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塩田千春の赤い糸に迫る
森美術館で、塩田千春の作品に触れたとき(2019年10月27日まで)、私の中の毛細血管すべてが他者の毛細血管に繋がっていく世界のイメージを残した。そして衝撃と同時に内面に深く入ってくる何かを感じた。その正体は、次のような言葉の集合体から連想拡張されるものだった。(展覧会カタログのアンドレア・ヤーンとの対話から塩田千春の言葉を拾った。)
「じっくりと落ち着ける私一人だけの居場所」「現実に対する自分
石田尚志、ライブ・ドローイングの興奮
2015年5月5日
横浜美術館の池との間の前庭は、3人のアーティストのライブ・ドローイングのために20m角に白いビニールシートで切り取られ、それが美術館の影でくっきりと半分に割られている。パフォーマンスの中心は美術館で大規模な個展を開催中の画家であり映像作家の石田尚志(たかし)。石田のためにV字のロードがロールペーパーでつくられている。
0 JUN、小林正人の2人の画家は、急遽石田から参加を要
石田尚志、どこまでも描き続けたいという遊びのような衝動が生む希有な作品
2015年5月4日
画家で映像作家の石田尚志の初めての大規模な個展「渦まく光」が横浜美術館で開催されている。身体の中から音楽のように湧き出る「フレームを超えてどこまでも描き続けたい、という欲望」が、絵をスピードをもって描き進めながらコマ単位で撮影する「ドローイング・アニメーション」という手法を生み出した。
10,000枚の絵をコマ撮りして19分間の作品をつくるのに数年間かかったという映像作品「
ワタリウム美術館、石川直樹+奈良美智で自分の地図を塗りかえる道行き
2015年5月4日
ポップアート作家奈良美智と写真家石川直樹が、青森、北海道、夏のサハリンまで次第に足を伸ばし、「かつて自分が立っていた場所さえも全く違って見えた。」という、石川の言葉が示す旅の写真と道行き「to the north,form here」が、外苑前ワタリウム美術館で展示されている。
奈良も「今まで自分がいた場所からどれだけ動くことができたのか。確実にわかることはひとつ、そこより
線を聴くアート展、銀座メゾンエルメス
2015年5月3日
鯨津朝子(Tokitsu Asako)の「32本の線」。
3層吹き抜けの銀座メゾンエルメスフォーラムの空間、壁天井一杯に木炭で自在に線をほとばしらせる。線の交点がフッと消えている。空間の真ん中にあるマンガ・ポッドというアトリエ・ワンが制作した木造ラックに、その線が移し替えられている。ラックに移し替えられた線に目を合わせて、壁に描かれた空白を埋めるように見ると、ピタリと連続す
アーティストたちが語った「他人の時間」に向き合う手掛かり
2015年4月12日
東京都現代美術館の写真展「他人の時間」アーティスト・トークに参加した。
その中で、強烈に「他人の時間」に向き合う手掛かりを提示したのは、mamoruさんだ。「いいですか?・・・アイフォンの着信音!・・・」その言葉で、様々な着信音が参加者に聞こえたはずだ。私は、今ココ(でトークを聞いていること)をリアルに感じることこそが、他人の時間に向き合う手掛かりである、と思った。自らを
大友良英 音楽と美術のあいだ
2014年12月5日
NHK「あまちゃん」の音楽で一躍有名になった大友良英の作品、quartets(山口情報センター(YCAM)2008委嘱作品)を、東京オペラシティ・NTTインターコミュニケーションセンターICCで体感する。
大友は1959年生、音楽をスキルにもちながら様々なレベルでの芸術融合、芸術とメディアの融合、アートプロジェクトを試みるエンターテナーである。暗い大空間の真ん中に置かれた
奈良原一高、長い物語を読んだ後のような自問自答を呼び覚ます写真展
2014年11月30日
奈良原一高の写真展「王国」と「人間の土地」両方を東京都国立近代美術館で見る機会に恵まれた。
20代の奈良原がインスピレーションを得て、社会から隔離された場所を1950年代に映しとったものである。「王国」で映し出されたのは、北海道当別のトラピスト寺院。全て神とともにあり、心の中にもプライベートがない。靴でさえ、自分の足型で木を削りだしてつくる自給自足。足音と聖書をめくる音