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7月に買った本、読んだ本

 今月はだいぶ本が増えた。それなりのペースで本を読んだのに、図書館で借りた本もあるために、積読冊数は増えてしまった。積読の山がどんどん高くなってゆく。

買った本
『ヨモツイクサ』知念実希人/著(双葉社)
『未完の天才南方熊楠』志村真幸/著(講談社)
『ノウイットオール』森バジル/著(文藝春秋)
『歩く亡者』三津田信三/著(KADOKAWA)
『アリアドネの声』井上真偽/著(幻冬舎)
『やがて森になる』小谷ふみ/著(クルミド出版)
『異常』エルヴェル・テリエ/著(早川書房)
『巷説百物語』京極夏彦/著(角川文庫)
『かくして彼女は宴で語る』宮内悠介/著(幻冬舎)
『テスカトリポカ』佐藤究/著(KADOKAWA)
『現代語訳 学問のすすめ』斎藤孝/訳(ちくま新書)
『神保町喫茶ソウセキ 文豪カレーの謎解きレシピ』柳瀬みちる/著(宝島社)
『君たちはどう生きるか』吉野源三郎/著(岩波文庫)
『現代SF小説ガイドブック』池澤春菜/監修(Pヴァイン)
『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』済東鉄腸/著(左右社)
『忘らるる物語』高殿円/著(角川書店)
『HHhH』ローラン・ビネ/著(東京創元社)
『習慣と脳の化学』小島修/著(みすず書房)
『輪舞曲』浅井まかて/著(新潮文庫)
『サエズリ図書館のワルツさん2』紅玉いづき/著(創元推理文庫)
『世界でいちばん透き通った物語』杉井光/著(新潮文庫)
『魔術師列伝』澤井繫男/著(平凡社)
『ハンチバック』市川沙央/著(文藝春秋)
『心臓の王国』竹宮ゆゆこ/著(PHP研究所)

 流石にすべてを新刊で買うと破産してしまうので中古で買ったものも多分にあるが、何を新刊で買い、何を新品で買ったかについては明記しない。

読んだ本
 7月で始めに読み終わったのは『パライソのどん底』芦花公園/著(幻冬舎)だ。今までホラーを読んだことがなく、夏になったしホラーを読んでみるか、という気分で手に取った。何か月か前の雑誌『ダ・ヴィンチ』で知り気になっていた本である。初っ端が男性同士の官能的シーンでびっくりした。幻冬舎、こういう本も出せるのか。BLも嗜む腐女子なのでいいぞもっとやれと思いながら読み進めたが本作品はホラー。通常のBL作品とはちょっと違う。ホラー要素は村の因習ものと呼べばいいのだろうか。中学生の頃、「TRIC」(小説にしろ映画にしろ)を好んでよく見ており謎の村とその因習は大好物だったので楽しく読めた。普段、ムーンライトノベルズでしかBLを読まないため、ファンタジーものと現代ものくらいしか分からないのだが、ホラージャンルとの組み合わせは珍しいような気がする。BLとミステリの組合せなどあるのだろうか。

 夏目漱石の『こころ』(新潮文庫)をようやくちゃんと全部読んだ。Quiz Knockの読書会で取り上げるとのことだったので読むことにした。読む前に漫画『おしえて! BLソムリエお兄さん』瀬川ひなる/作(MFコミックス)を読んでしまったので、もうBLであるという視点でしか読めなかった。『おしえて! BLソムリエお兄さん』では1巻と3巻で『こころ』について取り上げられるのだが、とりわけ3巻での解釈が面白いのでぜひ読んでみてほしい。こういう深読みできる人、解釈を自分で生み出せる人に私もなりたい。
『こころ』では全体を通して死の匂いで満ちている。特に「私」の父の死と先生の死が同時に迫りくる場面には緊迫感があり、「私」はどちらを選ぶのだろうと気になって頁を繰るスピードが速まった。手紙を読み終えたとき「私」は列車の中だが、あの後どうなるのかという判断を読者に委ねるところが非常ににくい。

