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日系投資銀行の就職①<お仕事編>

私は今年就職活動を終えてとある日本の証券会社の投資銀行部門に就職することとなった大学生です。
投資銀行業界はめっちゃ面白そう(まだ働いていないので分からない)なのに、何かと情報が錯綜しやすく謎に包まれていて皆なんとなく避けているのがとても悲しいです。そういうことでコンプラに反しない程度に、皆さんへ投資銀行部門のあれこれをお伝えしていきたいと思っています。
残念ながらセカンダリーのことは分かりませんので何も提供できません。申し訳ないです。ただその分精一杯就職活動で得たプライマリーの情報を共有することで、微力ながら投資銀行部門に興味を持つ方のお役に立ちたいと考えております。


今回はざっくり投資銀行部門が何をしているところなのか書いていきます。
ただここでは、これを読んでいる人が投資銀行部門が株や債券の引き受けを行い、またそのためにM&Aアドバイザリーもするという話をざっくり理解しているという体で話を進めます。分からない人は外○就活ドットコムをよく読んでおきましょう。外資就○ドットコムは結構いい記事多いので是非大学生3年生の皆さんは登録しましょう。ステマじゃないですよ!


○投資銀行部門のお仕事

投資銀行部門のお仕事はプロダクトとカバレッジに分かれています(外資などでは同じチームが一貫して担当しているところも有ります)。プロダクトはざっくりいうとサービスを実行する担当、カバレッジはその売り込みをする営業担当です。まずはプロダクトから説明します。

・プロダクト

投資銀行部門が扱うサービスは主にM&Aアドバイザリー、債券、株式、証券化の4種類です。
ちなみに外資系投資銀行は日本に注力していないところだとM&Aアドバイザリーぐらいしかやっていないところもあります。証券化は外資だとあんまりやっていません(多分)。いわゆるバルジブラケットと言われるところだとアドバキャピマそろっている傾向にあります。日系だとどこも同じくフルラインナップだと思います。
とにかくこれらサービスを執行し提供する部署がプロダクトです。

<アドバイザリー
M&AのアドバイザリーはM&A案件に際し、買収する側と買収される側にそれぞれフィナンシャルアドバイザリー(FA)として就き、会社の価値算定や価格交渉などを行います。M&Aというのは数百億円、下手したら数兆円単位の取引ですから価格の決定は超大事になります。ですから上手く双方が折り合えるように、裁判における検察と弁護士のような形で証券会社(投資銀行)が価格交渉の代理人に就きます。ちなみにM&Aは単に会社を買うことだけでなく事業分割や資本提携なども含みます。最近スピンオフ税制の初適用例がありましたが、あれはどの部署が担当したんでしょうか。某MU○SSにインターン行く人いたら聞いてほしいです。
アドバイザリーは、一般的に企業情報部ないしアドバイザリー部という部署が行います。ちなみに企業情報部と呼ぶのはアドバイザリー黎明期の頃、電話取ったりしたときに「はい!M&Aアドバイザリー部です!」なんて言うとギョッとされたからだそうです。だからふんわりした「企業情報部」という名前を付けたそうで。一般的にIBDというとここを指したりする?んでしょうか。
あと投資銀行が激務というイメージはこの部署のおかげです(多分)。超忙しいです。今だと働き方改革のおかげで月80時間までというルールは厳守されている(案件が走っていない時はもっと短い)ようですが、某野菜証券の方は5年前まで月240時間の残業をしていたと仰っていました…

<債券>
債券の引き受けは文字通りです。会社や政府(まとめて発行体と呼ぶ)が出す債券を引き受けてくるのがお仕事です。債券は銀行借り入れに比べ、金利が低くなりやすい(貸し手が多くて競争が起きる)のと借りられる額が大きい(貸し手が多くてリスクを多く引き受けてくれる)、あるいは固定金利なので現状のような低金利環境では、将来の金利上昇を見込んで発行したいと思う企業は多いくいます。また債券は満期を迎えたと同時に借り換えることがままあるので、案件の数は多くなりやすいのが特徴です。具体的なお仕事としては、シンジケート部という金融市場を超分かっている人たちと協力して投資家が買ってくれるか見極めながら発行体と協議し、起債の時期や額を決めたり、発行体へ日々のマーケット動向の情報提供をしたりします。
債券の引き受けはDCM(デットキャピタルマーケット)という部署が行いますが、サムライ債などは別部署になることもあります。
ちなみに決算前起債はしないので、今回のコロナのような急に現金が足りなくなることがなければ3月や12月はだいぶ早めに帰れるらしいです。

