見出し画像

「えっ?金じゃ、ないですよね…?」

私にとって人生初の合コンだったが、ありがたいことに割と楽しめていた。

男性陣も女性陣も、割とみんなお喋りで、先輩を褒め称え、同僚のボケに時にツッコミ、時にフォローし…愛想笑いではない笑いが場を満たしていた。

意中の男性は特に見つからなかったが「合コンはメンツによっては葬式」と同僚から散々脅されていた私は安堵した。

もう、平和に帰れればそれで良いのだ…!(なぜ合コンに参戦した)

場も深まったころ、同僚のひとり(美人ギャル)が

「この前、女子トイレで総務課の○○さんに『キレイな金髪ね〜!』って言われた。あの人、私のこと嫌いだわ」

と愚痴った。

同僚の髪色は金髪ではない。茶髪だ。

同僚は見た目こそバチバチのギャルだが、誰より空気を読み、気遣いの行き届いたナイスウーマンで、私は彼女が好きだった。

また、同僚は当時、メンタル的に元気のない時期だったので、なぜこんな時期に嫌味を言われなくてはいけないのかと、私はちょっと凹んだ。世間は世知辛い。ラブアンドピースはどこだ。


「えっ?」


彼が素っ頓狂な声をあげた。

ぽかんとした表情のまま、彼は同僚に問う。


「金…じゃ、ないですよね…?どちらかというと、茶…………」


ぽくぽくぽく、ちーん。

そんな木魚が聞こえてきそうな間が確かにあった。

彼の同僚たちが「違う、そうじゃない」と言いたげな顔で彼を見つめる。

違う、そうじゃないーーー。

彼のぽかん顔とセリフの間抜け具合がおかしくて、私は思わずツボった。

だって、どう考えたってそういうことじゃないもの笑!

笑いが収まらない私に、同僚が「ふっちゃん、めちゃツボ入っとるやん笑」と声をかけてくる。

彼は「あれ?俺、変なこと言うた😥?」みたいな、困り顔で私を見つめている。

私は優しい気持ちで彼に声をかけた。

「いや、そうやね。金髪じゃないよね。同僚ちゃん、茶髪やよね。ふふふ笑」

世間の世知辛さに凹んだ私の心は、彼の天然発言で一気に回復した。やはり本物の天然は違う。

彼が笑った。心なしか、照れて、嬉しそうな笑顔だった。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?