村上隆こえr

村上隆のスーパーフラット・コレクション

アーティスト村上隆のスーパーフラット・コレクションがいい(横浜美術館2016年4月3日まで)。明るくて静謐なリー・ウーファン、最大出力のアンゼルム・キーファー、可愛くてにぎやかな奈良美智など数百点が、村上隆を通して、私たちに新たに提示される。

美術館のロビーにはいるとスチール枠の巨大なガラスケースが3つ見えてくる。村上隆がコレクションしているアンゼルム・キーファーの作品である。正面は胴体着陸した小型飛行機の廃墟?(作品名:メルマガ、2010年)。左側の10mを超えるガラスケースは情報の廃墟か?(作品名:神殿崩壊)右側のガラスケースは焼かれた本から芽吹いたセフィロト生命の樹。いままでのキーファーに感じるブラックホールのような闇やメッセージ性を超える強い出力のキーファーが、村上隆によって提示される。

キーファーの後ろにリー・ウーファンの作品と一体となった白い空間が設えてある。しかめ面ではなく、別次元につながるような透明性と明るい静謐なリー・ウーファンが現れる。

チケットを切ってエレベーターで2階にあがると、小さな移動式の馬車仕立ての部屋がある。窓からみると奈良美智の作品で埋め尽くされている。かわいい!そしてそれぞれの絵がしゃべっていてとてもにぎやか。こんな奈良美智はみたことない!

展示室に、奈良美智の「ハートの火をつけて」という、妖精のようなこの世のものとは思えない女の子を中心として、小出ナオキの作品とクララ・クリスタローヴァの作品とのコラボレーションをした空間がある。まるで、一緒に暮らしているような、村上の中でしか起こりえない作品相互の関係性を感じる。また「ハートに火をつけて」の妖精が手に持っている火と、鑑賞者が交錯するのを見ていると飽きることがない(写真)。他の作品でも作品の中に鑑賞者が知らない内に取り込まれている。

この展覧会は普通の展覧会ではない。村上隆というアーティストの明るくてダイナミックな身体空間の中に私たちもはいってしまって、彼が感じ、彼の目を通したアーティストを見るのである。

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