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連続小説MIA (84) | Chapter Ⅴ

当時、ベンは僕が下宿しているオーナーの家にもしょっちゅう来ていた。勤務先が休日の昼下がり、買い物にも出かけず、家の裏口にあるテラスでひとり、ビールを飲んでいたときのことだ。携帯電話にベンから着信が入る。「やあ、何してるの」「オーナーの家の裏口でビールを飲んでる」「はは、いいね。近くにいるんだけど行ってもいいかな」「平日だよ、学校は?」「今週から休暇だよ」「そっか、そうだったね。了解」テラスからは芝生が広がっていて、時々飛び交う小鳥以外に何もいない。ぽかぽかと良い天気だった。そういえば、何人で来るのかを聞いていなかったな。まあいい。ビールは6本いりのパックごと冷やしておこう。しばらくすると、ベンが顔をのぞかせた。いつものようにクロエと一緒か、あるいはバイト仲間とやってくるのだろう。しかし、予想に反して、オリビアと一緒だった。ぎくりとする。オリビアと会うのは、ベン宅でのホームパーティ以来、つまり嘔吐の夜以来のことなのだった。冷やしていたビールをベンジャミンに渡し、オリビアには冷蔵庫の奥の方で見つけたレモネードを差し出した。なんだか気まずい。いったい何をしに来たのか腹の内を探ろうとしたが、ベンは唯はにかむだけで要件を話そうとしない。オリビアは控えめにしている。無責任に小鳥たちがピチチチ、と鳴いて飛んでいる。鳥のせいにしても仕方がない、いや、そもそも鳥は関係ない。「オリビア、ひさしぶりだね。えーっと、元気だった?」オリビアは、うん、と頷くばかりで目をそらした。僕の英語力が無いことも相まって、会話が続かない。苦しい時間が流れた。

つづく(※平日の正午ごろに連載を更新します)

 (*The series will be updated around noon on weekdays * I stopped translating into English)

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