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【ウルトラの娘】

コロナも落ち着いてきたかと思われていた
2020年の年末に後輩の経営する”BAR“で静かに飲んでいた。

湖のひみつ

ちょっとした知人女性が
「うちの娘、今年成人式なんですが、子供の頃から”ウルトラマン“が好きで彼氏も作らずに特撮のイベントばかりに行っているんです」
と話しかけてきた。

俺は二十歳の娘なら、最近のウルトラマンしか知らないのだろうから、ウルトラマンに変身する、隊員役のイケメン俳優の追っかけでもしているのだろうと思い
「それは心配ですな。遠くまで行っているのですか?」
と、ありきたりの返事をした。

「はい、この前は大阪まで行くというので、心配でついていきました。オシャレしていくと言って”怪獣柄“のシャツを着ています」
と、写真を見せてくれた。

写真を見ると、エレキング(注1)柄のシャツを着ているではないか!

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怪獣陛下

「お母さん?この子は一番好きな怪獣はなんと言っていますか?」
と質問すると
「ゴモラが(注2)一番好きと言っています」
との回答。

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俺は興奮気味に
「まさか?初代ウルトラマンからすべて網羅しているのですか?」
と聞いた。

「はい。ほとんどのストーリーを記憶していて、いつも質問攻めにあって困っています」
とのこと。

俺は大きく息を吸い込み
「お母さん、何も心配いりませんよ。我々ウルトラ第一世代にとって、この子は”ウルトラの娘“です!そして、光の国の子供を生んだ貴女は”リアルウルトラの母“なのですから~!」
と、よくわからないが、力強く勇気が出る言葉を送った。

しばらくして、ウルトラの母がウルトラの娘と会う機会を作ってくれた。本当にウルトラマンが大好きで、いつの時代のウルトラマンにも詳しかったし、俺の質問に答える時の「そんなの知ってるし~」的なドヤ顔が可愛かった。

素晴らしい・・・ 

素晴らしいぞ!ウルトラの娘!

ウルトラ小倉警備隊佐賀へ

そんな中「ウルトラマン55周年 TSUBURAYA EXHIBITION 2021」なるイベントが佐賀県で行われているとの情報が入ってきた。

BARの経営者の後輩から
「佐賀でウルトラマンのイベントやっているみたいなので、俺の車で一緒に行きましょう」
と電話があった。

俺は”そうだ!“と思い
「車で行くなら、ウルトラの娘も誘ってやろう」
と言った。

すると後輩が
「俺もそう思ってウルトラの母に連絡したんすよ、そしたらウルトラの娘はもう行ってるそうです。焼き物のゴモラ(佐賀は”有田焼“などの陶磁器が有名)買ってきたそうです」

「なんやと!」

九州に住んでいる人なら分かるだろうが、北九州と佐賀は微妙な位置関係にある。新幹線も博多までだし、何かと交通手段が不便なのである。

女学生のウルトラの娘が一人で、バスや電車を乗り継いでいくのは大変だろうと思い、一人前の大人ぶって誘ってみたが全然出遅れているではないか。

距離なんて関係ない。初日に行くのが光の国のルール。

すまないウルトラの娘。。また、君に教えられたな。

シュワッチ!


注1:ウルトラセブン 第3話「湖のひみつ」に登場した宇宙怪獣。長いしっぽと口から放電光線を吐く。アイスラッガーで、尻尾、胴体、首と切断され絶命。

注2:ウルトラマン 第26話~27話に「怪獣殿下」登場した古代怪獣。大暴れして大阪城を全壊させるシーンは有名。科学特捜隊に尻尾を切断され逃亡するが、最後はウルトラマンに角を折られ「スぺシュウム光線」で絶命。

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