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岩魚の燻製ができるまで

9月22日、23日の2日間かけて岩魚の燻製を作ってきた。
「山のもの」を販売する会社を作って、今年1年やらないといけないことが、自分の生産力はどれくらいなのか?を知ること。山菜はどれくらい採れるのか、魚はどれだけ釣れるのか、採った数、釣った数から逆算して、どれくらいの収益が望めるのか。これらは続けていけばいくほど力が強まっていくし効率も上がっていくだろうけど、現時点での自分の力を知らないと、今後どう成長していくのかも予想できない。そこまで堅苦しく考えているわけでもないのだけれど、そんな感じで暇があったら魚を釣ってきた。結果2022年は約100匹、山からいただいた。

釣った魚は燻製にして販売することに決めていた。魚を販売する選択肢というのはそこまで多くない。燻製にして販売する、生のまま販売する、その他。その他に何があるのか正直わからないけれど、量が多ければ醤油を作る、みたいなこともありえるんだろう。でも数が多くとれないし、1匹1匹をより感じてもらいたい、と思うとより日持ちがする燻製という選択になる。僕のマタギの師匠も燻製にして宿のお客さんに出している。もちろんそれも大きな決め手の一つだ。

ほんとうは自分で燻製をして販売できればいいのだけれど、残念ながら商品にするには保健所の許可を得た施設での処理が必要だ。燻製1本で食っていこうと思っていない僕にとって、保健所の許可がとれる施設を借りて、設備を用意して、そこで燻製を作るという選択は厳しい。となると、おいしいものを作る力がある燻製屋さんにお願いするしかない。そこでお声をかけさせていただいた燻製屋さんが「燻製屋猫松」さんだ。

あまりに長くなりそうなので、猫松さんの詳しい話はおいておく。ただただおいしい燻製ができる人であり、できる場所である、ということだけ知っておいてもらえれば。
実は今回より前、今年の夏、猫松さんに岩魚の燻製を作ってもらった。すごくおいしくて食べやすい岩魚をつくっていただいたのだけど、実際どんなふうに自分の釣った岩魚が燻製にされているのか?おいしさの秘訣はどこにあるのか?猫松さんは何を考えて燻製を作っているのか?これらを知らないのに、お客さんに自分の商品を勧めることはできないなと思い、今回岩魚の燻製づくりの製作を手伝わさせていただいた。拙い写真でわかりづらいところもあると思うけれど、おいしい岩魚の燻製ができる過程をみんなに知ってほしい。

・・・

「1日目」
釣った魚は冷凍してある。持ち帰った魚をひとつひとつラップに包んでジップロックに入れて冷凍保存するからだ。塩水に漬けるためにぐるぐる巻きになったラップを剥がしていく。

冷凍岩魚。

容器に魚をずらっと並べる。この容器に塩水を入れる。
塩水の濃度は3%。岩魚をその塩水で24時間浸す(この日は自分の時間的な都合もあって20時間)。1日目はこれで終わり。途中岩魚をひっくり返したりしながら(岩魚全体に塩水が行き渡るように)、ただひたすら塩が岩魚に染み込むのを待つ。

ずらっと並ぶ岩魚。
塩水に漬ける。

「2日目」
塩が染み渡った魚を乾かす。マタギのやり方だと、風当たりのよい場所に半日ほど干すが、猫松さんでは熱で一気に乾かしていく。
燻製をつくる「くん太郎」という装置に岩魚を入れていく。この「くん太郎」という装置がとても近未来的でよい。くん太郎の底に炭を置き、ガスバーナーでゴオゴオと炭を燃え盛らせる。やりすぎると岩魚が燃えてしまうが、火が弱いと乾燥にかなり時間がかかってしまう。すごく加減が難しい。
そしてこの「乾かす」という作業が燻製の工程の中で最も重要なのだという。十分に乾ききっていないと、燻製の煙と水分が反応するのか、味が酸っぱくなってしまう。実際自分が自宅で作った岩魚の燻製がかなり酸っぱく出来上がってしまったのだけど、「乾かす」作業が全然足りていなかったからだという。

近未来的装置。
くん太郎といいます。
くん太郎に岩魚を入れていく。
岩魚を炭で乾燥させる。

岩魚が燃えすぎないように注意しながら乾燥させる。するとだんだん岩魚の表面のぬめりがなくなってくる。ほぼ完全にぬめりが消えるまでくん太郎での岩魚のサウナは続く。ぬめりが完全にとれるまで約3時間かかった。
完全に乾いた状態になった岩魚に桜のスモークチップで香りをつけていく。ここまで来ればほとんど失敗することはなさそうだ。熱くなった炭にスモークチップをかけて、くん太郎で密閉。しばらくすると煙が出なくなるので、スモークチップを追いがけする。これを4、5回繰り返し、好みの色合いにしていく。
こんなふうにして岩魚の燻製を作っている。

少しずつ色がついていく。
出来上がった岩魚の燻製。

こうやって岩魚の燻製を今年は100匹ほど作らさせてもらったわけなのだけど、作るたびに課題も残る。いつまで経っても商品化しないんじゃないか、と思うほど。笑
例えば塩、もうちょっといい塩を使ったら何かが変わる?スモークチップ、業者から仕入れたものではなく僕が山から頂戴したものではどうか?魚の吊るし方も魚の身にブスッと針金を刺すのではなく、エラの部分に紐をかける伝統的なやり方を踏襲した方がうまくいきそうではないか?全部こだわるとなると、どこからどこまでを誰がやってどれくらいのお金がかかりそうか?真空パックだと穴が空いてしまう可能性があるのでヒートシーラーで包装してみたが、中に水滴が出てしまう・・・などなど。
ひとつひとつ工程を経験させてもらうことで、具体的にここをもっとこうしたい、というアイデアが生まれてきた。もっともっと改良した姿にしてみなさんにお届けしたい。

そして、今回作った魚たち。お裾分けであげた分もあるけれど、まだ30匹以上ある。味は超おいしいし、この魚たちどうする?と考えて、友達のところで日本酒を呑む会を開こうということになった。すぐに告知すると思います。ご興味のある方いらっしゃれば注目しておいてください。

ということでいつも通り長々と失礼いたしました。こんな感じで岩魚の燻製を作っております、というレポートでした。いつの日かみんなに食べてほしいです。

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