読まないより読んだほうが山菜がおいしくなる本、製作中。

はじめてじぶんのことばを印刷してみた。それがなんだかすごく良くて、まだ何にもなってないのだけど載せてしまう。

山菜に関することで小さな本を作ろうと思っている。インデザインの7日間無料期間中に、どのような構成にしようかビシッと決めよう、と。
最初は下処理の仕方や保存方法などをまとめた本にしようかしらなどと考えていたのだけど、正直気が乗らなかった。なんでかなあ、と考えていると、そういう文章って探せばいくらでも出てくるからかもしれない、と気づいた。情報を僕が書いたとしても、その探せばいくらでもあるところから引用しているのだし、僕のあやふやな文章では「ほんとに大丈夫なの?」と余計に心配になるだけなんじゃないか、と思ったりもする。それなら最初に「この本には情報を載せておりません」と、断りを入れておけば納得してもらえるだろう。どっかで見てください、と。それよりも、もっと伝えたいことがあるはず。自分が採ってきてるんです、ということももちろんあるのだけど、もっと大きな何かがあるんじゃないか。

そうやって色々考えていると、学生のときに村上の春樹さんの何かの本で読んだ「カキフライについて」というちょっとしたエッセイにいたく感動したことを思い出した。ちょっと調べると僕と同じように感動した人が世の中にはいっぱいいるらしく、そのエッセイが「雑文集」という本の中に収められていることがわかった。うろ覚えで申し訳ないが、その「カキフライについて」のどこに僕が感動したのかを簡単に書く。

例えば就職活動のときに自分のことを説明してくださいと言われて、紙とペンを渡されたとしても、的確に自分のことを文章で表現するのは難しい。でも、大好きなもの、例えばカキフライについて書いてください、と言われたら、原稿用紙4枚なんてすぐに書けますよね。そのカキフライとの距離感だとかもっといえばカキフライをどのように表現するかだとか、そういったところにあなたが否応なく表現されるんですよ。それはすなわち自分を説明していることになりませんか?
というようなことが書かれていたと思う。その後春樹さんとカキフライの関係について書いた文章が続き、締めくくられるのだけど、当時の僕は、なんて最高なんだろうこの人の考え方と思ったのだった。今でも当時の僕に共感できる。最高だよね。
そのときの僕も、やっぱり文章を書いていて(友達との交換日記や、noteでブログなど書いていた)、カラスについて書いた記憶がある。それが自分を説明する文章になっていたのかどうかは分からないけれど、今でも覚えているくらいなのだから、やっぱり自分にとって特別な体験だったのだろうと思う。
カラスについて書いていた時の僕と、今の僕とで大きく違うのは、伝えたいことの有無という点なのかもしれない。カラスの文章は誰にも見られないでもいい。でも山菜についての文章は、まだ書けていないけれど、山菜を買ってくれた人には読んでもらいたい。その文章を僕が「嘘をつくことなく」、「かっこつけず」、「誠実に」書くことができれば、読んでくれた人たちに「阿仁」という場所で生きている自分のことや、その手で採られた山菜のことを、より深く実感してもらえるんじゃないか、と思っている。

ということで、とにかくサクッとふきのとうについて書いたのが上の文章。印刷がうまくいかなくて見切れてしまっているのだけど、こんな感じになった。もちろんこれからまだまだ変わっていくとは思う。でも基本的な方針が決まったので、とりあえず原稿なるものを書き溜めていこうと思った。

さあ、しかしここからが問題。これを読みたい人間がいるのか?ということ。とりあえず誰にどう思われるかということを無視して考えを進めてきたけれど、これをゴミだと思う人もいるだろうな、と思うと山菜箱の中にこれを同封するのは躊躇われる。読みたくない人にこれを無理やり読ませるのは嫌だし、さてどうしよう。

と、言いながらも書くと思います。あ、「読んだほうがいい本」というタイトルにしようかな。そんなに長くならないだろうし、きっと読んだほうが山菜が食べたくなるだろうし、より山菜たちが魅力的に思えるはず。読まないよりは読んだほうが山菜がおいしくなる本、みたいな長ったらしいタイトルもいいな。
自分のことばにそんな力があるとは思わないけど、山菜とそれを支える山にはそれだけの魅力があるはずだから、そこをしっかり僕が捉えられていれば伝わるはず。うん、大丈夫、頑張る。

という感じで山菜本の進捗でした。まだもうちょっと時間があるので、焦らずゆっくり書き進める。そしてできれば今から知識を入れるなんてことはせずに、これまでの山菜たちとの関わりを丁寧に拾っていく作業をしていこうと思う。きっとたのしい作業になる。

ということで読んでくださった方がいればありがとうございました。1週間、早いぜ。

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