理系院生が良く就職する業界はどこか?

お久しぶりです、博士論文や新生活の準備で忙しくて久しぶりの更新になります。
今日はタイトルの通り、理系の大学院生がどのような業界に就職しているのかについて、大学が公表しているデータを見ていて面白かったのでそれをまとめようと思います。

調べようと思った動機と調べた方法

動機はとても単純です。
最近多くの企業で理系大学院生の需要は高まっているという趣旨のニュースや企業戦略を見かけます。
これはデータ分析の需要の増大や人工知能が爆発的に進化していることなどを踏まえると、当然の対応でしょう。
それでは企業側の需要とは逆に「理系院生はどの業界の企業に就職する傾向にあるのか」が気になったからです。
恐らく周囲の人間がどのような業界に就職しているのか、大雑把な印象を持っている人が多いでしょうが、実際に数字で見てみると新しい発見があるかもしれません。

調べ方は京都大学の公式ページで公表されている卒業生の進路情報を参照にしました。

え、どうして東大じゃないのかって?
東大は年度ごとに情報を引っ張ってくる必要があって面倒だったからですよ〜他意はないです。
まあ京大も大きな大学ですので、主要な動向を調べるだけなら十分でしょう。

上記のページから、理学研究科・情報学研究科・工学研究科の学生の就職業界の情報を取得しました。
他にも理系に分類される学科はありますが、調べるのが面倒だったので人数が多い3つの学科だけ調べてます。
また、調べた業界もサービス業、製造業、情報・通信業、金融・保険業の4種類だけです。
これも他の業界を調べるのが面(以下略)。
以下の分析結果は、上記のデータに基づいていることは注意してください。


全体の動向

早速、3つの研究科をまとめた結果を見てみましょう。

この図では、それぞれの研究科で各業界への就職率を計算し、それを業界別に学科で平均したものを示しています。
(例えば、ある年度のサービス業について理学研究科の就職率が30 %、情報学研究科が20 %、工学研究科が10 %なら、平均した20 %がその年度のサービス業への就職率となります。)
このような操作をした理由は、単純に各学科を足し合わせたものを平均してしまうと、最も学生数の多い工学研究科の就職率が強く反映されてしまうからです。

上の図から、製造業が最も人気で、次点にサービス業か情報通信業、最後に金融業界となっていることがわかります。
15年前ぐらいはサービス業が2番手でしたが、5年ほど前から情報通信業に追い越されている傾向にあるのは、最近の情報通信業の勢いが反映されているのでしょう。
実際に学生の就職人気も業界の勢いが反映されるのは面白いですね。
一方で金融業界はずっと5 %程度で低調なまま安定しています。
金融業界はクオンツやアクチュアリーなど理系が活躍できる分野を多数抱えているだけに、この結果は少し意外でした。


全体の動向(博士)

先ほどの結果は卒業生全体の動向、つまり修士卒も博士卒も一緒にカウントした結果でした。
しかし、修士卒の人間が圧倒的に多いため、実質的に修士卒の就職率を反映したものになっています。
そこで、次に博士卒だけで就職率を調べたらどうなるでしょうか?

結果として、サービス業が50 %以上と圧倒的な人気を誇ることがわかりました。
これは京大がサービス業の中に研究職を含めているからだと思われます。
なんだかんだで、分野は違えど研究職に就く博士卒がそれだけ多いのでしょう。

サービス業の次点で製造業、情報通信業、そして金融・保険業となりました。
就職率自体は10 %程度と全体で見た場合に比べて減少しましたが、それでも情報通信業がここ5年ぐらいで5 %程度就職率を増加させている点は注目すべき点でしょう。
一方、金融業界はこちらでも最下位、何ならほぼ0 %で推移しています。
頑張れ金融業界。


理学研究科の動向

ここからは各研究科ごとに就職率の傾向の違いを見ていきます。
まずは就職無理学部(そんなことはない)と呼ばれることもある理学研究科から。

結果はサービス業と製造業がほぼ同率で一位、その次に情報通信業、そして金融・保険業となりました。
10年ぐらい前まではサービス業がダントツの人気でしたが、ここ数年で製造業に追い上げられていますね、何があったのでしょうか?
また、情報通信業のここ数年の就職率の増加はここでも見られます。
金融業界は理学研究科でも最下位ですが、10 %程度で推移しており、全体で見た時の2倍程度の就職率となっています。
これは金融業界への就職のボリューム層が理学研究科の修士卒(特に数学科?)になっているからだと考えられます。

続いて博士卒のみの結果です。

サービス業が圧倒的です。
ただ、ここ数年は減少傾向で、代わりに製造業と情報通信業が増加しています。
そして金融業界はここでも最下位です。
15年前は情報通信業と大差がなかっただけに、業界としての集客力の違いを見せつけられているようで悲しいですね。

情報学研究科の動向


最近の傾向だと、情報通信業が一番人気、続いて製造業、サービス業、金融・保険業界となりました。
15年前は製造業が一位の学科でしたが、最近のブームで情報通信業が20 %程度就職率を伸ばしていますね。
製造業は情報通信業に抜かれるだけにとどまらず、サービス業にも抜かれそうな勢いですね。
理学研究科ではサービス業が減少傾向だっただけに、この傾向の違いは興味深いです。
金融業界は、、、うん。

続いて博士の結果です。

こちらはサービス業が一位、その後に情報通信業・製造業と来て、最後にほぼ0 %の金融・保険業となりました。
博士卒なので、研究職を含んでいるサービス業が一位なのは理解できますが、他のすべての図で近年増加傾向にあった情報通信業が減少傾向なのは特筆すべき点でしょう。
修士では情報通信業が一位だったのにも関わらず、です。
この理由は後で就職先の個別企業を調べて、きちんと理解すると面白いかもしれません。
(情報学研究科が卒業生の進路を公表していればですが)


工学研究科の動向

最後に工学研究科です。

製造業が50 %以上で圧倒的一位ですね。
ただし、ここでも近年は一位の業種は減少傾向にあって、代わりにサービス業と情報通信業が5 %程度増加しています。
金融業界については可哀相なのでもう触れません。

次に博士卒のみの結果です。

ほとんどがサービス業と製造業で占められる結果になりました。
あんまり年度による変動がありませんね。

まとめ

  • サービス業、製造業、情報通信業のどれが一番人気かは、学科や学歴(博士卒 or 修士卒)で異なる。

  • 金融・保険業は、4つの業種の中だとどの学科でも一番不人気。

  • 学科全体では、どの学科でも一番人気の業種が近年減少傾向にあった。

最後の点は面白いですね。
理由として適当に考えたものとしては

  1. 周りに合わせて進路を決める学生が減少傾向にあり、自分の適性・希望をきちんと考えて就職活動に取り組むようになった。

  2. 様々な業種の企業で理系院生の需要が増加したため、今回調べた4つの業種以外に流れる学生が増加した。

ぐらいでしょうか。
1. に関しては昔の学生が不真面目だったというわけではなく、YoutubeやSNSなどで昔に比べて多くの情報を就活生が得やすくなったからでしょう。

とりあえず金融業界頑張れ。
(オチに使ってしまい申し訳ありません。)


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