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体温を豊平川に溶かす

豊平川、札幌の川。

中学のとき、ベースを買った友達と、家につくまで待てずソフトケースを開けて弾いた川。高校のとき、橋の下でホルモンを焼いたりタバコを吸った川。誰も話す相手がいなくて、藪の中でひとり酒を飲んでいた川。

2023年・冬の豊平川

2年前、豊平川の近くに部屋を借り、季節・時間を問わず川に通うようになった。何をするでもなく川の音を聞き、水量の増減や季節の変化を感じ、ほぼ全裸での日光浴やイリーガルな焚き火、平日昼のバーベキューを眺めている。フライフィッシングのキャストを練習する人、あずまやでカードゲームをする人、スポーツ・楽器の自主練習、ジョギング、犬の散歩。この川の懐の深さに、助けられている。そこに身を置くだけで、呼吸が深くなったような気がした。

浅瀬に入ってみると、足先を小魚がつつく。流れがゆるやかな場所にはウグイやモツゴの群れがいて、手を突っ込んだりカメラで追いかけて遊んでいた。おれが生まれるずっと前からこの場所で川は流れていて、いまこの瞬間、自分という個体が足を浸して体温を水に溶かしている。自分に向きすぎた意識を少しずつ広げていって、おれが豊平川に流れていく。

2024年・夏の豊平川


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