女が携帯を渡すと、最後の抵抗なのか後ろ姿を撮るように女子高生達に指示した。
「じゃー撮りまーす!」
「え。めっちゃかわいい!最高のカップルじゃん。」
「いいなぁ。こーゆーカップルになりたかった。」
「素敵すぎる。紅葉も相まって。」
彼女達が私達に向ける黄色い声援は少し僕たちの距離を縮めた。
「ありがとうございます」彼女がそういうと僕も続いてお礼を言った。
「なんだかんだ。知り合って8年目だけど、初めての写真だね。」彼女の言葉は何かを含んだような言い様だった。
「そーだね。」僕達は半畳のレジャーシートに戻った。
2人狭いレジャーシートに無言で座った。
僕は彼女と友達の関係を越えるのが怖い。モヤモヤした気持ちのままが8年続いた。
「最高のカップルじゃん。」
女子高生達のこの言葉が何故か僕の背中を押した。
そして、感情を照らすかのように、太陽も光る。
「なぁ。美香。俺さぁ。やっぱりずっと美香と一緒に居たい。だからさ、俺と付き合ってほしい。」
私は気づいた。あ。そうか。僕が押したつもりの背中は彼女達に押されてたのか。
エピローグ
「ねぇ。あのカップルなんかもどかしくない?」
「え。じゃーさ。私達が写真撮ってもらう代わりに、写真撮って距離縮めさせよーよ。ありがた迷惑かな。」
「いいじゃん!一石二鳥でしょ!」
「よし!JK作戦開始でっす!」