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前座一年生

僕の同期

2007年10月から楽屋入りした僕ですが、少し前に入っていたのが、美るく姉さん、ぴっかり姉さん、八ゑ馬兄さん、さん歩兄さん(廃業)で、この方々と一緒に二つ目になりました。なのでいわゆる「同期」というとこの三人です。一人辞めちゃったんで。

それから、僕の半年後に入ってきたのが、一蔵、市弥、小辰の3人です。

なので僕の近い世代はこの面々ですね。

最初の半年

落語家にとって、前座1年目が一番大変だと思います。特に最初の三ヶ月から半年は特に。高座返しはとにかく体力勝負です。来る日も来る日も座布団を返して、途方もない数の着物を畳んで、お茶を入れまくる。

それだけかよって思われますが、これが毎日休みなく続くんで、やっぱり大変ですよね。頭はそんなに使いませんが、身体がとにかく疲れます。寄席だけなら良いですが、師匠の家でも修行して疲弊してる最中に寄席に通うわけですから、膝は痛いわ腰は痛いわ、ストレスが溜まって、暴飲暴食で、入門して一年で多分15キロは太りました。

身体が大きくなると尚のこと仕事が辛くなって、この最初の一年は身も心もズタボロでした。

体力勝負

高座返しは頭は使いません。正確に言えば少しだけ使いますが。基本的には体力勝負です。目の前にある仕事を全てやらされているこの間に、少し差がつくことと言えば、落語を聴くことと出囃子を聴くことです。落語の場合は、知っているネタ自体を増やすことが出来ます。この噺はこういう流れかってのはもちろん、ネタの名前を覚えれば、立て前座になった時にネタ帳を付けないと行けないので、ネタを沢山知っているのは大事なことです。

あとは、二つ目になってから覚えたい噺をストックしておけば、二つ目になって覚える噺に迷いがなくなり、良いスタートが切れます。

出囃子を聴いておくというのは太鼓を覚えるためです。太鼓の手(叩き方)をこの高座返しの間に覚えておくととでも重宝されます。

レギュラー

太鼓が上手いと前座の間は仕事が増えます。そして運が良いとレギュラーの仕事がもらえます。レギュラーというのはつまり、毎月とか定期的にやる会の前座になることです。

僕の場合はありがたいことに二つレギュラーがもらえました。府中の森笑劇場(年10回)と東京落語会(毎月、日本の話芸の収録も兼ねる)です。これはタイミングの問題で、前座になってすぐのやつはもらえません。大体一年くらいやっている中で太鼓が上手い人が条件です。

そこにたまたま当てはまっているともらえます。僕はタイミングがバッチリ一年目で太鼓も得意だったので白羽の矢が立ちました。大体決めるのは前のレギュラーの人です。東京落語会は志う歌兄さん(当時歌太郎)から引き継ぎました。

東京落語会はこれだけで思い出がいっぱいなのでまた書きますが、前座1年目でこういう仕事があると固定収入が入って来て助かります。

レギュラーの仕事も含め、単発のホール落語会の前座の仕事は「脇」という言い方をしますが、前座になって一年経つとこの脇が増えて来て、脇に行く間は寄席を休むので、少し息抜きにもなります。

多分毎日寄席だけだとノイローゼになりますからね。それとやっぱりお給金も、寄席はあくまで修行の場なので交通費程度ですが、脇の仕事はある程度まとまってもらえる。

これはありがたいことで、そもそもまず寄席だけでは生きていけないので、この脇の仕事もこなしながら前座生活を乗り切っていくのです。

さあ、そんな前座一年生が始まりました。二年生、三年生になるとまた前座の動きも変わって来ますので、そこら辺はまた。

落語について、また過去の思い出等を書かせて頂いて、落語の世界に少しでも興味を持ってもらえるような記事を目指しております。もしよろしければサポートお願いいたします。