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    はてなブログに掲載した過去の文章です。

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山の斜面で恋をした

どこに行ってたの 女の子が多いところ キャバクラ? まあ、でもお前よりいい女がいないことを確認してきただけだよ。付き合いで行っただけだし。 ふーん 不満げだねえ 嘘は悪いことじゃなくて、寂しいことなんだよ。 俺を寂しいやつだっていいたいの? 人を信用しないことはいけないことだけど、だいたいはそれで上手くいく。 何がいいたいの この世で一番美味しいごはんは一人じゃ食べられないって言うから、どうしても一人で食べたくない。 つまりは? 昨日の夜も一人で食べた

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      画面上で二度、指を滑らせて作った文字。 たったこの二文字があなたに対するすべてで、送信を押すだけで、気持ちは伝わる。 本当に伝わる? 顔を見て直接伝えた言葉でさえ心許ないのに、文字で伝わることが可能なのか。 わかって欲しくて何度も口にしたり文字に起こしたりすると、それはそれで大変疑い深くなる。余計に嘘くさくなる。白々しい。 文字で本心が伝わることなど本当にあるのか?言葉で気持ちが伝わることなどあるのか?いっそ心の中身をすべて相手に見せて、これが本当の気持ちです!って、そう

      • 皮と骨について

        わたしの好きな人はすれ違う女の子をかわいいと言うし、最近のアイドルや若い女優をかわいいと言うし、女友達にかわいいと冗談混じりで言う。女の子はみんなかわいい、よく言っている。 「あの人、あなたには冗談でもかわいいと言わないね」ある人に指摘された。 わたしも気付いていた。 彼はわたしを嫌いであるということはみんな知っているしわたしも知っている。これは憶測などではなく、友人が彼自身に直接聞いたことだから確かだ。 かわいいとは何か。肌が美しく、ひとつひとつのパーツが綺麗な形をしてお

        • ぜってえ丸の内勤務OLになってケイトスペードの長サイフ小脇に抱えてお尻振りつつ長い髪なびかせて急ぎ気味にヒール鳴らしてオフィス街ランチバトル、勝ち抜いてやるからな

          おかあさんへ 仕送り届いたよ。ありがとう。さっそく冷蔵庫に送ってくれたお野菜とかお漬け物とかいろいろ詰めたよ。いつもじゃ信じられへんくらい冷蔵庫、賑やかになりました。あ、別にご飯食べてないとかじゃないから、心配しないでね。買ったり作ったりはまちまちだけど、ちゃんと毎日食べてるよ。最近は朝に納豆と白米とおみおつけを食べるのにハマってるよ。最初はレトルトのやつだったんだけど、なんか物足りなくて作り出したら凝っちゃって。お味噌、いろんなの試したけど赤はやっぱからいね。白みそにした

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          6本

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          嘘の緑

          「ごめんね」 あ、 「僕、佐久間さんのこと女として一度も見たことない」 数えたって虚しいだけ。数えないけど、何回目かな。勇気を出した告白、帰り道。たばこの煙と人間をかき分けて乗った電車の、窓の奥はキラキラ、街灯の街。人間の街。なんでもある新宿。 JR山手線。新宿を出ると窓の奥は暗くなった。それとほぼ同時に映り込む自分の情けない、情けない、情けない顔。なんにもない私。泣けてもこない。ぽかんとして、ああこの感じ。慣れたなって、思います。慣れっていうのはすごいです。今日はああ言

          嘘の緑

          蓄光の星

          「お邪魔します。」 今日、初めて上京してから自分の部屋に男の人を呼んだ。お母さん、わたしを不良娘って叱ってください。お付き合いしてない異性を自室に招いたの。どきどきしてる。だって、彼は片想いの相手だから。学生時代、異性に想いを寄せたことはあったけど、どれも成就せずに思い出のひとつとなってわたしの中で今もくすぶってる。だから、同じ会社、違う部署、でも同じフロアにいる、女性に人気者の彼の事は見ているだけで十分、それ以上は何も望んでいなかったのだけれど、たまたま自分の住んでいる駅

          蓄光の星

          缶のコンポタ、あるいはパフェの底

          喫茶店、注文したのはアールグレイのホット。かならず、ミルクで。 紅茶にミルクを落とす時、やわらかな渦を描く様子はなんと形容したらよいのだろう。とにかく、わたしはそれを見るのが好き。うすい緋色の液体にミルクの混じり気のないホワイトは、とても、とても美しい。 たまにだけど、珈琲を頼むときも勿論ある。珈琲の場合には、カップが持ちづらければ持ちづらいほどよい。スプーンで反時計回りに回せばまろやかになり、時計回りに回せば尖った味になる。これは父から教わった。原理はわからないのだけど、き

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          Kill me while I’m still young and pretty.

          おにいちゃんは今日、大学のサークルで知り合った女の子とデートなのだそうだ。 早朝、世界一音が大きいと銘打った(うるさいからわたしも起きちゃう)目覚まし時計のアラーム音が家中に鳴り響いて起床。シャワーをひと浴びして、全裸(見たくない)で自室まで移動する。ボクサーパンツだけを身につけ、おもむろに窓を開けるとベランダに出て日光を一身に浴び、太陽に向かってなぜかダハハ!と笑う。その場でブルガリの香水を豪快に手にとって胸元にバーン!そのあとちょっと自分の胸毛を撫でる。 洗面所に移動し

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          日々の理

          日々の理とは、にちにちのり、と読む。日々生かされている有り難さに対するその御恩奉じとして「理立て」する、即ちお供えである。 わたしは毎晩22時に一錠薬を飲むので、その時に合わせて箱の中に100円玉を落とすようにしている。時旬が来たらそれに少し理を添えて(金額を増やして)お供えする。 現在、わたしはほとんど現金を使わない生活を送っている。時たま買い物に出かけたりもするが、基本財布にお金があると使ってしまう質なので極力入れないようにしている。あと個人的な話になるが、中学生の時

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          岡村靖幸『だいすき』

          「大好き」でもなく、「ダイスキ」でもなく、「DAISUKI」でもなく、「だいすき」なのである。 岡村靖幸との出会いは3年ほど前だった。 とっても仲の良い友人が岡村靖幸にハマって、YouTubeにアップロードされている『だいすき』と『Super Girl』のURLをラインで送ってきたことがきっかけであったように記憶している。 初めてみた岡村靖幸は、衝撃そのものであった。 癖しかない歌い方、表情、動き、そして独特な世界観の歌詞とメロディー。はじめのうちこそウゲ〜と思っていた

          岡村靖幸『だいすき』

          江國香織『すいかの匂い』

          京都へ来て一ヶ月。わたしはここで三冊の本を買った。そのうちの一冊が江國香織の『すいかの匂い』である。 東京で24年生きた。その間にいろんな本を読んだ。自分で読みたくて買った本や、人から勧められて読んだ本、学校での推薦課題図書、親から勧められた本、家にあった本、図書館で見つけた本、古本屋で立ち読みした本。すぐに読み終える本もあればそうでない本もあった。 江國香織は今までに一度だけ手に取り、読むことを試みたことがある。その時は初めてできた交際相手とぐずぐずになって別れた頃で、

          江國香織『すいかの匂い』