主婦におすすめの落語
よくお客様に訊かれることがあります。
「落語をまだ聴いたことのない知り合いにどの演目がおすすめか教えてほしい?」
僕はこういう時に必ずその方の年齢と性別を聴きます。細かく分類されるわけではありませんが、年齢層と性別でなんとなくおすすめする落語を決めています。
さて、タイトルの「主婦におすすめの落語」ですが、今は主夫というのもありますが、ここでは女性で30、40代の方というイメージで行きたいと思います。
そして、「落語が初めて」というのを念頭に置いてみるとかなりシビアに選ばなければなりません。だって、初めて聴いた落語が好みでなかったら、その方はかなり落語から遠ざかってしまいますから。そんなことを考えながら三つ選んでみたいと思います。ネタの大きさも大中小で三つ行きたいと思います。まずは小から。
誰が演じるという工夫は無視して、ストーリーや展開を材料に考えたいと思います。
おすすめその一 『宮戸川』(前半まで)
紙入れとか厩火事と悩んだんですが、シンプルに恋愛の話なんで、これにしました。
最初から最後まで笑いが散りばめられているので、飽きずに楽しめるのではないかと思います。
碁遊びが過ぎて、帰りが遅くなった半七が、同じく帰りが遅くなったお花に会う。二人とも家から締め出しを食っている。半七が霊岸島のおじさんのところへ行こうとするが、そこにお花もついてくる。好きだけど恥ずかしい半七と、心は大人のお花、そして世話焼きのおじさんのやり取りが面白いお噺です。
ただ、この噺は途中で切る場合、あまり落語らしい終わり方をしないのでオチを楽しむという意味では良くないかもしれませんね。オチの間際がナレーション(地)で進めていって、終わらせるのも唐突で、オチというものがない。そこだけですね。勿体無いのは。だけど面白い噺ってだいたい途中でバッサリ切るのが多いんですよね。
全部やると最後は怪談噺みたいになりますが、独演会とか、ホール落語でネタ出ししているような時以外はまずそこまでやりません。
おすすめそのニ 『天狗裁き』
この噺はどの世代でも行けそうですが、最初の会話が夫婦から始まって、それが元でどんどん発展していきます。
この噺はシンプルなんですが演者にとってはとても難しい噺です。
「どんな夢を見たの?」「見てない。」
というこのやり取りを、引っ張って引っ張って進めて行き、おかみさん、隣人、大家、奉行、天狗と発展していきます。最後はそのやりとり自体が夢で、またおかみさんが主人公を起こして「どんな夢を見たの?」
と永久ループに持ち込まれるという、周りオチという終わり方になっています。
この堂々巡りというか話が平行線になるものって面白いんですよね。
この噺を主婦の方におすすめしたのは、多分家庭でも同じような状況があると思ったからです。僕にもあります。家でカミさんと話が噛み合わないことってあるんです。だけど、側から見るととても滑稽な場合ってあるんですよね。
この噺、実にそういう風に出来ているのでオススメです。
おすすめその三 『幾代餅』
最後もやっぱり恋愛ものになりましたね。
ほぼ同じ噺で『紺屋高尾』というのがありますが、僕はこっちが好きです。
この噺は一言で言うと映画の『タイタニック』です。あるいはドラマの『やまとなでしこ』です。
今一番トップの吉原の花魁(おいらん)に搗き米屋の清蔵が惚れてしまう。高嶺の花をどう口説くか。
やり様によってはかなり重々しく出来ますが、僕はカラッとやりたいタイプです。だけど、カラッとやりつつも、この花魁の重厚さは欲しいですね。
以前、二つ目勉強会でやった時に「君の花魁は町娘みたいだねw」って言われてから、かなり意識して花魁を作る様にしています。
実話を元にしていますが、とてもロマンがあって良いですね。
というわけで「主婦向け」を意識して選んでみました。三つに絞るのは難しいし、他にもたくさんあります。
だけどここは頑張って三つにしてみました。
まずはこちらから聴いてもらえると落語が楽しめるのではないかと思います。
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