【ネタバレ有】ウィッシュ 生田絵梨花ありがとう

100周年記念のエンタメ映画

ウィッシュ吹き替え版見てきました。
個人的にはそこまで刺さるものはスター以外なかったのですが、今回の作品について感想をば。
割と酷評もあるので嫌な方は他の人のレビュー見てください。

2Dと3Dについて

今作はディズニースタジオ100周年の記念作品でもあり、2Dアニメーションへの回帰があると謳われていたものですが、この面で言えば残念ながらさほど2Dアニメーションの良いニュアンスは感じられませんでした。
背景は多少はそれっぽかったのですが、書き込みも少なくて単調に見えます。
ディズニールネサンス時代、美女と野獣やノートルダムの鐘などで背景に3Dを差し込む試みが為されていました。
これはアニメーションに合わせて2D背景では難しかった角度調整ができ、画面に広がりを生む画期的な技術でした。
今回は3Dアニメーションの背景に2Dニュアンスを加える全く逆の試みになっており、2Dテイスト特有の「角度変更の難しさ」「広がりのなさ」という悪い面が出ているような印象ですね。画面が悪い意味で一枚の絵に見え、その奥を感じづらかったように思います。

ストーリーとキャラクターについて

ストーリーは正直薄味でした。
これはキャラクターの掘り下げがものすごく浅かったことが要因かと思われます。
優しいはずの祖父サビーノがアーシャにブチギレて追い出す場面はその他の場面と比較しても不自然ですし、善人だったと描写していたマグニフィコ王がヴィラン思想になった理由も描写がなく希薄です。

特にこのマグニフィコ王の思想については、アナと雪の女王で一切語られなかった「エルサが魔法を使える理由」に似ています。
無印アナ雪で全く触れられず「で、なんだったの?」という消化不良を起こす要因でもあった悪い部分がウィッシュにも感じられます。
彼の際立って言及できる部分はナルシストな部分だけでしょう。こんなんノートルダムの鐘2で見たわ。OVAのチョイ役と同じ枠に収まるんじゃないよ。

このマグニフィコのヴィランとしての深みがなかったことがヒロインのアーシャにも影響しているように見えます。
マグニフィコがスカスカヴィランだったせいで、このヴィランに対峙するアーシャもしょーもなヒロインに見えてしまうのです。
アーシャは頑張っています。頑張ってるんですが、マグニフィコが「なんかとりあえずぼくが考えたすげーつよい悪役」であるが故に没入して応援しづらい。魅力あるキャラクターではありますが、ヴィランとしては正直役者不足でしょう。

ただ一人、この凡人まみれの映画の中で一際輝いた存在だったのが「スター」です。これはキャラデザもモーションもすべてが本当にかわいらしくて、何も喋らないからこそミステリアスな素晴らしい存在でした。スターが主役のアニメと言ってもいい。
マグニフィコに憤って飛びかかろうとする正義感や、様子がわからない中腕だけ外に出してムチャクチャをする場面などは主人公たりえる共感がありました。
観客の気持ちと主人公の行動が同調すると没入感が出るのですが、スターはまさにそれ。「私達もマグニフィコを一発殴ってやりたいんだ!」という気持ちを代弁してくれるのはアーシャではなくスターでした。
スターを主役にしていれば、もう少し面白い作品になったんじゃないかなぁと素人目ですが感じますね。
多分これ、キャラクターの掘り下げが希薄すぎて「ロサスのことをよく知っている前提で動くアーシャ」より「ロサスのことをよく知らないスター」に感情移入しやすかったんじゃないかなとも思います。

吹替版配役について

正直映画を見るまでは吹き替えの配役について不安がありました。
事前広告でのアーシャ役の生田絵梨花さんの演技に若干の不安があり、話題性のためだけにアイドルを起用したのかな、福山雅治もそうだろうな、というような冷めた気持ちで、でもまぁ福山雅治のヴィランには興味があるぞと思い吹き替えで見に行きました。

この配役が大正解でした。
先程から言っているように、この作品はシナリオが希薄で、そのぶんエンタメにかなり寄せた形になっています。
だから「エンタメ」という側面でトップに立つカリスマが必要だったんですね。
つまりアーシャの吹き替え声優はアイドルがやるべきだったんです。
この点生田絵梨花さんはアイドルという側面、歌唱力の面が申し分なく、アーシャを彼女がやってくれたことでアーシャが生かされたのを感じます。
また福山雅治もマグニフィコの欠けているカリスマ性をエンタメ性と共に補ってくれる配役だったと言えるでしょう。
ミュージカル俳優なんかにこれをやらせたら大変なことになっていたんじゃないでしょうか。多分単純におもんない映画にしかならなかった。

ディズニー好きとして

100周年作品らしく、ウィッシュには様々な過去作品のオマージュが盛り込まれていました。
この件については見つけるたびに涙が出るような気持ちで、ストーリーに泣く要素はなかったのに結構泣きました。
特に森の中のシーンはもりもりすぎて頭がおいつかないくらい!
劇中歌の場面で多かったような印象ですが、これはコマ送りで見ていかないと全部は見つからないんじゃないでしょうか……。
このへんが多すぎて最初はマグニフィコのモデルがウォルトなんじゃないかと疑いましたね……。見てるとちょっと違いそうですが。

総括

ウィッシュは100周年を飾る作品としては申し分ないとは思いますが、特にメチャクチャ面白い作品ではなかったかなぁ。
それはそれとして、私はスターが本当に好きになってしまったので、出来の良いぬいぐるみが発売されるのを待とうと思います。


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