 ホラーといえば怪談だと思い、積んでいた『ラフカディオ・ハーン―虚像と実像』太田雄三/著(岩波新書)を読んだ。私はラフカディオ・ハーンについて何も知らなかった、ということを思い知らされる1冊だった。私たちはハーンに夢を見ており、ハーンもまた日本に夢を見ていた。また、読むきっかけにもなった「ホラーといえば怪談、怪談といえば小泉八雲」の考えの浅さにも身がすくんだ。

 『未完の天才南方熊楠』志村真幸/著(講談社)を読んだ。『ヒト夜の永い夢』柴田勝家/著(ハヤカワ文庫)を先月読んでからというものの、南方熊楠をはじめ、同時期に活躍した研究者に興味を持っている。『ヒト夜の永い夢』には出てこないがNHKの朝ドラ「らんまん」で牧野富太郎にも興味を持ったため、いずれ牧野富太郎についても何か読もうと思っている。『未完の天才南方熊楠』では、南方熊楠は多分野にわたる研究をしながらもそのほとんどが未完であるということに焦点をあてて言及している。特にキノコに関する研究では図鑑を出してもよいほどに収集をしており、海外の研究者にも協力を仰いで研究に取り組んでいたらしい。もしもこうだったら、という南方熊楠の未完の先にある可能性に私たちは夢を見てしまう。『ヒト夜の永い夢』はもしかしたらこのような部分から発想が生まれているのかもしれない。

 『ラフカディオ・ハーン―虚像と実像』と『未完の天才南方熊楠』からの流れで積んでいた『日本人と日本文化』司馬遼太郎、ドナルド・キーン/著(中公新書)を読んだ。この流れを言語化するのは難しいのだが、私の中では繋がりがあったのだ。お二人の対談集なのだが、知らない名前が沢山出てくるわ、ドナルド・キーン氏は日本人以上に日本に詳しいわの刺激の連続で、日本史についてもっと知らないといけないと思わされた。

 ホラーを読もうと思っていたのにあまり読めていない。慌てて『ヨモツイクサ』に手を伸ばした。面白かったし、例のページは衝撃的だったのだが、正直に言うと私はあまり得意なタイプのホラーではなかった。先月に町田康の『口訳 古事記』(講談社)を読んでいたのにもかかわらずタイトルでぴんとこなかった私が悪いのだ。虫が苦手な人は要注意。わりと
しっかりグロッキーで刺激強め。

 私は物書きを目指す端くれであるが故に、人のデビュー作を読むたびに絶望している。松本清張賞受賞作の『ノウイットオール』森バジル/著(文藝春秋)も読んで絶望した。面白い。あまりにも面白すぎる。エンタメとしての完成度が高い。同じ世界での連作短編なのに、五つとも違うジャンルという発想が天才。着地点もそう来るかという意外性があって、最後の最後まで楽しめる。是非とも読んで欲しい。

 『歩く亡者』三津田信三/著を読んだ。ホラーミステリ短編集5編。どうやって解くのだろうという謎の設定が魅力的。きれいに解決したかと思いきや、ぞわりとするようなオチもあったりして面白い。南方熊楠と牧野富太郎を読んだら、柳田邦男も読まなくては。同系統の作品でいくと『准教授 高槻彰の推察』シリーズ澤村御影/著(KADOKAWA)も気になっている。

 『思考の庭のつくりかた』福嶋亮太/著(星海社新書)を読んだ。ごく個人的な見解ではあるが星海社新書は当たりはずれの差が大きい気がしていて少し心配しながら読んだが、『思考の庭のつくりかた』は当たりだった。筆者個人の体験による部分も多いため、本当にそうだろうかと思う点もあったが、人文学に対する捉え方というのをぼんやりと知ることができたのは大きな収穫だ。併せて『人文的、あまりに人文的』山本貴光、吉川浩光/著(本の雑誌社)も読みたい。

 以上のほか10冊を読んだ。来月も引き続きホラーを読みつつ、新刊や積読の消化をしていきたい。

またこんど!


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