年末に想うこと

早いもので、もう師走も半ばです。駅前はきらきらとイルミネーションが輝き、街を歩けば酔客だらけのこの季節。毎年毎年僕はある方を思い浮かべます。その方の名は、そう、山下達郎さんです。

『クリスマス・イブ』。この曲、実はリリース時にはそこまでヒットしてません。1983年のシングルリリース時はオリコン44位。しかも普通のシングルではなく、3万枚限定の12インチでした。それがその5年後の1988年、JR東海のCMソングで使われたことで爆発的な人気を得て、いまやクリスマス定番曲としての地位を不動のものにしました。40年弱も年1回、定番の曲を持つとはどういうことなのか? 山下達郎さんの12月の売り上げは、毎年毎年どうなっているのか? あ、そういえばここの家、奥様もケンタッキーのCMでクリスマスソングがあったな? いや最強だな、この夫婦。

世界的に有名なクリスマスソングがあります。ビング クロスビーの『ホワイトクリスマス』、ナット キングコールの『クリスマス ソング』、ジョン レノンの『ハッピー クリスマス』、まあ、北朝鮮やイランの人はピンと来ないかもしれませんが、世界的な定番曲は枚挙にいとまがありません。しかし、ご当地限定クリスマス定番曲って、世界的にも珍しいんじゃないかと思います。もちろんあるんでしょうけど、達郎さんの『クリスマス・イブ』ほどではないんじゃないかと思います。それは多分、この曲の宗教色のなさに秘密がある気がします。

世界的に見て、日本のクリスマスはかなり特殊です。よくよく考えてみれば単なるキリスト教の1行事に過ぎません。しかも本来は、家族と過ごして家でのんびりするためのものです。しかし、日本のクリスマスはその真逆。かなり躁状態です。そもそも日本人はイベントとは躁状態でやるという固定観念があるせいか、海外の普通の行事を、異様なアゲ感のイベントにアレンジし直す傾向があります。その下地の上に、時はバブル真っ只中。浮かれまくる我々の眼前に、当時デビューしたばかりの牧瀬里穂。そして、その映像のバックに流れたのが『クリスマス・イブ』だったのです。もう、当時どれだけ日本人はアガッていたのだろうと懐かしくも寂しくなりました。

ことほど左様にこの40年弱、我々は毎年毎年、達郎さんを耳にしています。新しくこの日本型アゲ系クリスマス定番ソングが登場する時。それは、また日本自体がアゲアゲ好景気になる時なのかもしれません。まあ、そんなものいつ来るか知りませんけど…………。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?