キロクニスト養成講座、1回目の記録

2015年4月3日

デジタルアーカイヴ・コーディネーター熊谷薫×ロフトワーク

講座のネーミングがステキなので参加する気になった。そして昨年6月から今年の2月まで参加した思考と技術と対話の学校の基礎講座で感じたことが、動機になっている。学校では、アーティストやコーディネーターが当事者として語った2時間半とモデレーターを立てた異種格闘技形式座談会をそれぞれ800字、2000字程度でまとめる課題がでた。私の基本は、決して批判しない、一番強く感じたことをコアにして率直に書く、語った方が読んだとき、いやな気持ちを抱かない、スピーカー自身の新たな気づきにつながるように書く、人に語るときにそのアートプロジェクトを伝えるために最低必要な情報を入れておく(フルネーム、空間の大きさ、運営側と参加者両方の人数、どのくらいの時間か、全体が盛り上がっていくプロセス、私のポジションなど)、などである。

そして同時期に経験するチャンスがあったアートプロジェクト、イベント、展覧会などについても感想を記録した。50を超えたころから、「他の人たちと気づきを共有し、それを見える化したい。」「そこからスタートしてアートプロジェクトを社会化し理解できる形にしたい。」と思い始めた。しかし、今の私のキロク方法は重過ぎる、何かいい方策はないか?・・・・長くなったが、これが、キロキニスト養成講座に参加したモチベーションである。

会場にはいると30人ぐらい。明らかにやる気の高い人たちの集まりで期待できる。熊谷さんは、「実践と記録は二重螺旋の関係」、「プロジェクトを残すための、プロジェクトと並走しつづけるキロクとは?」との問いかけながら、アーカイブを活用する立場からその価値や役割を語るところから始めた。

プロジェクト(活動)の姿とコアをキロクすることで、キロクはプロジェクトに価値を与える入れ物になる。みんなが見えるところに残そうと努力したアーカイブが資源になる。現代のキロクは様々なレベルのコミュニティづくりを推進するツールである、など。そして目的意識がはっきりしたアーカイブが俄然魅力があることがわかってくる。バーチャル美術館をつくれるようなキュレーターが利用しやすいGallery Systems、ヨーロッパの美術館がグーグルを怖れ貴重なアーカイブを出し合ってつくったEuropeana@Pinterest、吉本隆明183講演など。

いよいよワークショップ。隣の山上さんとパートナーになり、相手の5W1Hを聞き書きする。山上祐介さんは3Dプリンターの医療利用の最先端ベンチャー。歴史好きが高じて、司馬遼太郎の「街道を行く」を実際に旅行しながら、その続きを40年かけて書こうという壮大なプロジェクトを持って参加されている。

自分の考えていることを自分以外のスクリーンに映し出してみることで新しい発見をする試みといっていいだろう。また山上さんが私の話のどこを拾ったのか、大変興味深かった。悩みもこの形なら共有できる。私が語った「アートプロジェクトがつくる対等でなめらかな世界を見える化するため」にキロクしたい、が記録されていてうれしくなる。「いつキロクの作業する?」が、きちっとメモされていて、山上さんの関心の一端が示される。私は次の通り。当日は一番インパクトがあり、自分を支配しているフレーズをキロクする。次の日に膨らませる。3日目が一番文章がでてくる。1週間たつと客観化されるので週末に頭から書き換える。コミュニケーションする相手がいれば、特急で仕上げるなど。

最後はお悩み相談コーナー。トップはセキタケヒコさん。仕事で選び抜いて参加するイベントが年間500あり、写真と音声の記録をどうまとめるか?

おもしろかったアドバイスは、イベントコンシェルジュをめざしたらどうか・・・セキさんのオススメ度を予定を公開してがわかるようにしたら・・というもの。どこに行こうか迷っている人向け人気サイトに成長する予感が会場内に満ちる。

吉田さんは、キロクされるのが苦手。逃げ回っている。人のプライベートを発信しようとするとき、どうしたらいいか?この問いかけは抜群だとおもった。

講師の一人中田一会さんは「その人の人生にとってプラスになるような発信をする。」といわれた。公開しなければ、というストレスに対しては、仲間内のクローズドな空間で限定的発信(ピクシーなど無料アプリ)でスタートし、すこしづつ広げるアーカイブもあるとのアドバイスがあった。相手を安心させなければプライベートは発信できない、一度失敗すると取り返しがつかない、と思われた。

講座後、熊谷薫さんにアートプロジェクトで生れたもの、特に参加者の中に生れたものをスクイとりたいが、熊谷さんはどうされていますか?と聞いてみた。

とてもヒントになる答えだった。◎短い3行ぐらいの文章からでも、ごくありふれた記録からでも、そのときの熱気を感じることができる。そういったプロジェクトは、ちゃんと継続されている。◎担当した人たちで、しばらくしてからどこが良かったか、感想を出し合う。振り返りで盛り上がって、それを記録することでキロクになる。◎参加者が「良かった」と感想を言える場をつくる。その場を参加者がまわして行けるような仕掛けをつくる。「自分が場をつくって、運営をコントロールする」という担当者がででこないとだめだけど・・・。

すぐにでもトライしたいのは、アートプロジェクトの熱を伝え方を変えてみること。複数の人の短い言葉のキロク方式。「何が良かったですか?」一人で参加した場合でも、隣の人に聞くようにし、複数の意見を集めてみる。仮想会話方式で参加者の感想や担当者の盛り上がりをキロクしてみる。それから、今までつくってきた50余りの記録を、企画側、コーディネーター側(すなわち私が目指すポジション)から使いやすいように整理しキロクにする。

この講座で勉強したいと思うのは、整理したものの情報発信方法とインターネット上に感想を発信し合えるコミュニティの立ち上げ方法。ロフトワークスのオープンCUも、申し込みから感想の発信までリンク可能なコミュニティだ。どのように力を発揮するか楽しみである。

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