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生活に音楽を取り戻す | 15分で考える音楽以前のこと(8)

大阪・梅田のラッパーKZさんが2018年にバトルで放った「辞めたやつ、消えてったやつ、止まったやつ、オレが勝てばまた針が動き出す」の事を考えてる。

KZさんはいま31歳くらいで、オレのほんの少し上の同世代。「梅田サイファー」の中心人物で、ずーっと梅田の歩道橋でサイファー(バトルなしのフリースタイルみたいな感じ)をやり、コンスタントにEPやアルバムをリリースして、クルーでもバシバシ活動してきた。活動量がすごい。やっぱり続けている人は、強い。もちろん辞めることも簡単ではない。ただ、それとは違った筋肉で、とにかく続けることは恐ろしいほど難しい。

ふと今日の午前、このことを自分ごととして捉えてみて、ソングライターである自分が曲を書くことのインパクトを改めて考えた。とんでもないグルーヴを持つドラマーでありながら、月曜に二日酔いで白紙のエクセルを眺めているSIer。絵も描けて曲も作れるギタリストは、職場でバカなお局様に嫌味を言われている。セクハラで降格した上司の代わりに駆け回る、古今東西たくさんの音楽を吸収したフジロッカーのベーシスト。少しずつ動きが鈍くなってきたおれたちのレーベル。生活の中に、バンドマンたちは潜む。両手両足からとんでもないものを生み出すのに、不慣れなことをして家賃を確保している。Youtuberがわめく「好きなことで生きていく」とかはただのポジショントークだべ!って思うけど、この状況は、いったいどうしちまったんだ。

ただ、新しい曲を作ることで、生活に少しだけ音楽が戻ってくるかもしれない。おれたちは何度だって、聴いたことがない組み合わせを試したい。

辞めたやつ、消えてったやつ、止まったやつ、オレが曲をかけばまた針が動き出す。曲をかけば、ほんのすこしだけ新しい需要を生み出せる。そこは、オレか誰かがなんとかする。そうして、生活に音楽を取り戻す。何をしていても、曲に合うフレーズを考えていた日々を。

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