<株式>

株式の引き受けも文字通りです。上場企業の株式を引き受けてくるのがお仕事です。しかし株式の発行は債券と比べてそう簡単にいきません。
そもそも株式とは会社の所有権のみじん切りです。ですから株式の価値と会社の価値はリンクしていて、なおかつ株一つ当たりの価値はみじん切りの多さに依存します。つまり企業の価値がEVだとしてみじん切りがN個だとすれば、みじん切り一つ当たりの価値はEV/Nです。Nが増えたら一つ当たりの価値は下がるのでやめてほしいと皆思います(ちなみにこの説明は本当は嘘です。詳しくはファイナンスの教科書を読んで勉強しましょう!)。一方で調達した資金を成長投資に振り向けて結局EV上がるんだから価値は下がらんよ!と言えれば既存株主は納得してくれて株式を発行させてくれる可能性が出てきます。けれどもやはりその手間の分コストがかかるので、株式での調達は伸びている企業の成長資金や事業拡大のための買収に名目が自ずと限られ、結果債券と違って件数は少なくなります。具体的なお仕事としては、株式の発行がちゃんと企業価値向上に役立つものですよーって説明するために発行体と投資家を行脚したり(ロードショー)、その際投資家への説明するロジック(エクイティストーリー)を組み立てたりなんかします。
株式の引き受けをする部署はECM(エクイティキャピタルマーケット)と言います。転換社債も債券とはいいながらこの部隊が担当します。IPOだと公開引受部なんかも絡んできたりします。あくまでECMはエクイティストーリーや株の販売戦略(どの投資家に売るか・この市況で売れるのはいくらか)というところがメインなので、上場のための資料作りやアドバイスは別部署で行うらしいです。またECMとさっきのDCMと合わせてキャピタルマーケット(キャピマ)という呼称をすることもあります。
ワークライフバランスに関してはよくわかりません。多分アドバイザリーよりは良いはずです。

<証券化>
最後は証券化です。これは会社によってやってなかったりします。アバウトに証券化と言っても色んなサービスがあります。例えば不動産会社向けにREITに関するあれこれをやる不動産証券化や、銀行系証券だとクレジットカードのローンなどの束を一つにして投資家に売却するサービスなどがあります。個人的には時代の先端を行っている商品を扱っている会社もあるので、とっても面白いと思っています。
不動産証券化は不動産ファイナンス部やアセットファイナンス部、債権流動化(ローンを束ねるやつ)はストラクチャードファイナンス部が担当しているはずです。アセットファイナンス以外は銀行系しかやっていないようですので、興味がある場合はそちらを覗いた方が良さそうです。
ワークライフバランスはだいぶ良さげです。しかし新しいサービスを提供する部署なので法制度・税制・顧客ニーズ・マクロトレンドなど、比較的勉強しないといけないことは多いようです。そもそもどのプロダクトもとても勉強する必要がありますが。

・カバレッジ

プロダクトが超長かったですね…。では気を取り直してカバレッジについて説明します。カバレッジはセクター(業界)ごとに分かれて日ごろお客さんとコミュニケーションを取り、その中で資金調達が必要であればプロダクトと連携してデット(債券)なりエクイティ(株式)なりを提案したり、飛躍的な事業成長を目指していそうであればM&Aを提案したりします。それで行けそうであれば最終的にはプロダクトへ引き継いで案件を執行してもらいます。ただカバレッジでも勉強熱心な方だと執行まで付き添うこともあるそうです。またカバレッジがいつも提案営業しているというよりはお客さんとの窓口的役割がメインなので、直接アドバやキャピマが提案することも多々あるらしいです。特にDCMは案件多すぎて直接相談するのが多いみたいですね。某N村証券は資本市場部というものがECM・DCMと別にあり、そこが資金調達のことに関してカバレッジの役割もしているらしいです。基本的にカバレッジをしている部署は投資銀行本部、投資銀行第~部、コーポレートファイナンス第~部と言います。~には数字が入ります。ただ公的機関と金融機関はちょっと特殊なので、公共法人部・金融法人部(FIG)と言ったりします。外資だとFIG(Financial Industry Group)、TMT(Telecom Media Technology)、GIG(General Industry Group)のようにざっくりみたいですね。日系だともっと細分化されていることが多いです。
カバレッジの人たちもワークライフバランスは悪くなりがちらしいです。本当にお疲れ様です。


今回は初回なのでざっくりどんなお仕事かについてまとめてみました。次回は投資銀行業界はどんなプレーヤーがいるところなのかざっくりまとめてみようと思います。
それでは皆さんまた来週!



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