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熊の皮をどうするか。

水曜日はなんとなく自分の商品の紹介をしようかなあという気分になる。書くことが完全に枯渇するのがこのタイミングなんだろう。ここまでの自分がちゃんと何かを作っているからこそこういうことができる。ということでいざ紹介。

来週あたりから「熊のかけら」という、熊の革のキーホルダーを販売しようと思っている。2022年は自分の事業をはじめた年で、なにもかもが試行錯誤の日々だった。熊撃ちの文化のある、僕の住んでいる地域では、かなり日常的に熊が手に入る。日常的と言っても毎日のように熊が檻に入るというわけではなく、他の地域と比べて相対的に熊が手に入りやすい地域だということ。

移住した当初から熊の皮を革にして販売するということは、なんとなく自分の中でのやりたいことの一つだったのだけど、なんといっても僕にはレザークラフトをする技術がない。見よう見まねでやることはできるだろうけれど、熊の皮をひとつ鞣す(なめす)のにかかるお金は送料などの経費込みで20000円ほど。たしかにネットで熊の革を使った商品を販売している方は、小さなガマ口財布を一つ2万円ほどの値段で販売していた。それくらいの値段で販売する価値があるものだと思うし、それくらいの値段で販売しなければ商売として成り立たないというのもあるのだろう。でも、レザークラフト超ど素人の僕に、そんな値段がつけられるようなものを作れるわけがないよなあ、と思い、どうしたらいいのかなあ、とずっと考えていた。

で、2022年に自分の事業をはじめることを決めて、どうなるか分からないけど、損してもいいからとりあえず鞣してみよう、と決めた。東京に山口産業さんという会社があって、そこに塩揉みした熊を送った。2ヶ月後、熊の皮は革になって届いた。

頭と手足は切り離した状態で送るので、このような形で届く。
穴が空いているのは銃弾もあるが、皮から肉を削ぐときにミスって皮に穴を空けてしまったから。

この革が届いた時点で、こういうものを作りたいというアイデアはあった。それは、熊の革一枚を存分に使った熊革バッグ。レザークラフトの本を、本屋で片っ端から見て周り「これいいじゃん!」と思ったバッグだった。そのバッグは革を身体にまとわりつけているようなデザインで、熊を纏うような雰囲気があった。
そういうデザイン性があり、かつ一頭の熊からできる唯一無二のバッグとして作れば、きっとほしい人がいるんじゃないだろうか(いや、むしろ僕がほしい)と思って、さっそくその本通りに作ってみることに。
展開図もあったので厚紙を使ってサイズ通りに熊革を切り出そうとしてみる。でも、どう切り取ってもそのバッグに必要な分の革が切り出せそうにない。この熊一頭では足りなかったのだ。そのときの僕には、レシピよりも小さいサイズのものを自分で寸法を考えて作ってみる、なんて発想はなかった。「無理じゃん!どうしたらいいんだろう」とただ呆然と出来上がった熊革を見つめることしかできなかった。今考えると、すごく貧弱だなと思う。作れたぞ、俺よ。

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それでも頭の中は熊革のことでいっぱいで、「予定とは違うけど、とりあえず作れそうなものを作ろう」と教科書の中でも簡単そうなポーチのようなものを作ってみた。それがこれ。

ポーチ。あまりにシンプル。

作ってみたはいいけれど、はっきり言ってこれを作ってもどうにもならないな、と思った。これなら熊の革じゃなくてもいい。ふつうの革ではできないようなことを考えたい。もちろんそこには僕にレザークラフトの技術が全くない、ということもある。技術で付加価値をつけられない分「この革は熊の一部だったんです」ということをしっかり伝えないといけないなと思ったのだ。同時に、これはいずれ、プロにやってもらわないといけないことだ、とも思った。僕が使い切るより、プロに使ってもらった方が熊も喜ぶだろうし、お客さんも喜ぶ。この一枚は僕が責任を持って使い切るけれど、2枚目、3枚目と鞣してもらった熊の革が、当たり前のようにプロの手に渡る世界になったらいいな、と思った。今では、この思いがかなり強まっている。

・・・

またそこから月日が経ち、どうしたもんかなあ、と考えているときに、「アイコで糸を紡ぐワークショップ」に出会う。アイコというのは山菜を採る方だったらもちろん知ってる、超おいしい山のたべもので、このアイコの繊維から糸を紡ぐのだという。詳しくはこちらにレポートを書いたので、気になった方は是非読んでいただきたい。

このワークショップで、僕が普段から採っている山菜たちが、食べる以外に糸として生まれ変わるという、かなりとんでもない体験をさせていただいた。そして、その体験から、「このアイコ糸を使った熊の革商品を作りたい!」という気持ちが湧き起こってきた。このワークショップに参加したところから、僕の熊革に対する考え方も変わりはじめた。明日に続きます。

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