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不登校対策定番メニューには意味があるのか①スクールカウンセラー

子どもが不登校になると、学校から提案される「定番メニュー」のようなものがありますね。例えば、教育支援センター(適応指導教室)や、別室登校、SC(スクールカウンセラー)やSSW(スクールソーシャルワーカー)など。

しかし、これらの対策は、長く続けられている割にはあまり効果がないように思えます。なにせこの数年は、日本全国で数万人単位で不登校児童生徒が増えているのですから。

その意味で、不登校支援や不登校に関わる仕事をしている一人として、これらの対策のどこに問題があるのか。その実情と合わせて、しっかりと整理しておきたいと思います。


最初に取り上げる定番メニューは「スクールカウンセラー(SC)」

SCは不登校の児童生徒数を減らす役には立たない

まず2021年の産経新聞WEBのニュース記事を確認します。

要約すると「全国的にスクールカウンセラーの配置を増やしているが、不登校は減るどこか増えてしまっている」という内容。特に注目すべきは、名古屋市が全公立中学校にSCを配置し常駐体制をとったけれど、不登校は増加し続けている、というところです。

現在、SCについては、各小中学校に週に数日カウンセラーがやってきて子どもたちや保護者のカウンセリングを行う、という運営形態が一般的かと思います。ですので、「SCが足りてないから不登校が減らないのだ!予算を増やして、SCの増員を!」と言いたくなりますが、この名古屋市の取組から言えることは「不登校の子どもたちの数を減らしていく、という目的に対して、SCという対策は、ほとんど意味がない」ということになります。

他自治体の取組を無駄にする多くの自治体

ただし、この名古屋市の取組は決して無駄ではありません。なぜなら名古屋市は、ある意味で、お金と時間をかけて「SCが不登校対策に対して、どのように機能するのか/機能しないのか」を研究してくれたのだ、と言えるからです。もし名古屋市の取組がお金と時間と人的リソースの無駄になるのだととしたら、それは、この結果を参考にせず、不登校対策と称して、「これまでやってきたから」とか「どこもこれをやっているから」といった理由で現在のやり方を踏襲する形でSC関連予算を増やした時です。そんな愚かなことはやってはいけません。もし、読者の方が住んでいる自治体でそのようなことが行われようとしているなら、早急に議員や教育委員会に名古屋市の事例を教えてあげるべきです。

SCは再登校にも役に立たない

またSCは、不登校になった子どもたちの学校復帰にも、あまり役に立たないという結果が、株式会社スダチさんのアンケートによって明らかになっています。

スクールカウンセラーを利用した保護者のうち、「94%の保護者が、再登校は実現できないと受け止めていた

上記のアンケートは、スダチさんのサービスを利用された保護者へのアンケートですので、一定の偏りがある可能性はあるものの、僕が代表を務めているNPOで開催している親の会でも、多くの保護者の方から、やはり同様の意見をお聞きします。

SCが不登校対策にならない理由

では、なぜSCを増員しても、常駐させても、不登校は減らず、再登校にもつながらないのか。

それは、子どもたちを不登校にしてしまう要因が、学校の中から改善されていないからです。

当たり前ですが、子どもたちが不登校になってしまうのは、SCが足りていないからではありません。学校の中に、その子を不登校にしてしまう、なんらかの要因があるからです。それは、先生かもしれないし、クラスメイトかもしれない。あるいは、校則の運用やスクールカーストのように、学校生活の中で「雰囲気のようなもの」として子どもたちに感じられているものかもしれません。

ただ少なくともそれらが改善されない限り、不登校は減ることも、再登校が増えることもないでしょう。

会社で考えればわかることですが、ブラックな労働環境の会社において、精神疾患で休職する職員を少なくしたければ、やるべきことはブラックな環境を改善することであって、決してカウンセリングの充実や休職者のメンタル回復、ましてや精神鍛錬などではないはずです。それは根本的な解決にならなことは誰が考えてもわかります。しかし、なぜか不登校対策としてのSCについて語られるとき、そうした至極当然な因果関係が忘れられがちです。

SCは必要ない?

では、スクールカウンセラーは必要のない仕事なのかというと決してそうではないと思います。

SCの仕事内容を少しだけ変えたり、あるいは、やるべき仕事の目的を明確にすれば、不登校の数を減らしたり、学校復帰の子たちを増やすというところまではいかないかもれいませんが、子どもたちの学校に行けない時間を、より将来へとつながる時間として過ごしてもらう関わりができると思います。

次回は、そのあたりについて書きたいと思います。

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